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済生会県央基幹病院の開院まで半年 若手医療従事者の受け皿に

  • 2023年09月09日

燕市や三条市などの県央地域で新たな中核病院になる「済生会新潟県央基幹病院」。
来年3月1日に予定される開院まで半年を切りました。                  これまで若手の医療従事者が少なかった県央地域を変えていくことが期待されています。        (新潟放送局 藤井凱大)

新たな中核病院 期待される役割は

県内の医療再編の一環で、地域の2つの病院を統合、3つの病院で機能分化を進めるなど5つの病院が関わって誕生する「済生会新潟県央基幹病院」。400床を備えた地域最大の病院となります。

三条市に建設が進む「済生会新潟県央基幹病院」

期待される役割は大きく2つあります。                            ①県央地域の医療の中核を担うこと。                             この病院で行われるのが、通称「ER救急」。
「症状の程度に関わらず24時間どんな患者も断らない救急医療」です。
県央地域では、救急患者の2割を圏域外に搬送してきました。
この「ER救急」で、こうした課題の解決を目指します。

②医療を継続的に行うため、県内外の若手の医療従事者の受け皿になること。           これまで県央地域には中小規模の病院しかなく症例数も限られる上、指導体制も十分に整っていませんでした。このため、研さんを積みたい若い医療従事者が集まりにくいという課題を抱えてきました。
こうした課題の解消に向け、県央基幹病院には教育研修センターを設置。病院内の各分野で経験抱負な医師を配置し、地域の病院と連携します。
その上で、急性期から回復期まで経験を積めるようにして、指導体制も充実させようとしています。

県外から若手医師が

県央基幹病院に統合される燕労災病院

新たな地域の中核病院の開院までおよそ半年。
開院をみすえ、地域には若い医療従事者が徐々に集まってきています。
統合される病院のひとつ、燕市にある燕労災病院には、県外から2人の若手医師がやってきました。

鳥取県出身の山代薫医師

その1人、鳥取県出身の山代薫医師です。
鳥取の病院での初期研修を終え、専門医研修の場として県央基幹病院を選びました。
立ち上げから関わりたいと、ことし4月から統合前の病院で働いています。
 

山代薫医師
県央基幹病院は基本的に初期研修医の教育、あとは県外からも人が集まるような教育基幹病院を目指すということで、僕が目指すような将来の姿と似ているので、この病院を選びました。2次救急から3次救急程度の病院になっていくということで、症例数としても過不足なく診ることができ、医師としての経験も積めると思っています。

山代医師が目指すのは、複数の分野を1人で診察する「総合診療医」。
高齢者が多い地域の医療には欠かせない存在です。
外来診療や救急の当直などを行いながら、先輩の医師からの指導を受けています。

山代医師に指導する先輩医師

先輩医師
今までは20代の医師がいないということで有名な地域だったので、若い医師が来てくれると、とても張り合いがあって医療が元気になってよいと思います。

山代医師はここで成長し、将来的には地元の鳥取に戻ろうと考えていますが、県央地域との関わりは持ち続けたいと考えています。

山代薫医師
どんな患者さんが来てもノーと言わない。しっかり診察できる医師になって、責任を持って適切な治療につなげられるような医師になりたいと思っています。せっかくここで働かせて頂いているので、鳥取に帰ったとしても関わらせてもらいたいと思います。

Uターンする若手看護師も

東京からUターンしてきた住谷すず看護師

医師だけではなく、若手の看護師も新たに働いています。
上越市出身の住谷すず看護師です。                              もともとは経験を積みたいと思い、東京の病院で働いていました。
そうしたなか、県央地域に基幹病院ができるのを知り、ことし3月にUターンしました。

住谷看護師

住谷すず看護師
新潟県に新しい病院ができるというのは聞いていて、新しい病院の開院に携われるチャンスだと思ったので、挑戦してみたかった。いろいろな経験や、看護に携われることが多くなると思うので、すごく勉強になるし貴重な経験になると思っています。

住谷看護師は病棟で入院患者を担当しています。今後は救急医療などにも関わり、成長したいと考えています。

住谷すず看護師
新しいことや、まだ経験してないことに関してどんどん挑戦していって、自分の力になるようにしていけたらと思うので、基幹病院の同僚や先輩と協力しながら成長していきたいと思っています。

若手医療従事者を呼び込むサイクルを

指導を受ける山代医師

こうした若手の医療従事者は、長期的に地域の医療体制を維持する上で欠かせません。
取材すると、これまで県央地域には、若手の医師が少ないという声が多く聞かれました。
さらに県内全体でも医師が不足している状況です。
こうした状況で、県外から若手の医師がやってくるのは、医療体制の維持と人材育成の両面で重要になります。
特に若手医師の存在は、年上の医師にもよい刺激になり、地域医療の活性化という面でも効果があるという話も聞きました。

住谷看護師

そして看護師の人材の確保も欠かせません。医療再編で8年前に開院した「魚沼基幹病院」では、看護師が不足した影響で、一部の病床が使用できないこともありました。
こうした経験もあり、今回、県や病院はSNSなども活用した採用活動に力を入れてきました。この結果、ことし9月中旬の採用試験で必要な人数を確保するめどがたったということです。

こうした医療人材を継続的に呼び込むことともに、将来的には定着に結びつけられるかも重要になります。医療面での指導を充実させるとともに、定着に向けて行政も生活環境のサポートなどを行っていくとしています。
ただ、定着は簡単ではないため、病院では、この地域で育成された医師や看護師が全国や世界で活躍し、その姿を見て若手が繰り返し訪れるサイクルを作っていきたいとしています。

県央基幹病院の開院までおよそ半年。
地域の医療について、今後も取材してお伝えしていきます。

  • 藤井凱大

    新潟放送局 記者

    藤井凱大

    平成29年入局。函館放送局、札幌放送局を経て、2022年夏に新潟放送局に赴任。現在、医療や経済、農林水産などの取材を担当。

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