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新潟 夏休み明け 子どもの命どう守る

ICTでつながり強化 子どもの変化に気づくポイント把握を
  • 2023年08月31日

夏休みなど長期の休み明けは子どもの自殺が増える傾向にあります。新潟県内の小学校ではICT=情報通信技術を活用して子どもを守ろうという動きが始まっているほか、学校の外で支援を続ける団体もあります。休み明けの子どもたちの不安にどう向き合うべきか考えます。        (新潟放送局 記者 豊田光司)

長岡市にある学校の試みとは

今回取材に向かったのは新潟県長岡市にある新潟大学附属長岡小学校。

学校が夏休みの間に行っていたのが、こちら。

新潟大学附属長岡小学校 川口雄教諭
子どもたちの夏休みの生活の様子を聞くアンケートです。きょうの体調を聞いたり、後半のほうは「きょうの心の天気は」という項目で、その子の精神状況を聞いて夏休み明けの子どもたちの接し方に生かすような項目になっています。

アンケートで聞く内容は体調や勉強の進捗状況などおよそ10項目。400人余りの全校児童を対象に夏休みの間に2回、行いました。担任の教諭が確認し、児童が不安を抱えている場合やアンケートの回答がない場合などには直接連絡を取ります。

新潟大学附属長岡小学校 川口雄教諭

学校で生活指導主任を務める川口雄さんです。これまで夏休みに全校児童の状況を確認することは難しく、どう過ごしているか心配だったといいます。

夏休み明けに子どもたちの学校生活が不安定になるというのはありました。

どうすれば子どもたちの異変に気づくことができるか。

活用したのが教育現場で普及したタブレット端末でした。端末を活用することで休みの間でも多くの児童の状況を確認でき、休み明けに児童と接する際の準備がしやすくなったといいます。

2回のアンケートによって1回目と2回目で児童の状況の変化も経過で見ることができ、より注意しやすくなったといいます。

新潟大学附属長岡小学校 川口雄教諭

1人1台端末を使ったら夏休み中も児童とアンケートでつながることができるようになり、それをさらに生かせる状況になったというのは大きい。全体に話す内容はもちろんだが、例えば個別に休み時間に声をかけたりだとか、その子に合わせてきょうはこの話題よりもこっちの話題にしようかとか、この話題のことを多く話そうかと。そうした方が心配を感じている子が笑顔で学校に来られる、過ごせるんじゃないかと把握しやすくなったのは大きいかなと思います。

県内では、ICT機器を活用した子どもへのアンケートはほかの学校でも行われています。
新潟県生徒指導課によれば、分校を含めた県立高校や中等教育学校、合わせて89校のうち60校で保健室や教室に設置したタブレット端末などを使って子どもたちの様子を確認できるようにしているということです。

支援は学校の外でも

一方、学校の外で支援を続ける団体もあります。

チャイルドラインにいがた 寺島幸優代表

子どもの電話相談などをしている全国規模のNPO法人「チャイルドライン」の支部で代表を務める寺島幸優さんです。学校や身の回りの人でない相談相手のほうが、子どもの救いになることがあるといいます。

チャイルドラインにいがた 寺島幸優代表
我慢していると知らず知らずのうちに我慢が大きくなってつらさや苦しさが膨らんでいってしまう。少し話して楽になるとか、ちょっとしたガス抜きができて小出しにできていればそこまで大きくならずに済むことも実はたくさんあると思います。親も忙しくて、なかなか子どもの話を聞いている時間がないという環境も多いなかでチャイルドラインの役割は意味があると捉えています。

寺島さんは夏休みが明けるこの時期、子どもたちは緊張感に包まれているといいます。

自分自身の気持ちを切り替えたり、やる気も上がってきたりしているんですけど、気持ちが強ければ強いほど、いざ学校が始まる日が近づいてくると本当に自分が思ったとおりになるのか不安な気持ちになってきたりして。その気持ちが高まってくるとそれが体に影響を及ぼして頭が痛くなったり、おなかが痛くなったり、ご飯が食べられないとか、だんだん夜眠れなくなるとか。そうなってくると、かなり自分でも心細かったり不安が強かったり、なんだかよくわからないけど、こわくなってしまったりということで動けない状態になることも少なくないです。

チャイルドラインにいがた 寺島幸優代表

そうした中で大事なことは周りにいる人が子どもの異変に気づき、寄り添えるように協力することだといいます。

異変を感じ取るポイントは?

子どもたちの異変を見落とさないよう、身の周りにいる親や学校関係者はどのようなことに気を配ったらいいのか。寺島さんはポイントとして次のような点が挙げられるといいます。

いつもより顔が暗かったり食事のスピードが遅かったり、また、お風呂の時間が長くなったりトイレの回数が多くなるなどです。こうした異変に気づいたら無理に話を聞こうとせず、話しやすい環境を作ることが重要だと寺島さんは話していました。

その上で寺島さんは「うまくいかなくても大丈夫。また計画を立て直して、次のプランを立てればいい」と呼びかけています。
周りにいる大人が「完全でなくてもいい」「できないことがあってもいいんだよ」という姿勢を示すことが大切だと感じました。

紹介した「チャイルドライン」では9月4日まで電話相談の態勢を強化しています。
電話番号は0120(99)7777です。このほか、ホームページではオンラインチャットや思いを書き込める掲示板も用意しているということです。

  • 豊田光司

    新潟放送局 記者

    豊田光司

    2017年入局。大阪局を経て2020年から新潟局に。仕事やプライベートで失敗をして、ひどく落ち込むこともありますが、意外といいことも起きたりしていつの間にか忘れています。これでいいのか分かりませんが。

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