ページの本文へ

  1. トップページ
  2. ニュース特集
  3. KYジャーナル「女性の賃金なぜ低い?」

KYジャーナル「女性の賃金なぜ低い?」

2023年1月13日

あえて空気を読まず、働く女性の視点から
社会に切り込む、山本恵子解説委員(Keiko Yamamoto)の「KYジャーナル」。
今回は、「男女の賃金格差」がテーマです。

(NHK名古屋 解説委員 山本恵子)

衝撃が走った日本の女性の年収の現状

こちらは、日本の女性の賃金の現状です。既婚女性の6割が年間の所得が200万円未満。 単身未婚女性の約半数が年間所得300万円未満。この数字が令和4年12月に東京で開かれた世界のリーダーが参加する「国際女性会議」で紹介されると、参加者に衝撃が広がりました。

日本では、男女で賃金にどれぐらい差があるのか。正規、非正規の男女の1か月の賃金を見てみると、正規・非正規の格差だけでなく、男女での賃金に差があります。

同じ学歴で見てみても、男性が高く、女性が低くなっています。

国際的に見てみます。フルタイムで働く男性の賃金を100とした場合、女性はどれぐらいかを示したグラフです。OECDの平均は88ですが、日本は77.9と、国際的にみても、日本は男女の賃金格差が大きい国といえます。

男女の賃金格差の是正に向けて

こうした、男女の賃金格差について政府は令和4年の「女性版骨太の方針」で、「女性の経済的自立」の重要性を指摘し、賃金格差の改善に向けての取り組みを進めています。

そのひとつが、男女の賃金格差の開示です。令和4年7月には、従業員が300人を超える企業に男女の賃金の差について▽全従業員▽正社員▽非正規雇用の3つの区分で開示を義務づける方針を決めました。
対象となる企業の多くは、令和5年6月末までに男性の賃金に対する女性の賃金の割合を公表することになります。公表することで格差の是正につながることが期待されます。

背景にある「年収の壁」

こうした男女の賃金格差の背景あるのが、「男は仕事、女は家事・育児」を前提とした意識や税制、労働慣行などです。実は、仕事をしている既婚女性の6割の所得が200万円未満の要因となっているのが「年収の壁」です。

サラリーマンの夫とパートタイムで働く女性たちにとっては、年収が100万円を超えて 増えるにつれ、夫の扶養から外れ、税金や社会保険料の支払いが発生する基準があります。

代表的なものが、所得税が課税され始める「103万円の壁」や、勤め先などの条件によって社会保険料の支払いが生じる「106万円の壁」、また、企業によっては配偶者の年収が103万円や130万円を超えると、「家族手当」が支払われなくなるなど、基準を超えて働くと、一時的に目先の世帯収入が減少するため、"働き損"と感じられるとして「年収の壁」と呼ばれていてます。

この壁を越えないように就業時間や日数を調整する「就業調整」が、女性の所得が低い 要因の一つとなっているといえます。

企業側が「人手不足でもっと働いてもらいたい」と思っても、働く人が「今の物価高で、少しでも多く働きたい」と思っても、「年収の壁」がまさに壁となっています。

時代、家族の姿に合った制度に

こうした制度は、サラリーマンの夫と専業主婦が多かった、昭和の時代にできたものです。今や共働き世帯が専業主婦世帯の2倍以上になっていて、家族の姿も変わってきています。賃金だけでなく、男女の格差が少ない国は、性別にかかわらず働き、子育てや家事ができるように制度や環境が整っています。日本も性別問わず、仕事も、家事育児ができる制度や環境を整えていくことが重要だと思います。

筆者

山本恵子解説委員(NHK名古屋放送局 報道部 副部長)
愛知県出身。1995年入局。金沢局を経て社会部で教育、女性活躍、働き方改革などを中心に取材後、名古屋局で赤ちゃん縁組や里親について取材。国際放送局World News部を経て2019年再び名古屋局。「子ども子育て応援プロジェクト#わたしにできること~未来へ1歩~」スタート。2021年より解説委員(ジェンダー・男女共同参画担当)を兼務。中学生の娘の母。