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あのとき、何食べた? 新疆ウイグル自治区 ラグマン


皆さんには、"忘れられない食事"はありますか?
「あのとき、何食べた?」は、中部に住む外国籍や外国にルーツのある方々の"忘れられない一品"を掘り下げるグルメドキュメントです。

名古屋市守山区で故郷ウイグルの料理店を一人で切り盛りする、ショウ・イエさん。
16年前に店をオープン。日本ではなかなか食べられないウイグルの味と店主の人柄にひかれ全国各地から予約が入ります。
ショウさんを知る人は、皆彼女を「料理好きの明るく元気いっぱいなお母さん」だと話します。
しかし、そんなショウさんには、忘れられない過去がありました。
実は、日本に来るまで故郷の料理が"大嫌い"だったというのです。

目次

【ショウさんの"過去"】大嫌いだった故郷の料理

ショウさんの思い入れ深い料理は、新疆ウイグル自治区の伝統料理、「ラグマン」(手延べ麺)。ショウさんによると、3000年前から地域に伝わるもので、ウイグルの家庭では、毎日のように食べるそう。「本場と同じ素材本来の味を出したい」と、麺作りに機械は使わず、すべて手作業。仕込みは、深夜までかかることもあります。それでも、「料理が好き。お客さんにおいしいと言ってもらえるのが楽しみ」と疲れたようすは一切見せません。しかし、かつて故郷の料理は大嫌いなものだったといいます。

お客さんの前で、ラグマンの麺の生地をのばすサービスは大好評

故郷の新疆ウイグル自治区で5人兄弟の長女として生まれたショウさん。小さい頃から両親には持病がありました。このため、6歳の時に、父親から口頭だけで料理を教わり、家族7人分の3度の食事を作りました。朝早く起きて、朝食作り。仕事や学校に通う兄弟を送り出したあと、自転車で買い物へ行き、昼食の準備。母親の病院の付き添い、夕飯の準備、大量の皿洗い...。当時ガスはなく、火は牛ふんや石炭で長時間かけておこし、水は井戸から運んできました。ショウさんが好きなことをするための時間はほとんど残されていませんでした。

「同じ歳の友人はふつう学校に通うの、でもわたしはずっと料理をしていたの」。いつしか料理をすること、それをしなければいけない"この家族"が大嫌いになっていました。そんな中、唯一の楽しみは近所で見つけた、世界各国の文化を紹介する雑誌でした。「いつかこの街を飛び出して、外へ行きたい」。中でも憧れたのが当時、高度経済成長まっただ中で、豊かな国として紹介されていた日本でした。両親が亡くなったあと、ある決心をします。「今後の人生では絶対に料理はしない。自分の人生を生きる、日本へ行く」と。その時、ショウさんはすでに25歳。家族の料理を作り始めてからおよそ20年が経過していました。

【ショウさんの"あの時"】「いま」を作った友人のひと言

その後、猛勉強し、憧れだった日本への留学を果たしたショウさん。大好きだった勉強に励み、充実した生活を送っていました。料理はほとんどせず、学食などに通っていました。しかし、入学から半年たったある日、あれほどしないと決めていた料理を考え直すきっかけがありました。
それは、冬の寒い日でした。どうしても、故郷の味が恋しくなり、街へ繰り出しました。しかし、「ラグマン」はどこにもありません。ラグマンに似た「ラーメン」を見つけましたが、食べてみると、どこか違いました。「ラグマンをどうしても食べたい、でも料理は一切作りたくない、どうすればいいのだろう」。葛藤の末、気づいたらまたちゅう房に立っていました。
そして、友人にも食べてもらうと、思いがけない反応がありました。「おいしい」と言ったのです。ショウさんは最初、意味が分かりませんでした。なぜなら、その時、その瞬間まで、今まで自分が作ってきた料理が「おいしい」ものだと認識したことがなかったからです。ショウさんは友人に聞き直しました。「これ、故郷で私毎日作っていた料理よ。どこがおいしいの?」友人は言います。「おいしい、おいしい。手作りがいいの」。ショウさんはその時、初めて救われる思いがしたといいます。「料理ばっかりをしていた自分の人生にも価値があるんだ、私は価値ある人間なんだ」と。

【ラグマンのレシピ】やみつきになる味!ウイグルの伝統料理

麺の上にお好みの具材をのせて食べる「ラグマン」。ショウさんは、麺を手作りしますが、愛知でおなじみの"きしめん"を代用してもおいしく、ご家庭でも簡単に作れますよ!お腹いっぱいになること間違いなし!

<材料(3~4人分)>
<ラグマン>
  • 麺(小麦粉)・・・500g
  • 羊肉・・・200g
  • なす・・・4本
  • トマト・・・2個
  • たまねぎ・・・1/2個
  • パプリカ・・・1/2個
  • ピーマン・・・2個
  • 塩・・・10g
  • 花椒(ホアジャオ)・・・2g
  • サラダ油・・・少々
<作り方・麺>
(1)

ボウルに小麦粉、水、塩を入れて、耳たぶくらいの硬さになるまでこねる。

直径2cm程度の棒状にしたあと、表面にサラダ油を塗り冷蔵庫で12時間ほど寝かせる

(2)

寝かせた麺をさらに細く伸ばしたら、回したり、板の上にたたきつけるなどして細くのばす。

(3)

十分にのびたら沸騰したお湯で1~2分ゆで、ざるに移し、水でしめてコシを出す。

<作り方・具材>
(1)

羊肉・野菜を食べやすい大きさにカットする。

(2)

サラダ油を引き、羊肉を炒める。火が通ったら、「花椒」や「塩」を加えて、味を調える。

(3)

肉にたまねぎ、トマト、ピーマン、なすなどの野菜を加えて、炒める。

(4)

ゆであがった麺に、具材を載せて完成。

このラグマン。麺の上に載せる具材やソースの種類はさまざま。ショウさんは、卵とトマトをベースにしたものも作っていたといいます。ホスピタリティあふれるショウさんに、取材中何度もラグマンをいただきました。いつも、大盛りを作ってくれますが、ペロッと完食してしまうほど、おいしく、やみつきになる味でした。ぜひ、皆さんも作ってみてください。



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