長崎発「肺疾患COPD」自分の肺と向き合おう!世界禁煙デー
- 2023年05月31日
5月31日はWHO(世界保健機関)が定めた「世界禁煙デー」です。 そこで、たばこと健康についてあらためて考えました。たばこの煙を吸うことによっておこる「COPD」とは一体どんな病気なのか?症状や対策を長崎市内で取材しました。
NHK長崎放送局 中島史理
たばこをめぐる長崎の現状
長崎県は今このような現状にあります。男性の喫煙率が全国4位。
そして、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の人口あたりの外来患者数が全国2位です。
COPDは主にたばこの煙などに含まれる有害物質を長期間吸入・曝露することにより肺の炎症が起こる病気です。 このCOPDは一度発症すると治らず、進行を遅らせることしかできません。
COPDの症状とは?
では、COPDを発症するとどのような症状が出て、どんな対策が必要なのでしょうか?15年前にCOPDと診断された髙﨑弘さん(77)が、COPDの予防につながればと取材に応じてくれました。
はじめに、どんな症状が現れたのか聞きました。髙﨑さんが病院に通うようになったきっかけはゴルフ。2ホール目を回るころ呼吸が苦しくなる異常を感じました。現在は、散歩をするときも大変だと言います。
「私は丘陵地に住んでいるのですが、散歩に出ると行きはよいよい、帰りはこわい。行きは下り坂だけれど、帰りは上り坂になる。そうすると息がゼーコゼーコと言って、途中で休まないと家にたどり着かないのが日常です」
「ワンちゃんの散歩を朝夕するんだけれど、自分がきつくても、グイグイ引っ張られるもんだから、倒れるんじゃなかろうかという瞬間もあります。きついときはそういうきつさですよね」
また息切れだけでなく、痰が絡む症状も出るそうです。
「常に痰が絡んだ状態で声がかすれてくるんですね。これが段々ひどくなってくるとずっと痰が引っかかりぱなしで、痰がきれないという状況ですね」
徐々に進行するCOPD
息切れや痰などの症状が出るCOPD。肺の中はどのような状況になっているのでしょうか?これまで数多くのCOPD患者を診察している呼吸器内科医の真崎宏則さんに聞きました。
「COPDは慢性的に徐々に、呼吸の状態が落ちていく。原因としてはたばこの煙が一番多いと思います。たばこの煙を吸うことによって気管支の中に煙が入って、毒素が肺胞という呼吸をする場所を痛めていく、破壊していく」
肺の中にある気管支の末端には肺胞というブドウの房のような部分があります。この肺胞の肺胞壁が、たばこなどによって炎症を起こして壊れると、受け取れる酸素の量が減ってしまいます。
また、気管支も炎症によって狭くなります。すると、痰がたまりやすくなり、呼吸が苦しくなります。
このCOPDの問題点の一つに、徐々に進行するため自覚しにくい点があります。
「多くの方は、自分は年のせいでこうなっていると勘違いしている場合が多いと思います。症状はあるんですけど、それが当たり前の調子だと思い込んで、病院に足が向かない、受診しないということが問題かなと思います」
受動喫煙にも注意
さらに、COPDは現在たばこを吸っていない人でも発症の危険性があると真崎さんは言います。
「周りに吸っている人がいれば受動喫煙という形で煙を副流煙でもらう。家の中の壁とかが、たばこの粒子で汚染されていると、汚染したものの近くを通ったり触ったりすることで、その粒子を吸ってしまう」
「よく『ベランダに行って吸ってきました』『換気扇の下で吸ってきました』と気を遣って吸っている方が多くおられるんだけれど、あれは目の前で吸うよりは受動喫煙量を減らすけれども、受動喫煙自体は確実に起こっています」
長崎市の検診では、COPDと判断された人のうち4分の1以上が受動喫煙者の方でした。
COPDを発見するためには
では、COPDを発見するためにはどうしたらいいのか。その一つにCOPD検診で行われている「呼吸機能検査」があります。
1回目の検査では、大きく息を吸って限界まで息を吐き肺活量を測定します。そして2回目はできるだけ強く速く息を吐く検査を行います。この1回目と2回目の検査の数値の比率によってCOPDの疑いがあるかどうかがわかります。
私も実際に体験してみました。検査自体は10分ほどで終わり、簡単に行うことができました。
COPD検診をきっかけに禁煙
検診の結果COPDと分かったとしても、禁煙を成功させるまでにはハードルがあると思います。 そこで、COPD検診を受けて禁煙に成功した草原克也さん(52)に話を聞きました。
草原さんは32年間たばこを吸ってきましたが、去年、COPD検診をきっかけに禁煙を決意。そこで、大きな効果を発揮したのが禁煙パッチでした。
「禁煙パッチを貼ると、結構まとまった本数のたばこを吸ったくらいの成分が体に入ってくるんです。それを貼ったら本当にもう如実に、30分ぐらいしたらすごい具合が悪くなって、たばこを吸いたいという欲求も収まり、僕の場合は1週間ぐらいで吸いたいという欲求がなくなりました」
草原さんは禁煙をしてから身体の変化も感じました。
「禁煙して1週間くらいたってからバナナを食べたんです。そうしたら、『あれバナナってこんなにおいしかったのかな』って、びっくりしたんですね。味覚がはっきりしたっていうことですね。やっぱり生活が豊かになりますね」
草原さんが受けたようなCOPD検診は自治体ごとに行われています。 長崎市では、毎月行われていて、参加は無料で予約制となっています。
日時:6月4日(日)午前10:30~午後1:00
場所:長崎市立図書館 無料
対象:長崎市民
市のホームページか電話で予約
長崎市健康づくり課 095-829-1154
COPDの患者は全国で約22万人。実際ははるかに多くの潜在的な患者がいるとされています。COPDは糖尿病などの他の疾患と比べて、受診者数が少ないと呼吸器内科医の真崎さんは話していました。ぜひ積極的に検診を受けてほしいとのことです。
今回の取材を通して、たばこと健康について、誰もが自分事として向き合わなければならないと感じました。また、たばこは嗜好品ですが、周囲への配慮も大切にする世の中になってほしいと思います。