野菜や果物を使った「どぶろく」の酒!長崎・出島から発信
- 2023年05月23日
今年3月、長崎市にどぶろくの醸造所がオープンしました。 どぶろくは白く濁った酒というイメージをお持ちの方がいらっしゃるかもしれません。 しかし、こちらでは、長崎の野菜や果物を使ったどぶろくも醸造しています。 醸造所ができたのは、江戸時代、海外との貿易窓口として栄えた出島。 どのようにどぶろくが作られているのか? なぜ、野菜や果物を使ったどぶろくができたのか。取材しました。
NHK長崎放送局キャスター 西永 里花
出島にオープン どぶろく醸造所
5月上旬、長崎市出島町にできたばかりの、どぶろく醸造所「でじま芳扇堂」を訪ねました。出迎えてくれたのは、日向勇人さんと咲保さん夫婦です。
佐賀県の酒蔵で出会った二人は、勇人さんの独立を機に、咲保さんの地元・長崎市でどぶろくの醸造所を開きました。
この日はどぶろくの仕込み日。その様子を見せていただきました。酒造りを担当するのは夫の勇人さんです。どぶろくは日本酒と同じく、米と麹と水を原料として発酵させて作ります。はじめに蒸し米を広げて熱を手で冷まします。
次にお酒のもととなる「酒母(しゅぼ)」が入ったタンクにいれ、かき混ぜていきます。 これを4日間かけて3回行います。清酒造りによく用いられる「三段仕込み」という方法です。そうして、およそ40日間発酵させると…
勇人さんが仕込みで大事にしているのが温度です。温度を通常よりも低めにして、ゆっくりじっくり発酵させることで、質感があって飲み心地の良いどぶろくを目指しています。
食感、テクスチャー(質感)のある お酒はあまりないんですよ。どぶろくは濁ったスタイルでありながら、 洗練された味わいと両立できることがすごく面白いので、どぶろくに特化してやっています。
出島ならではの文化発信
日向さん夫婦のどぶろく醸造所がある場所。 妻の咲保さんの祖父が二十年ほど前まで営んでいた骨とう品店を改装したものです。咲保さんは就職を機にいったんは長崎を離れましたが、 いつかは出島に戻りたいと考えていました。
醸造所には日向さん夫婦のどぶろくや日本文化への思いがこめられています。どぶろくと一緒に食事を味わえるバーカウンターや、どぶろくを楽しむための酒器が並ぶギャラリーが併設されています。
江戸時代、海外との貿易窓口として栄えた出島。先人たちがここで日本の文化を発信していったように、日向さんたちは県内外の人々に日本の食文化を発信していきたいという思いが込められています。
酒は酒、料理は料理、器は器みたいな感じで分断されているイメージがあったので、食文化をトータルで提案する場所を開きたかったんです。
ギャラリーも併設された醸造所を開こうとなったとき、すぐにここが思い浮かんだ。日本の文化が海外に出て行ったロマンある場所でこういうことができるのは運命なのかなって思います。
長崎の旬の野菜や果物をどぶろくに
出島の地でどぶろく醸造所を初めて2か月。新たな商品ができました。それが野菜や果物を米と一緒に発酵させてつくったどぶろくです。
こちらは長崎の在来野菜である黒田五寸人参を使用した、どぶろく。
こちらは、みかんの一種である不知火を使ったどぶろく。 どちらも市場に出回らない規格外の野菜や果物を使用しています。
醸造所のバーカウンターで私もいただきました。微炭酸でシュワっとして、甘みと酸味が程よく、不知火のみずみずしさが表現されたどぶろくでした。
本来、身の回りにある余剰なものでお酒を醸していたはず。だから、規格外というだけで捨てられてしまう野菜や果物、日持ちがしない野菜や果物をお酒にすることは本来のお酒らしいあり方なんだと思います。
今後も、定期的に市場に出回らない野菜や果物を使ってどぶろくを作りたいと話していました。 日向さん夫婦の挑戦はまだまだ続きます。