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ギャンブル依存症知っていますか?長崎のクリニック院長に聞く

  • 2023年05月16日

5月14日~20日は「ギャンブル等依存症問題啓発週間」です。ギャンブル依存症の実態と対処法などについて専門家に聞きました。

※2022年5月に掲載した記事を再構成しています。

コロナ禍の公営ギャンブル

コロナ禍の中で競馬や競輪、オートレースなどの公営ギャンブルの売り上げが好調でした。2019年度の終わりごろから2021年度にかけて特に上昇しました。

公営ギャンブルを楽しむことは決して否定されるものではありませんが、こうした活況の裏でギャンブル依存症になる方の増加が懸念されています。 

そこで、長崎市内にある松元リカバリークリニック院長で精神科医の松元志朗さんにお話しを聞きました。松元先生のところに相談に来る人もコロナ禍で2~3割増えました。

コロナ禍とギャンブル依存症が結びつく理由は大きく分けて2つの要因が考えられるそうです。1つは公営ギャンブルのネット投票が発達したこと。もう1つは巣ごもり生活で人との関わりが絶たれたこと。これらの要因から、ギャンブル依存症になる方の増加が懸念されています。

ギャンブル依存症とは?

一般に「やめたくても、やめられない状態」を「依存症」と言い、「ギャンブル依存症」はギャンブルにのめり込み、日常生活や社会生活に支障が生じている状態です。 コントロール障害という脳の病気とされています。そして、誰でもなり得る病気でもあります。では、ギャンブル依存症の症状や影響を見ていきましょう。

2大症状として「借金」と「嘘」があります。自分の財布の許容を超えてもギャンブルをやめられず、「借金」をしてしまいます。そして、ギャンブルをしていること、借金をしていることを知られないために「嘘」をつき始めてしまうそうです。結果として、人間関係や生活の破綻、孤立などを招いてしまいます。

ギャンブル依存症になりやすい人は?

誰でもなり得るギャンブル依存症ですが、なりやすい人には特徴があります。人のことを考えられる優しい人や、几帳面で真面目な人がなりやすいようです。 また、すぐに結果や答えを求める人もなりやすいそうです。

松元先生の患者さんの事例で見ていきます。

Aさんは、学生時代に誘われたパチンコがきっかけで、ギャンブルにのめり込みました。就職して結婚してもギャンブルをやめられなかったAさんは大きな借金を抱え、離婚・失業を経験しました。現在は治療を受けて回復し、復職・再婚されています。そんなAさんの性格は頼まれたら断れない・NOと言えない、優しい性格です。

続いては主婦のBさんのケースです。食料品の買い物ついでにパチンコに行ったことがきっかけで、ギャンブルのめり込みました。借金を抱え、家族に隠せなくなったことで自らクリニックを受診しました。Bさんは幼いころから両親の世話をしていて、“自分より人を優先”という生き方になっていました。家庭を持ってからも、夫や子ども優先の生活でした。お人好しで困っている人を見たら放っておけない性格です。

AさんもBさんもまさに“良い人”。人を優先する優しさが、自分を犠牲にするストレスとなり、その発散の対象としてギャンブルにのめり込んでしまったそうです。

ギャンブル依存症になってしまったら? 

もし、自分や周りの家族や友人がギャンブル依存症になってしまった場合、どうすればいいのか。まず、ギャンブル依存症は脳の病気なので、根性や意思では回復しないことを知っておく必要があります。

また、周りの人が借金を肩代わりして返済してしまうと、本人にとっては借金がリセットされた感覚になってしまい、むしろ依存環境を整えることになってしまいます。

正しい対処法は第三者とのつながりを持つことです。ギャンブル依存症は借金を抱える人も多く、借金が大きくなるほど人に話せなくなってしまい、依存症が進行します。 

依存を進行させないためには決して本人や家族だけで解決しようとしないこと。専門の医療機関、保健所、自助グループ、家族の会など、相談窓口は意外にもたくさんあります。

松元先生のクリニックでは、毎週火曜日に“ギャンブル依存ミーティング”を行っています。これは、同じギャンブル依存症の人同士が本音で話し合い、悩みを共有しながら一緒に回復に向かうための集いです。精神保健福祉士の方がいて、一緒に悩みを考えてくれます。 初回の見学や参加は無料、ご家族も大歓迎とのことです。

松元先生は「ギャンブル依存症は、正しく治療すれば必ず回復する病気。どうか一人で悩まず、どこかの窓口とつながってほしい」と話してくれました。

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