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複数の人と合意の上で性愛関係を持つ“ポリアモリー”を実践する女性34歳が、VR空間に飛び込んでみたら…信頼できる知人に自分のことを打ち明けられるようになった/『プロジェクトエイリアン』出演者のその後

現実社会では出会わないような4人が、自分が何者かを伏せたままVR空間上でエイリアンのアバターに身を包んで交流する番組「プロジェクトエイリアン」。

参加者の1人で、複数の人と合意の上で性愛関係を持つ“ポリアモリー”を実践するミライさん(34歳/仮名)。誤解されることを恐れてこれまで自分の性愛関係を周囲に打ち明けられずにいました。VRでの交流を経て、いったい何を感じ取ったのか、取材しました。

(「プロジェクトエイリアン」ディレクター 神谷友輔)

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“ポリアモリー”を実践するキッカケは「男性不信」

『プロジェクトエイリアン』では、VR空間を舞台に、見た目に影響されないアバターでの交流を通じて、ジェンダーや国籍などを理由とした“分断を乗り越える”きっかけとなる場を作ろうとチャレンジしています。複数の人と合意でパートナー関係を持つミライさんに、まず現状を聞いてみました。

ミライさん

「私には今、男性のパートナーがいて、そのパートナーに別の女性のパートナーがいます。私から見て“メタモア”って呼ぶんですけど、メタモアとは友達で、仲良く過ごしている状態です。今は、私とパートナーが同じ家に住んでいて、メタモアは県外に住んでいます。なので月に1回ぐらいこちらから会いに行ったり、メタモアがこっちに来たりしていますね。彼女は客室に泊まって、男性パートナーもそこで寝るっていう感じです。今の関係性になっていいなって思うのは、家族が増えたような気持ちになっていて、メタモアと2人で話していて、お互いのパートナーのどこが好きかみたいな、お互い出すと一緒だったりするんですよね。『わかる』みたいな。心と心の一部を共有し合えている感じが、すごい幸せです」

こうした関係性を築くようになったキッカケは“初体験のトラウマ”だったと言います。

「初めての人との経験が痛くて泣いていたんですけど、半ば強引に最後までされたんですよね。それがつらくて…。私と今のパートナーはすごい仲がよくて、話し合いもできるし、楽しく過ごせていたんですけど、ただセックスに関してだけ上手く協力ができなくてフラッシュバックしちゃうんですよね。嫌悪感だったりとか怖いとか。どうしても体が委縮してしまうんです。これが原因で別れる可能性に十分なり得るなって思ったんですよ。それはあまりにももったいない。1対1っていうルールを外して、他の人とも性愛関係持っていいよっていうルールにした方が、自分にとっては彼を失わなくて済むし、いいなと思ったんです。私、男性不信だったり男性嫌悪が強いんですけど、パートナーは男性だけどすてきな人だなと思うんですよ。こんないい人いないと思っていて。だから、みんなも私のパートナーの良さを受け取れたらいいのにって、今すごく思っています」

“ポリアモリー”を実践して1年、今では幸せな日々を過ごしていると話すミライさんですが、少し嫉妬のような気持ちも芽生える瞬間があるそうです。

ミライさん

「自分は独占欲はもともと全く無いほうなので、嫉妬もしないだろうと思っていたからこそ、ポリアモリーを実践したんですけど、いざ始めてみると、私があまりセックスができないから、セックスができる、楽しめる2人と比較して疎外感を感じてしまう。そういうやきもちは生まれてしまって、苦しんだりします」

VR空間で“エイリアン”になってみて気づいたこと―

番組では、現実社会では交わり合わない4人が外見や素性を伏せて、エイリアンのアバターに身を包みVR上で一緒に月面旅行をしてもらいました。ミライさんには、プロジェクトエイリアンの世界はどのように映ったのでしょうか?

ミライさん

「顔が見えないって意外としゃべりやすい面もあるなと思いました。初対面だけどコミュニケーションしやすい感じがありましたね。でもいちばんよかったのは、なかなか人には言いづらい性愛というテーマについて匿名で他人と話せたことかもしれません。パートナーに不倫をされた方や性依存の方、アセクシャルの方の話を聞いたときに、自分がポリアモリーを始めたのは“依存先を増やすため”という思いがあったことに改めて気づけたんです。一方で、自分はセックスも言語ではないコミュニケーションなんだろうなと思っていて、私はコミュニケーションが大事だからこそ、自分は性が苦手だから仲間に入れないんだみたいな劣等感を刺激されてるんだなって思って」

そんな苦しさを吐露したミライさんに対して、性依存で苦しんだ女性・ブランさん(34)、元妻に不倫をされた男性・すぐるさん(34)、アセクシャル・アロマンティックの女性・ひつじさん(32)が声をかけました。

ミライさん

「まず声をかけてくれたのがブランさんでした。『セックスは究極的に言うと趣味の一つでしかない』と言っていただいてちょっと気持ちが軽くなりました。すぐるさんからも『話し合えている関係性があればそれでいい』ですとか、ひつじさんからは『性的な気持ちへの嫌悪感を持っていてもいい』と…。気づけば泣いていました。うれしかったです。自分はパートナーから『セックスが重要じゃない、それだけじゃないよ』って言ってほしかったんだと気づけました」

ミライさん

「今の1対1の恋愛関係が主となっている文化の中で、うしろめたさがあって。ポリアモリーってことを公表しづらく、家族にもまだ言えていないんですよ。性の話となると言いづらいじゃないですか。今の私の抱えているもの。他の人に共有しづらかったから、余計に苦しかったんだなっていうのが、今回すごいわかって。VR空間上のお風呂に入ってみんなに言えてよかったなと思いました。性の悩みを打ち明けるってことに前向きになれた気がします。収録が終わってから、信頼できる知人に自分のことを打ち明けるメールを送ったんですよ。人に共有すると悩みが自分だけのものじゃなくなって、一緒に考えてくれたりするので、気が楽になるから、これからは積極的に話していきたいなって思うようになりましたね」

他者との交流のハードルを下げ、さらには距離感を縮めることも可能なVR空間。「VR×社会課題」プロジェクトでは、今後もVRの有効活用法を模索していきたいと思います。

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この記事のコメント投稿フォームから番組への感想やミライさんへのコメントをお待ちしています。

みんなのコメント(1件)

感想
鯛焼き
60代 男性
2023年11月20日
複数の人と同意の上で性愛関係を持つ「ポリアモリー」を実践する方がいらっしゃることを初めて知りました。見た目に影響されないアバターでの交流を通じてご自身の性愛関係を打ち明けることができて良かったと思います。「プロジェクトエイリアン」(NHK)はいい番組ですね。「ミライ」さんは、悩みはあるものの幸せな日々を過ごしていらっしゃるので、「ポリアモリー」という幸せの形もありだなと思うことができました。ご出演いただきありがとうございました。