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群馬 “男性職場”先入観を排除 活躍する女性雪氷作業員に密着

  • 2024年04月19日

ことし2月、群馬県内でも雪のため、上信越自動車道が一時通行止めになりました。このような冬の時期、高速道路の安全に欠かせないのが、整備を担う「雪氷作業員」の存在です。
人手不足が懸念される中、“男性の職場”という先入観を排除して、県内では女性が活躍し始めています。その現場に密着しました。

(前橋放送局 記者 中藤貴常/2023年2月放送)

県内初の高速道路女性雪氷作業員

夜の高速道路を走る、雪氷作業車。

運転しているのは渡邉ゆかりさん。
県内初となる、高速道路の女性の雪氷作業員です。

群馬県内の高速道路のメンテナンス会社は、女性の採用を進めています。

渡邉ゆかりさん
「この職場は男性の方が多いということで、最初はすごく緊張感もあり、不安もありましたが、皆さん温かく迎え入れてくれたので、今ではすごく楽しく仕事ができています」

懸念される人手不足“先入観を排除”

女性の採用を進める背景にあるのは今後、懸念される冬場の人手不足の解消です。

今シーズンは暖冬で雪が少ない状態が続いていて、除雪作業は減っています。それでも冬場は路面の凍結を防ぐ薬剤を散布する業務など、多岐にわたり、多くの人手がかかります。

作業員を増やしたい一方で、この会社では最近まで男性しかいませんでした。
体力面や大型車の運転などから“男性の職場”という固定観念があったことが1つの要因だといいます。

ネクスコ・メンテナンス関東 高崎事業所 峯村幸治 所長
「ちょっと女性には無理だろうという先入観があったと思います。しかし、近い将来は必ず人手不足が来るという危機感は持っているので、今から手を打っていかないといけない。女性を積極的に採用していくことになりました」

女性雪氷作業員のもう1つの顔

そして、5年前、会社は人手を確保するために女性の採用に踏み切りました。

こうして第1号の女性作業員として採用された渡邉さん。
ふだんの仕事はこれだけではありません。

実はもともと山岳などを走るトレイルランナーなんです。

さらに…。

渡邉さん

「これがこんにゃく芋です」

農家の手伝いの仕事もかけもち。
冬の季節は練習や農作業ができず、時間に余裕があり、作業に携わることができたのです。

トレイルランの大会の多くは春~秋

渡邉ゆかりさん
「冬は山には雪が積もってしまうので、トレイルランの大会も少ないですし、農作業もほとんどない。そのため冬の間は時間もありましたし、すごくマッチしていました」

会社ではこうした冬に働ける女性の採用を強化。これまでに渡邉さん以外にも農家やアウトドアガイドなどの仕事を持つ女性を雇用し、いまや女性の作業員は13人に増えました。

力を必要とする男性の職場のイメージがある雪氷作業員。

実際は機械化などが進んでいて、女性でも十分に対応できているといいます。

渡邉さん

「女性の方でもできる仕事ですし、女性だけでもできる仕事だと思います」

女性が働きやすい環境整備も

さらに会社では、女性が働きやすくするための職場環境の整備も進めています

「ここが女性の休憩所です」

待機時間もストレスなく過ごせるよう昨年度、女性専用の休憩部屋を設置しました。

畳の休憩室
女子トイレもエリアが分かれている
2段ベットで仮眠も

個室の中にはベッドやトイレ、洗面所なども完備され、女性だけのリラックス空間ができあがっています。今後、さらに部屋を拡充していく予定だといいます。

渡邉ゆかりさん
「夜間の仕事なので、1時間でも2時間でも寝られて、気が休まると次の作業に集中できます」

現場の最前線で女性が活躍

取材したこの日、渡邉さんたちは急きょ、午前3時半から出動することに。

気温は1度。凍結を防ぐために散布する3トンの薬剤を急いで準備します。

助手席の人が無線でのやりとりや散布操作を担当

40キロあまりにわたり散布し、作業が終わったのは朝方の午前5時半でした。

渡邉ゆかりさん
「この仕事はかっこいいと思いますし、誇りに思っています。ライフラインを止めずに安全第一に作業していきたいと思います」

業務終了後も元気

人手不足が懸念される中、「男性の職場」の見直しによる女性たちの活躍が、高速道路の安全を支えています。

  • 中藤貴常

    前橋放送局 記者

    中藤貴常

    警察・司法などを担当後、現在は県政担当。行政・スポーツなどを幅広く取材。

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