群馬 磯部温泉 老舗旅館がパン屋をオープン おかみがなぜ?
- 2024年03月11日
「地域」と「食」は切っても切り離せません。今回お伝えするのは安中市の磯部温泉です。ここにある老舗旅館では新たに「パン屋」をオープンし、温泉地の新たな名物になることを目指しています。どうして旅館でパン屋なのか、取材しました。
(前橋放送局 通報員 綱川舞/2024年3月取材)
パンにも“温泉マーク”
安中市の磯部温泉といえば、「温泉マーク」の発祥の地。
しかし、ピーク時13軒あった旅館が今では6軒に減少し、どう地域を活性化させていくか、課題になっています。
こちらは、創業145年の旅館です。旅館のおかみ、原田三重子さんは、日々、宿泊客をもてなしてきましたが、2月、新たな挑戦を始めました。
それがパンの店をオープンさせたこと。「やどパン」と名付けられたこちらの店は、旅館の卓球で遊ぶスペースを改装して作りました。
店のロゴマークは温泉マークをイメージしました。そして、店の看板商品にも温泉マークが。長野県の郷土料理で、磯部温泉でも親しまれていたおやきをもとに作られたパンです。
モチモチとした食感を楽しめるように生地を工夫。中には野沢菜やきんぴら、つぶあんが入っています。
また、高崎市のソウルフードとして知られる「バンズ」に、マーガリンを挟んだ懐かしい味わいのパンもあります。
来店客
「なかなかこういったものはほかに行っても最近見ないから。やっぱりこういうシンプルなのがいいね」「磯部の発展のためにもいいことだと思います」
温泉でほっこり、焼きたてパンでほっこり
旅館のおかみが、なぜパン屋を始めたのか。実は原田さんは20代の頃、パン屋で働いていた経験があり、市内の公民館でパン作りの教室を開くほどの大の“パン好き”なんです。しかし、おかみの仕事があり、パン屋を開くという夢は実現できずにいました。
旅館のおかみ 原田三重子さん
「常にパン作りと私はずっと切り離せない状態でした。でも旅館をやりながらは難しいという思いがあって。常に思いはあったんですけど、実現するにはちょっと程遠い夢でした」
パン屋を開くきっかけとなったのは、コロナ禍でした。宴会の開催も減り、売り上げが半分以下に落ち込む月もあったといいます。そんな中、磯部温泉の新しい名物を作り、活気を取り戻したいという思いで挑戦したのがパン屋でした。
「旅館で温泉でほっこりするし、焼きたてのパンでまたほっこりするし。チャレンジしてみようかなと思って」
新たな土産品にしたい
2月のオープン以降、店には連日、多くの人が買い求めに来ています。原田さんは近隣の人たちに来てもらうだけでなく、観光客向けの土産品としても愛される存在になることを目指しています。
旅館のおかみ 原田三重子さん
「磯部温泉の少しでも集客につながれば一番いいかなと思う。路地を入ると小さいパン屋さんがあるみたいな、いろいろな立ち寄りどころがあった方が観光地としてはいいと思っています」