健大高崎 センバツ甲子園へ 箱山主将“厳しい言葉”で一戦必勝
- 2024年03月14日
今月に開幕するセンバツ高校野球に、2年連続で出場する高崎健康福祉大高崎高校は、去年、甲子園で初の初戦敗退。ことしのチームを束ねるキャプテンが仲間に投げかけるのは、修行僧や武士の教えを踏まえた、厳しい「言葉」です。
（前橋放送局 記者 中藤貴常／2024年3月放送)
能力ある「個」に、なぜ厳しい言葉？
健大高崎が、センバツ大会に向けた練習中のミーティングです。
その輪の中心にいるのが、キャプテンの箱山遥人選手。発するのは、厳しい「言葉」ばかりです。
「きついから無理とかじゃなくて」
「無理とかそういう言い訳とか作らないで」
「全部を完璧にするくらいの勢いと覚悟を持って練習をやっていかないと」
強豪・健大高崎の歴代のチームの中でも、ことしは、能力の高い選手が多くいます。
健大高崎 青※ヤギ博文監督
「中学時代の実績がある子が集まって来て、順調に伸びてきている。例年に比べて非常に力があると思う」
そのチームのキャプテンで、守りの中心のキャッチャー。
そして、4番を務める箱山選手の強肩強打は、プロからも注目される存在です。
「攻守ともに総合的に自信はあるかなと思う」
その自分を含めて「個」が強いチームを、あえて「厳しい言葉」でまとめていくのはなぜなのか。
甲子園で「戦う」ことを意識
大きな理由は1年前のセンバツ大会にあります。箱山選手は、今のチームで唯一、試合に出場。この時も4番・キャッチャーでした。しかし、「魔物が住む」と言われる甲子園で、チームは力を発揮しきれずに初の初戦敗退。「個」の力だけでは勝てない現実を目の当たりにしました。
「何もできず終わった。何か夢の中で戦っているような感覚だった。ふだんから甲子園を想像して本気でやっていくことが大事」
新チームでキャプテンに指名された箱山選手。日々の生活から甲子園に「行く」ことではなく、甲子園で「戦う」ことを意識し、それを仲間と共有することにしました。寮の部屋には、その「戦い」に向けて欠かせない「言葉」の数々がありました。
カレンダーにあるのは修行僧の言葉。
「武士の話もするんですけど、修行僧の話も結構、心にくる」
荒行を終えた僧侶や、武士の残した言葉がつづられた本も、むさぼるように読み込みました。
「苦しんで花を咲かせた時に、今までの苦労が光ってくる。苦しんで、結果が出たときにその苦しみが報われるという言葉ですね」
幾多の困難に立ち向かい生き抜いてきた先人たちが残した言葉。
それを、みずからの「礎」にしているのです。
「武士（の考え方）は本当に大事。野球の世界、スポーツの世界での負けは、死と一緒だと思っている。生きるか死ぬか、勝つか負けるかの戦いで、時には厳しく仲間にも言わなきゃいけないと思うし、そこはもう自分は愛情だと思っている」
ただ1つ“一戦必勝”
センバツ開幕まで2週間を切ったこの日。メンバー発表の撮影が特別に許可されました。
メンバーに入った選手と入れなかった選手の明暗分かれたこの時。
それでも箱山選手が投げかけたのは、厳しい言葉です。
「戦の場」に臨む思いが1つにならなければ、去年の二の舞になるという危機感からでした。
「兵庫（甲子園）には勝負に行くわけだから」
「戦いに行っているということは、絶対に全員が忘れずに」
「自分の存在価値や置かれている立場、役割を理解して」
「1人でも浮いたようなやつがいれば、絶対にいい結果というのは生まれない」
青※ヤギ博文監督
「（箱山選手は）いろいろ悩んできた。ただ、自分でやることは人一倍やるので、（ほかの）選手たちは『箱山が言うんだったらしょうがない』というところがある。箱山は本当に好かれていますからね、頼もしいですね」
決戦の地・甲子園へ、いざ出陣。
強力な「兵」をまとめる箱山選手が掲げるのは、ただ、「一戦必勝」です。
「甲子園の借りは甲子園で返す」
「甲子園でしか悔しさを晴らせない」
「勝ちというところには、どん欲にこだわってやっていきたい」
仲間とふだんは仲よしです
強い言葉を仲間に発する箱山選手ですが、新チーム発足まもない時には「キャプテンをやめたい」と監督に漏らしたこともあったということです。その後、翻意して仲間と向き合う中で大切にしているのは「メリハリ」。練習を離れれば、「仲のよい友人」として接しているということです。
健大高崎の1回戦は2日目。順調に進めば今月19日に福島の学法石川高校と対戦します。
キャプテン・箱山選手が「言葉」でまとめるチームの躍進に期待しましょう。
（※「柳」の真ん中が「夕」）
-
前橋放送局 記者
中藤貴常
警察・司法などを担当後、現在は県政担当。行政・スポーツなどを幅広く取材。
