ページの本文へ

ぐんまWEBリポート

  1. NHK前橋
  2. ぐんまWEBリポート
  3. 群馬 県内で初 職員採用試験の国籍条項撤廃 大泉町の考えは

群馬 県内で初 職員採用試験の国籍条項撤廃 大泉町の考えは

  • 2024年03月08日

外国籍の人が町民の2割を占める群馬県大泉町が、県内の自治体で初めて、職員の採用試験で「日本国籍を持つ」という条件を撤廃しました。この国籍条項の撤廃は、県が方針を表明したものの、慎重な検討を求める意見が議会などで相次いだため実施を見送っています。そうした中で撤廃を決めた大泉町の考えは。そして、周辺の自治体はどう捉えているのか取材しました。

(前橋放送局 記者 西山典男/2024年2月放送)

51か国の人々が暮らす町

大泉町の中心部

群馬県南東部に位置する大泉町。人口4万人あまりの町には自動車関連や食品などの工場がひしめき、北関東でも屈指の製造品出荷額を誇ります。その貴重な働き手として、約30年前から南米の日系人を中心に外国籍の人たちを積極的に受け入れ、現在は51の国の8300人にものぼっています。

大泉町で暮らす外国籍の人たちからの相談事を受けるのが、町の多文化協働課です。

次々とかかってくる相談にブラジル出身の非正規の職員が対応にあたっています。内容は、日常の困りごとから医療費などの行政支援まで、さまざま。多い時で1日に100件にのぼることもあるといいます。

大泉町多文化協働課 福田雅美課長

大泉町多文化協働課 福田雅美課長
「役場の中は、訪問者は日本の方よりも外国籍の方が多いという印象を受けるくらい多いです」

なぜ国籍条項撤廃なのか

大泉町 村山俊明町長

職員採用試験の国籍条項の撤廃を決めた大泉町の村山俊明町長です。外国籍の人は、いまや町民の5人に1人。1年ごとの契約の非正規ではなく、腰を据えて町のために働く正職員の外国人材を確保することで、行政サービスの向上につながると考えています。

大泉町 村山俊明町長

大泉町 村山俊明町長
「大泉町は定住・永住の方が極めて多く増えてきています。行政サービスも複雑になってきている中で、やはり外国籍の職員の人たちの採用というのは、今の時代には必要になってきている」

町が外国籍の正職員が必要な職場の1つと考えているのが、教育現場です。町の小中学校には、日本語が十分でない外国籍の子どもが多く通っています。

中学校の日本語学級

大泉町で同じような状況で育った人が雇用されれば、外国籍の子どもも含んだ長期的な視点に立った教育行政に取り組んでくれると、町では考えています。

大泉町 村山俊明町長

「現在、小学校の多いところでは30パーセントぐらいの児童が、外国籍の子供たちです。生まれも育ちも大泉町で、そうした人たちが公務員を目指していこうとなった時に、住民サービスの向上に期待ができる」 

お隣の太田市は慎重姿勢

一方、周辺の市町村はすべての職種で国籍条項を撤廃することには慎重な姿勢です。同じく外国人が多く暮らす太田市の清水聖義市長は、撤廃に伴うデメリットを指摘します。

太田市 清水聖義市長

太田市 清水聖義市長
「いかがなものかと思います。同じ身分で入ってきたのだから、同じ身分で判断してあげないと。課長になれないとか部長になれないとかはおかしい」

清水市長が指摘する問題点。それは、国の考えに基づく制約です。

外国籍の人が就けない自治体の役職や仕事

国民主権の原理から、地方自治体の意思形成にあたる管理職や、公権力を行使する税の徴収などの職には、日本国民以外は就くことができません。
そのため、外国籍の人が正職員で採用されても、責任あるポジションに就けず、意欲がそがれるのではないかというのが清水市長の意見です。

太田市 清水聖義市長

「あなたにはこの書類は見せませんよとか、そういうことはよくないと思いますね。だったらはじめから日本国籍を取ってもらうか、限定職種にするかだと思う」

採用のハードルは高い

県内では多くの自治体が慎重な姿勢の国籍条項の撤廃。実際に撤廃をしても採用までのハードルは決して低くはありません。大泉町の採用試験の倍率は例年10倍以上にのぼり、試験内容も日本人と同じです。村山町長は、厳しい選考をクリアする優秀な人材を呼び込み、人材の活用や行政サービスで実績を重ねていけば、町の取り組みが県内での先行事例になるとしています。一方、町には今回の決定に否定的な意見が多く寄せられているということで、町は住民に丁寧な説明をしていくとしています。

大泉町 村山俊明町長

大泉町 村山俊明町長
「大泉町は多文化共生の日本の将来の縮図ともいわれている中で、先進地的に取り組まなければいけない。モデルケースとして参考にしていただけるようになれば、多くの自治体に広がっていくというふうに思っています」

  • 西山典男

    前橋放送局 記者

    西山典男

    両毛広域支局担当として県東部エリアの行政から街のイベントまで幅広く取材

ページトップに戻る