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群馬 “水道管老朽化の危機” 耐用年数超相次ぐ 現場に密着

  • 2023年12月25日

 

私たちの暮らしに欠かせない「水」。いま、水道管が全国各地で次々に老朽化し、修理や交換が追いつかず危機的な状況を迎えています。このうち、群馬県内の上水道の水道管について法律で定められた40年の耐用年数を超えた割合を県内すべての自治体などに取材した結果、3つの自治体で50%近くにものぼっていました。対応に追われる自治体の現場に密着しました。

(前橋放送局 記者 渡辺毅/2023年11月取材)

“水道管老朽化が止まらず”  最新状況は?

厚生労働省によりますと、水道管は法律で定められた耐用年数が40年となっていて、それ以降も使用はできますが、漏水や破損するリスクが高まるとされています。
各地で水道管の老朽化が進む中、群馬県内の上水道の水道管のうち、ことし3月末時点で40年の耐用年数を超えた水道管の割合について県内の▼27の市町村と▼8つの市と町の上水道事業を運営する水道企業団に取材しました。
その結果▼最も高い嬬恋村で49.1%、▼下仁田町で47.3%、▼上野村で46%と、3つの町と村で50%近くにのぼるなど、あわせて8つの市町村で30%を上回っていることがわかりました。
また、前橋市は19.5%でしたが、耐用年数を超えた水道管が5年前と比べて2倍近くに急増しています。

“毎日のように漏水” 現場に密着

水道管の老朽化が加速している前橋市。
人口の減少に伴って水道料金の収入が減り、水道事業の財源も減り続けています。市の水道整備課には、毎日のように漏水が起きたという連絡が入っていて、対応に追われています。

前橋市 水道整備課 関真樹 維持修繕係長
「漏水か所が見つかったという報告を受けています。今後、修理や詳細な調査をしてもらうことになります」

取材した11月20日。住民からの連絡を受け、前橋市の職員が漏水の修理に向かいました。
この住宅では、44年前に整備された地中の水道管が腐食して漏水。水が噴き出していました。

前橋市 水道整備課の職員
「鉛管はシルバーっぽいが、それがこれだけ真っ白になっているので、もうだいぶ劣化が進んでいる状態です」

耐震補強も兼ねて、新しい水道管に取り替えることになりました。

漏水した住宅に住む人
「漏水を見つけてどうなってしまうんだろうと不安に思いました。年季が入っている水道管なので壊れても当然かなという感じですけど」

次に向かった現場では、住宅のとなりに小さな水たまりが…。
その中から水が湧き出していました。

重機で掘り出してみると、水道管に亀裂が入り、水が勢いよく噴き出していました。

こうした市民から寄せられる漏水の連絡は昨年度は1000件以上あり、今年度もこれを上回るペースになっています。

前橋市 水道整備課の職員
「日中以外にも、夜間や週末も漏水の通報があって昼夜を問わず調査をして修繕工事に対応しています」

深夜の漏水調査 “人手もぎりぎり”

前橋市では、およそ2600キロに及ぶ水道管の維持管理を行っていますが、今後、さらに老朽化が加速する見込みです。見えない地下の漏水をいかに早く発見するのか。
この日、多くの人が寝静まった深夜の時間帯に向かったのは、地下に老朽化した水道管が通る場所です。

6人の職員が特殊な機器を使い、地中の音を聞きながら異常がないか確認していました。
この日も新たな漏水が見つかりました。
前橋市では週1回ほどのペースでこうした地道な調査を行っていますが、見つかる漏水は、年間およそ100件にとどまり、人手もぎりぎりの状態だといいます。

前橋市 水道整備課の職員
「大変です。これは追いかけっこ。きつい部分はあるが、あと2班くらい(人員が)入れば効率は良くなりますよね」

新たな対策は “人工衛星×AI”

職員の負担を減らし、効率的に漏水を見つけるために前橋市が民間企業と連携して新たに導入するのが、「人工衛星」と「AI」を組み合わせた対策です。

その仕組みです。人工衛星から前橋市内の温度や地盤の変動などのデータを取得します。地表面が高温になったり、寒暖差が激しくなったりすることで水道管の老朽化が急速に進むとされているからです。そのうえで、▼市内の水道管が、いつ整備されたかや、▼過去に起きた漏水の事例などをAIに覚え込ませます。これらを組み合わせることで、漏水のリスクが高い場所を予測して可視化し、効率良く漏水の場所を見つけられると、期待されています。
前橋市ではこの取り組みを来年度から本格的に始める予定です。

前橋市 水道整備課 茂木政史課長
「市民の最も重要なライフラインの1つが、水道だと考えています。将来にわたって、持続ということをしっかり視野に入れながら効率性を追求して事業を進めていかなければならないと考えています」

前橋市の試算によりますと、老朽化した水道管の修理や交換にかかる費用は、30年後には、いまの9倍以上に達する見込みで、財政の負担も大きな課題になっています。
こうした中、前橋市では耐用年数が従来の2倍近い水道管を使い始めていて、老朽化に歯止めをかけたいとしています。
暮らしに欠かせない「水」。老朽化が急速に進む中、どう水の供給を維持していくのか。自治体の試行錯誤が続いています。

水道管老朽化 “いまの実態”

群馬県内の上水道の水道管のうち、ことし3月末時点で、40年の耐用年数を超えた水道管の割合について、県内のすべての市町村と水道企業団に取材した結果です。

▼嬬恋村49.1%▼下仁田町47.3%▼上野村46%▼草津町42.2%▼片品村39%▼玉村町38.1%▼渋川市32.2%▼神流町32%▼沼田市28.5%▼桐生市26.9%▼甘楽町26.2%▼長野原町25.4%▼高崎市24.2%▼伊勢崎市23.1%▼榛東村23%▼東吾妻町21.7%▼安中市20.9%▼みなかみ町20.8%▼川場村20.7%▼前橋市19.5%▼富岡市13.8%▼太田市、館林市、みどり市、板倉町、明和町、千代田町、大泉町、邑楽町の3市5町の上水道事業を運営する群馬東部水道企業団11.4%▼中之条町9.7%▼吉岡町8%▼藤岡市6.9%▼南牧村およそ3%▼昭和村0.8%▼高山村は「平成以降、上水道の水道管の大部分は更新したため、法律で定められた耐用年数を超えた水道管は、ほとんどないとみられる。ただ、いつ整備したかわからない水道管が一部あり正確な割合はわからない」と回答しています。

厚生労働省は「老朽化がかつてないレベルまで進行していて、今後さらに進むとみられる。自治体の広域連携や必要性の低い水道事業の縮小など、対応を考えなければいけない時期を迎えている」と話しています。

  • 渡辺毅

    前橋放送局 記者

    渡辺毅

    2004年入局。
    大阪局から前橋局に異動し
    災害・経済など担当

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