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群馬 外国人不法滞在者の摘発相次ぐ 巧妙化する手口に切り札も

  • 2023年12月25日

 

群馬県内には、ことし1月の時点で6万5000人以上の外国人が暮らしていて、いまや地域や経済にとっては欠かせない存在です。一方で、在留期間を過ぎても不法に滞在する人たちの摘発も相次いでいて、警察は取り締まりの強化を図っています。今回、摘発の現場に同行取材し、その対策や課題を取材しました。

(前橋放送局  記者  西山典男/2023年11月取材)

摘発の現場に同行

※写真は加工しています

太田市の住宅街。早朝、足早に歩くのは、県警の捜査員と出入国在留管理庁の職員です。

出てきたベトナム人(黄色)に声をかける捜査員 ※写真は加工しています

張り込んだアパートには5人のベトナム人がいました。出てきた彼らに声をかけ、在留カードやパスポートを確認したところ、このうち2人に不法滞在の疑いがあることがわかったということです。
この2人は出入国在留管理庁の施設で、さらに詳しい調べを受けることになりました。

県警によりますと、県内では去年、こうした不法滞在の疑いなどで摘発された外国人は125人にのぼり、10年前のおよそ3点5倍に増えています。
不法滞在が相次ぐ要因の1つに雇用する企業の存在があります。
おととし1件だった不法滞在者を雇用した企業への摘発は去年は3件、ことしは10月末の時点ですでに7件にのぼっています。

雇うから集まる

派遣会社の担当者

外国人を多く雇用する派遣会社の担当者です。この会社では不法滞在者を雇用していませんが、採用面接の際には不法滞在の外国人が多く来ているといいます。

派遣会社の担当者
「(不法滞在者は)普通にいますよ。この前も10人近く面接して、在留カード、パスポートをもとに本人確認しながらやった中で実際使えた(採用できた)人は2~3人くらいだった」

そして“安く雇うことができる”と考え、違法と知りながら働かせている会社もあるといいます。

派遣会社の担当者
「一般的に社会保険に会社が入って、本人負担と半分半分になるが(不法滞在者の場合は)入らないことによって費用負担が派遣会社にかからない。単価を安く雇うことができるので、雇う会社はありますよね」

県警は、こうした雇用する企業の存在がSNSや口コミで広がり、不法滞在者を呼び込んでいる状況があるとみて、取り締まりを強化しています。

群馬県警外事課 木沢孝之次席

群馬県警外事課 木沢孝之次席
「県内で摘発した不法滞在者の話を聞くと、SNSなどで『群馬県に来れば仕事があるよ』ということで、そういったメッセージを受けて集まってきてしまっている現状がある。こういう状況を把握しながら雇用する悪質な事業者があるのも事実なので、摘発を強化して(不法滞在者に)働き口がない社会を作り上げるために取り締まりを強化している」

偽造の手口も巧妙化

一方で、不法滞在であることを隠すための手口が巧妙化しています。
県警はことし9月、在留カードを偽造した疑いで太田市に住むベトナム人を逮捕しました。
そこで捜査員を驚かせたのが、偽造品の質の高さと枚数の多さでした。

群馬県警外事課 木沢孝之次席
「一見では正規品だか偽造品だかわからないような状況になっている。今回、摘発した被疑者から押収したパソコンとか、携帯電話を見ると約2000枚の偽造カードのデータが残っていた。それだけの需要があるということです」

偽造品対策に新たな切り札

在留カードの読み取りアプリ

そこで現在、新たな切り札とされているのが「在留カードの読み取りアプリ」です。
出入国在留管理庁が開発し、県警などは外国人を雇用する会社に普及を進めています。このアプリは、在留カードに内蔵されたICチップを読み取ることができ、照合させることで、正規の在留カードか確認できる仕組みです。

桐生市で開かれた研修会

この日、警察が開いたのが、桐生市の会社でアプリを普及させるための研修会。
警察は外国人を採用する際には、このアプリで在留カードの確認をしてほしいと呼びかけました。

総合人材サービス会社の担当者

受講した総合人材サービス会社の担当者
「アプリの使用方法はとても簡単なので、使いやすいと思った。やるべきことはしっかりやっていきたい」

県警は不法滞在者の取り締まり強化は治安の面だけでなく、県内に暮らす外国人の労働環境をよりよくするためにも重要だと考えています。

群馬県警外事課 木沢孝之次席

群馬県警外事課 木沢孝之次席
「不法滞在自体が犯罪ですので当然、取り締まらなければいけない。労働環境の適正化を図る意味でも意味があると思っている」

おわりに

外国人の不法滞在が問題となる一方で、県内には多くの外国人が暮らしていて、地元の経済や地域を支える存在になっています。
こうした外国人との共生が進む中、群馬大学の結城恵教授は「不法滞在者の取り締まりは重要だ」とした上で、「取り締まりだけでなく、ふだんから地域で日本人と外国人が力を合わせて安全・安心な環境を作ることが大事だ。そして顔の見えるコミュニティーにすることが不法滞在者たちに入り込む余地を与えない環境につながる」と指摘しています。

  • 西山典男

    前橋放送局 記者

    西山典男

    両毛広域支局担当として県東部エリアの行政から街のイベントまで幅広く取材

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