NASHの原因、検査、治療法 肝がんへ進行する恐れあり

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NASH動脈硬化心筋梗塞脳卒中体がだるい腹痛肝臓

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)とは

NASHからの肝硬変

NASHとは、非アルコール性脂肪肝炎の略です。肝臓に炎症が起こる病気で、脂肪肝になった人の一部に発症します。NASHになる前段階の脂肪肝では、動脈硬化心筋梗塞脳卒中などの危険性が高くなりますが、NASHになると、それと併せて肝硬変や肝がんになるリスクも高まります。

NASHは、男性がなりやすいのが特徴ですが、女性の場合も、更年期を迎える50歳以降になると増加し、60歳でピークになるといわれています。

NASHの原因

脂肪肝・NASHの原因

NASHになるはっきりとした原因はよくわかっていませんが、なかでも、糖尿病、脂質異常症、高血圧がある場合は、特に注意が必要です。
脂肪肝の主な原因は、食べすぎや運動不足などによる肥満です。また、短期間で無理にやせようとするのも原因です。急激なダイエットは、たんぱく質の不足を招きやすく、肝臓に中性脂肪がたまりやすくなってしまうのです。そのほかにも、アルコールのとりすぎも原因としてあげられます。

脂肪肝からNASHになりやすい人

NASHは、その前段階である非アルコール性脂肪肝の人の一部に発症します。NASHを発症しやすいのは、男性、50歳以上の女性、BMIが23以上、生活習慣病がある、血液検査でALPやASTの値が高い、血小板の値が低いなどの人です。

NASHの検査

NASHかどうかを確認する方法としては、皮膚の上から肝臓に針を刺して肝臓の組織を採取し、それを顕微鏡で調べる肝生検が基本です。良性の脂肪肝になると、肝臓の細胞のあちこちに、脂肪がたまっている白い部分がみられます。NASHがあると、白い部分のほかに炎症がある部分(黒い点)も多くなります。ただし、肝生検は入院が必要で、すべての脂肪肝に実施するわけではありません。

肝生検

最近は、体への負担が小さい検査として、超音波や磁気で肝臓の硬さを調べる超音波エラストグラフィやMRエラストグラフィなどを行うこともあります。

超音波エラストグラフィ・MRエラストグラフィ

さらに、肝臓の硬さと同時に脂肪の量を調べられる装置もあります。この装置を使った肝脂肪量の測定も2022年4月から保険適用になりました。

硬さ・量を同時に調べる検査の様子
硬さ・脂肪量を同時に調べる装置のアップ

ALT値が30を超えたらかかりつけ医へ

ALT>30(ALTオーバー サーティー)

2023年6月15日に開かれた日本肝臓学会の総会で、肝臓病の早期発見をよびかける、学会として初めての宣言(奈良宣言)が発表されました。ALT>30(ALT オーバー サーティー)です。
ALT値は、一般的な健康診断や人間ドックなどの血液検査でも、肝機能検査として広く測定されています。肝臓の細胞などが壊れた場合などに数値が上昇します。アルコール性肝障害に限らず、多くの肝臓の病気を発見するうえで糸口となる重要な値で、健康な成人の約15%はALT値が30を超えていると報告されています。
健康診断等でALT値が30を超えた場合は、かかりつけ医などを受診し、肝臓の病気の早期発見・早期治療につなげましょう。

NASHから直接、肝がんに進行しやすい

NASHから直接、肝がんに進みやすい人

NASHから直接肝がんに進行することもあります。60歳以上、BMIが30以上、2型糖尿病、血液検査で血小板の値が低い、肝機能が低下しているといった条件に当てはまる場合は、その危険性が高くなります。

NASHの治療

NASHの治療

NASHの治療は、まず生活習慣の改善に取り組むことが基本です。アルコールのとりすぎが原因の人は、お酒を控えることが大切です。肥満が原因の人は、食事療法運動療法で適正体重に戻すプランを立てましょう。

食事療法は、なるべく間食をとらないよう心がけ、三度の食事をバランスよくとり、飲み物は甘いジュースなどは我慢してエネルギーのないお茶や水などにしましょう。なお、就寝の2時間前までには食事をすませるように習慣づけます。
運動療法は、1日30分の早歩きがおすすめです。肝臓の脂肪は、運動してから10分たたないと燃え出さないので、きちんと効果を得るためにも、途中でやめないで30分以上続けるようにしましょう。

NASHのほかに糖尿病や脂質異常症、高血圧などにかかっている場合は、その治療も併せて行う必要があります。糖尿病の薬には、インスリン分泌を促すピオグリタゾン、脂質異常症には、スタチンエゼチミブなどが使われます。高血圧の薬では、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の使用が推奨されています。こういった病気がなくてNASHの人は、ビタミンEを服用します。ビタミンEには脂肪がたまって幹細胞に酸化が起こるのを抑える働きがあります。

脂肪肝についてはこちら
「Q&A 肝臓病」

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年7月 号に掲載されています。

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