アルコール依存症には遺伝子が関与!? 酒豪や二日酔いになる人は要注意

更新日

食の起源(NHKスペシャル)食で健康づくり依存症

お酒を飲むと顔が赤くなるか、赤くならないかで、病気のリスクが違うことをお伝えしましたが(前回の記事)、実はお酒に関する体質の違いはもう1つあります。それは「お酒臭さが残りやすいか、残りにくいか」です。お酒臭さが少し残るくらいどうってことないと思うかもしれませんが、実はアルコール依存症のなりやすさと関係があることが分かってきました。アルコール依存症になると健康への悪影響があることはもちろん、家庭崩壊や失業など、人生を台無しにしてしまう恐れがあります。そのアルコール依存症に陥りやすい運命の、遺伝子タイプがあることが、わかってきました。

翌日まで酒臭い人、酒臭くない人。日本人が夜まで飲めるのは遺伝子のおかげだった!?

前回の記事では、お酒に強いか弱いか、病気になりやすいかどうか決めるのは、アセトアルデヒド分解酵素を作り出す遺伝子の違いで、強さには3段階あることをご紹介しました。実は、その前段階である、アルコールをアセトアルデヒドに分解するアルコール分解遺伝子にも、3段階の強さがあります。

アルコール分解が弱い人達は、酔いがさめにくく、次の日まで酒臭いタイプ。逆にアルコール分解が強い人達は、酔いがさめやすく次の日にあまり影響しません。
欧米人は、アセトアルデヒド分解は「強い」タイプがほぼ100%で、顔が赤くなることも少なく健康リスクも低いのですが、実はアルコール分解遺伝子は「弱い」タイプが90%を占めることが分かっています。つまり、アルコールはゆっくり分解するため酔いが醒めにくく、翌日までお酒が残りやすいとされています。

逆に日本人によく見られるのが、アルコールの分解は「強い」タイプ。アルコールはどんどん分解してアセトアルデヒドを作り出すのに、アセトアルデヒドは分解できないという体質です。飲むと顔がすぐに赤くなり、健康リスクが高いですが、その代わり酔いがさめやすく次の日まで酔いの影響が残りにくいのです。

日本人は遅くまで飲んでも 次の日にはスッキリしている人が多い
日本人は遅くまで飲んでも 次の日にはスッキリしている人が多い

これは、海外と日本のお酒の飲み方の違いにも影響していると考えられます。
世界的に見ると、日本人(アジア人)は比較的夜遅くになってみんなで飲むといいます。終電近くまで飲んで、千鳥足で帰る人も見かけることがありますよね。一方、翌日職場で酒臭い人はあまりいません。これはアルコール分解が早いためです。

逆に翌日まで酒臭い人が多い欧米人達は、昼間にパーティーをやっても夜は早めに終わる傾向があります。日本人のように夜遅くまで飲むと次の日までお酒が残ってしまうからです。

欧米人はお酒が次の日に残りやすい人が多い
欧米人はお酒が次の日に残りやすい人が多い

自分のタイプを知ろう! 遺伝子検査でここまで分かる アルコールとの付き合い方

このようにお酒に対する体質は、アルコール分解遺伝子と、アセトアルデヒド分解遺伝子の2つの組み合わせによって決まるのです。
では、アルコール分解遺伝子とアセトアルデヒド分解遺伝子の組み合わせでどんな体質の違いがあるのか下の表でまとめたものを見てみましょう。大きく5つの型に分かれます。

  • A型...アルコール分解は「弱」で、アセトアルデヒド分解は「強」タイプ
    酒を飲んでも不快な反応がでにくいが、翌日まで酒が抜けず酒臭い。欧米人に多い。日本人には少なく4%です。
  • B型...アルコール分解は「中・強」で、アセトアルデヒドの分解は「強」タイプ
    酒を飲んでも不快な反応が出にくく、アルコールの分解も強いため翌日にも残りにくいタイプ。ただし両方の分解がどんどん進むので肝臓に負担をかけやすい。日本人の54%を占めます。
  • C型...アルコール分解は「弱」で、アセトアルデヒドの分解が「中」タイプ
    アセトアルデヒドが比較的ゆっくり作られるので、顔が赤くなる反応がやや弱いため自分は飲めると勘違いしやすい。アセトアルデヒドも高くなりやすく食道がんの危険が非常に高い。日本人の3%です
  • D型...アルコールの分解は「中・強」で、アセトアルデヒドの分解が「中」のタイプ
    どんどんできるアセトアルデヒドの分解がゆっくりのため、顔が赤くなったり不快な反応がでやすい。翌日にお酒は残らないが、食道がんの危険が高い。日本人の33%を占めます
  • E型...アセトアルデヒドの分解ができない「下戸」タイプ

    アルコールの分解が強かろうが弱かろうが関係なく、お酒が飲めません。日本人の7%を占めます。

顔が赤くなるかどうか、次の日までお酒が残りやすいかなど、自分の体験で、おおよそのタイプは検討がつくとは思いますが、自分の遺伝子を正確に把握して、お酒の付き合い方を考えるためには、遺伝子の検査を受けることもオススメです。

アルコール依存症になりやすい運命の遺伝子タイプ

アルコール依存症とはどのような状態をさすのか、厳密な規定はありませんが、仕事や家族よりも、お酒を優先してしまうような状態のことをアルコール依存症と呼びます。

一般に、アルコール依存症になりやすいのは、アセトアルデヒドの分解能力が高い人で、5つのタイプのうちA型やB型といわれています。日本でも、およそ107万人がアルコール依存症だと言われ、死亡率も非常に高くなっています。ある病院の調査では、アルコール依存症で病院にかかった人の平均余命はたったの11年です。脳が通常の状態とは変わってしまっているため、自分の意志でお酒を飲まないということは大変難しいものです。深刻な事態を招かないためにも、自分のタイプを知って、節度ある飲酒を楽しみましょう。

アルコール依存症は脳の状態が変化しており自力で断酒することは難しい
アルコール依存症は脳の状態が変化しており自力で断酒することは難しい

この記事は以下の番組から作成しています

  • NHKスペシャル 放送
    食の起源 第4集「酒」 ~飲みたくなるのは“進化の宿命”!?~