舌を鍛えてオーラルフレイルを予防!口腔機能の衰えを防ぐ筋トレ

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歯があれば食べられるは勘違い

歯は食べ物をかみ砕き細かくするためには重要な役割を果たしていますが、それと同等に大事なのは舌です。食べ物をかんで飲み込むまでの工程は意外と複雑になっています。
食べ物を口に入れると、甘い、しょっぱいなどの味覚から、食べ物がかたいか、やわらかい、熱い、冷たいなどさまざまな情報を口が感知します。

食べ物を口に入れると味覚から状態を感知する

そして、食べ物の状態を把握し、しっかりと噛まないといけないものがあるときには、舌が食べ物を迎えに行って奥歯の上にのせます。そこで、舌や唇、あごなどを巧みに使い、上下の奥歯で噛みます。十分に噛み砕けたら、食べ物を舌の上に1つにまとめて、舌を使ってのどに送り込みます。

喉頭蓋が、気道を塞ぎ、食道が開いて、食べ物が食道に送り込まれます

このとき、舌の筋肉と繋がっている喉頭蓋(こうとうがい)という、気道と食道を切り替える弁が、気道を塞ぎ、食道が開いて、食べ物が食道に送り込まれます。

この一連の動きの中で、重要な鍵を握るのが、舌です。舌は歯と同様に重要な役割を果たしています。この舌のパワーや、巧みな動きが大事ですが、年齢とともに体も衰えるように、舌も衰えてきます。
舌が衰えると、食べ物が気道の方に入って肺炎を起こす誤えん性肺炎になったり、食べ物が気道の入り口に詰まって窒息を起こしたりするおそれがあります。舌の衰えは命に関わるのです。

舌と口の点検!

日常生活の中で以下のことが増えてきたら舌や口の衰えが始まっています。

舌と口の点検項目

  • 誤えんする、むせる
  • 最近食べるのが遅くなった
  • 話が聞き取りづらいと言われるようになった
  • 舌や頬を噛む
  • 食べこぼす
  • ブクブクうがいをすると食べかすがよく出る
  • 舌が汚れる

特に、誤えんする、むせるというのは、若い人でも急いで食事をしたときに起こり得ますが、これが頻繁に増えてきたら、注意が必要です。
いずれにしても、これらの症状は、舌を始め、口腔機能が衰え始めているサインと言えます。最近では、この口腔機能が衰え始めたことをオーラルフレイルと呼びます。

8020運動の推進で、80歳で20本の歯を持つ人は、50%以上になり、2人に1人がこの目標を達成しています。しかし、一方で歯はあっても、うまく食べられないという人がいるのが現状です。
歯だけではなく、舌のパワーや巧みな動きなどの機能も大事だということです。東京大学の調査ではオーラルフレイルの人は、そうでない人に比べ、4年後の死亡リスクが2.09倍、要介護リスクが2.35倍になっています。口の機能低下に早く気づくことが大切になります。

現在では、歯科医院でも口の機能低下の検査を受けることができます。保険適用にもなっているので、上記の舌と口の点検で1つでも当てはまる人は検査を受けて欲しいと思います。歯科医院によってはまだ実施できていない場合もありますが、その場合は紹介をしてもらいましょう。

食事をおいしくいただくためにも、この機会に自分の口の機能は大丈夫か?と確認してもらえればと思います。

舌を鍛える筋トレ

舌の機能を衰えさせないために自宅でもできる筋トレがあります。今回は3つご紹介します。

舌ぐるぐる体操

舌ぐるぐる体操

口を閉じて、舌で、頬や唇などを押しながらぐるぐると回します。

右回り3回、左回り3回を1セットとして、1日に3~5セットぐらいは行ってもらいたいです。しっかり行うと、口が疲れるので、食事前は避けるようにしましょう。

舌の巧みさを鍛える方法

舌の巧みさを鍛える方法

舌を左右の口角にリズミカルに正確につけます。
1往復を1回として、10回ほど行います。それを1日に3~5セットほど行いましょう。こちらは、食事前の準備運動になりますので、食事前に行うのがおすすめです。

早口言葉

唇や頬、舌を巧みに使うことで、食べる力にもつながります。早口言葉を5回ほど繰り返すようにします。早口言葉は好きなもので構いません。

早口言葉の例

番組では、上記の早口言葉をアナウンサーが挑戦しました。失敗しても成功しても楽しくみなさんで行うこともできるので、それも魅力のひとつです。
マスク生活や、自粛により人と話をする機会が減っていますが、口を動かすことは健康を保つためには必要なことです。新型コロナの対策をしながらではありますが、口を動かす機会を増やすように心がけましょう。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年4月 号に掲載されています。

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  • きょうの健康 放送
    病は口から!歯と舌ケアでイキイキ生活 「健康の秘訣(けつ)は“舌”にあり」