詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2018年1月号に詳しく掲載されています。

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食べ物や唾液などを飲み込む働きを「えん下」といいます。えん下した食べ物や唾液などは、口から食道へと送られます。このように本来は食道に送られるものが、誤って気道に入り込んでしまうことを「誤えん」といいます。この誤えんによって起こるのが「誤えん性肺炎」です。誤えん性肺炎は、65歳以上の高齢者に起こる肺炎の多くを占めています。
誤えん性肺炎が高齢者に多い理由は、主に4つあります。(下の図)
通常、食べ物や唾液を飲み込むときは、気管にフタがされ、同時に食道が広がるので、食べ物や唾液などは食道にだけ入ります。(下の図)
しかし、高齢者や、脳卒中などで体にマヒがある人は、このフタの働きが低下して、飲み込むときに気管がしっかり閉じにくくなるため、誤えんが起こりやすくなります。誤えんした際に、口の中やのどにいる細菌やウイルスが食べ物や唾液と一緒に気管から肺に入ると、誤えん性肺炎が起こります。(下の図)
一般に、肺炎を発症すると38℃以上の発熱や強いせきなどが起こりますが、高齢者や重い持病がある人に多い誤えん性肺炎では、そうした典型的な症状が現れにくく、「ハアハアと呼吸が浅く速い」「何となく元気がない」「体が異常にだるい」「食欲がない」といった症状が多くみられます。「せん妄」といって、話す言葉やふるまいなど意識に混乱がみられることもあります。
本人が体調の変化に気づいていないこともあるので、周りの人もいつもと違う様子を見逃さないようにしてください。
誤えん性肺炎の治療は、原因となる細菌に合った抗生物質(抗菌薬)を使うのが基本です。軽度ならのみ薬が使われ、中等度から重度の場合は、入院し、注射薬による治療が行われます。高齢者の多くは、入院して治療を受けることになります。
日常生活でも、誤えん性肺炎の悪化や再発を防ぐために次のような対策を行います。
① 姿勢を正す
猫背で食べていると、飲み込む際に使われるのどの筋肉が首や頭を支えるため突っ張ってしまい、食べ物を飲み込みにくくなります。また反対に、背もたれにもたれ胸を反るようにして食べていると、口からのどにかけてのカーブが無くなって直線に近くなるため、誤えんを起こしやすくなります。
そのため、姿勢を正し、飲み込むときは背筋を伸ばして、あごを引き気味するようにしてください。
② 少しずつゆっくり食べる
高齢者など飲み込む働きが落ちている人は、意識せず何気なく食べていると、固まりのまま飲み込んだり、勢いよく飲み込んだりして、誤えんを起こしやすいことが分かっています。例えば、テレビを見ながら食べる、というような場合も飲み込みから意識がそれやすいので、注意が必要です。
誤えんを防ぐためには、意識して、少しずつ、ゆっくり食べることが大切です。食べ物を口の中に入れすぎず、口の中にあるものを全部飲み込んでから、次を口に入れるようにしてください。
③ 空飲み込み
食事中にむせたり、のどに食べ物が詰まっているように感じたりしたら、「あ~」と声を出します。その際に"ガラガラ"した声になる場合は、気管の入り口に食べ物や唾液がたまっている可能性があります。その場合は、口の中に食べ物がない状態で、「ごっくん」と唾液だけを飲み込む空飲み込みをしてください。そうすると、気管の入り口にあった食べ物や唾液を食道へと飲み込むことができます。そのあと、また「あ~」と声を出してみてガラガラしていなければ、大丈夫です。
④ 調理を工夫
高齢者など飲み込む働きが落ちている人は、例えばそぼろのようなバラバラする細かい食材は、一部が口の中に長くとどまるため、誤えんしやすくなります。
ワカメやのりなど、口の中に貼り付きやすいものも同様です。スープのようなサラサラしたものは、速いスピードでのどを滑り落ちるため、気管に入ることがあります。ナメコや里芋など滑るものも、飲み込む前に、気管に滑り落ちてしまうことがあります。
実は、あんかけのようにトロトロしたものは、バラバラにならずにまとまりやすく、しかもゆっくり飲み込みやすいため、誤えんを起こしにくいのです。誤えんを防ぐ基本は、「とろみ」をつけることです。飲み込みづらい食品や飲み物には、かたくり粉や市販されている「とろみ剤」でとろみをつけるとよいでしょう。スープでも、具のないポタージュなどにすれば、とろみがあって飲み込みやすくなります。
ただし、とろみをつけすぎてネバネバした状態にすると、飲み込みにくくなり逆効果なので、注意してください。
また、食材は固めではなく、やわらかく調理すると飲み込みやすくなります。大きさは、自分飲み込みやすい大きさにすることが大事です。
詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2018年1月号に詳しく掲載されています。