本文へジャンプ

【出演者インタビュー】鈴木和樹さん「困窮者を自己責任だと放っておく社会でいいのか」

2015年04月22日(水)

20150402_suzuki.jpg

4月2日放送(4月9日再放送)
スタート“新”セーフティーネット
第3回 私たちにできる 地域づくり
ご出演の鈴木和樹さんにメッセージをいただきました。


《鈴木和樹さんプロフィール》
NPO法人 POPOLO(ポポロ)事務局長。主な活動内容は、生活・労働の相談、一時的な宿泊の提供(ポポロハウス)など。他に、POPOLOが中心となって、「フードバンク」という食糧支援も行っている。新制度の開始によって、任意事業である「一時生活支援事業」を静岡県内の7市(富士・三島・沼津・富士宮・藤枝・島田・掛川)と共同で行う。


――3回目は、生活困窮者自立支援法の可能性と課題を改めて整理し、私たち社会に求められることは何か、具体的に何が出来るのか話し合いました。収録を通してどのようなことを考えましたか。

この問題を考えるときには両輪が必要だと思っていて、ひとつは「地域の方々が関わろうとする力」。他人事だと思ったり、私には関係ないと言ったりするのではなく、自分もいつそういう状況になるかわからないわけですから、私に何かできることはないかと関わろうとする意識が地域に必要だと思います。それと同時に、困った状態になった方が「支援を受け入れる力」も必要で、そのふたつが揃わないと難しいのかなと思いますね。僕らNPOはその両輪が合わさるように橋渡しをしています。

詳細は「続きを読む」をクリックしてください > > >
 

――NPOを設立しようと思ったきっかけやどのような活動をしているのかを教えてください。

もともと私は両親が離婚をして、その結果、生活保護世帯で育ちました。いろいろと嫌な思いをした体験もあります。そして、その後ネットカフェで働くようになって、いわゆる“ネットカフェ難民“の存在を知ってしまったんですね。そして、そういう人たちと関わるようになり、生活保護の申請についていくようになりました。
でも、生活保護を申請しても受給までに1か月かかるので、その間の住居はどうするんだということになり、ポポロハウスができました。次は食べ物がないので、フードバンクを作りました。今度は就職することが難しいとわかったので、キャリアコンサルタントを入れて就職支援を始めました。そして、就職が決まって地域に帰るとなっても居場所がなく、変な話、ホームレスだったころのほうがまだ人間関係があるような状況だったので、今度は地域との橋渡しをしようと活動しています。
そのようにひとつひとつ課題を見つけて、それに対してアプローチしていった過程がたまたまNPOのかたちになったので、元々NPOを作ろうと思って始めたわけではないんですよ。

――今回の生活困窮者自立支援法をどのように感じていますか。

この新制度は良くも悪くも私たちNPOや学者、行政の人たち全員で“作っていくことのできる”ような自由度があるんです。細かいことはほとんど決まっていないんですね。だからこそ私たちが「こういう解釈はできないか」とか、「こういうやり方はどうだろう」と提案していき、行政の方もどんどん取り入れて、地域も巻き込んでいく。そういう仕組ができる法律ではないかと思っています。悪く言えば何も決まっていないんですけどね。
だから、自由度が高いことを逆手に取って僕ら活動家はアプローチしていく必要があると思います。

――番組のアンケートでは「生活困窮は自己責任」と答えた方が25%いましたが、どのように思いますか。

ショックでしたね。僕は離婚をした家に生まれて生活困窮になったわけで、それを自己責任と言われてしまうときついなと……。病気が原因の方もいるでしょうし、リストラされた方や予期せぬ事故の場合もあります。それを自己責任と言われてしまうと……。
確かに自業自得の人もいるとは思うんです。でも、その人が「困ったよ」と言った時に、それは自己責任だろと放っておくのは違うのではないかと思うんですよ。たとえばアリとキリギリスの話があって、日本版はアリが「次は夏もちゃんと頑張るんだよ」と言って食料を分けてあげるのですが、ヨーロッパ版だと「自己責任でしょ」と言ってキリギリスは死んでしまうんですよ。でも、仮に自己責任であったとしても、その人が「困った」と言っている時に手を差し伸べない社会でいいのかと思うんですよね。
責任がその人にあろうがなかろうが、困っているんだったら手を差し伸べて、今度は気をつけようねと言って一緒に立ち上がろうという、そんな社会を目指したいと僕は思っているし、みんなもその方がハッピーじゃないですか。一生懸命運んだけど能力がなくて貯められなかった場合もあるし、盗まれた場合もある。そんな時にみんなで分かち合える社会を作りたいですね。そのためにはどうすればいいのかということを常に考えています。

――番組を通してどのようなことを伝えたいですか。

生活困窮は誰もがなり得る可能性があるということ。そして、あなたもそれを応援する、助けることができるひとりになり得るということを知ってもらえたらいいなと思います。たとえば熟年離婚がきっかけで困窮する女性もいると思うんです。そういう方の悩みを聞いて、じゃあ今度うちにご飯食べにおいでよと誘う。それもひとつの支援だと思います。そういう身近なところからでいいので、困った人がいれば「私には何ができるかな」と考えるきっかけになったらいいなと思います。それが地域福祉だと思いますね。


◆2015年4月特集「スタート“新”セーフティーネット」
本放送:夜8時00分~8時29分
再放送:午後1時5分~1時34分
2015年3月31日(火) 第1回 生活困窮者をどう救う?
2015年4月1日(水) 第2回 声を上げられない困窮者たち
2015年4月2日(木) 第3回 私たちにできる 地域づくり(生放送)

◆WEB連載
インタビュールポ「貧困の現場から」

◆関連情報
相談窓口や過去番組のダイジェストなど、貧困に関する情報があります:貧困

コメント

※コメントはありません