中国残留孤児二千人が国を訴えた国家賠償訴訟。その過程で、これまで知られることのなかった資料の存在が明らかになった。厚生省が孤児一人一人の安否や帰国意思を調べて作っていた「究明カード」である。そこからは、孤児が日本に帰ることを夢見ていた間の国の対応が読み取れる。昭和34年以降、国は消息の分からない孤児たちに「戦時死亡宣告」を行うよう、家族に同意を求めていた。カードには繰り返し行われた説得活動が記録され、生存を信じる家族に厳しい決断を迫ったことが見えてくる。また、帰国を願って送った孤児の手紙が「帰国意思なし」として扱われていたケースも多いことが分かってきた。究明カードをたどり、孤児帰国までの語られることのなかった戦後を描く。
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