地域づくり情報局

町民全てが”生涯現役”!秋田・藤里町

藤里町社会福祉協議会・菊池まゆみさんたちの福祉の常識をほんの少し変えることから始まった地方創生事業への取り組み。はたしてどんなエピソードが?

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2018年09月21日 (金)

高齢者パワーに太刀打ちできません

 藤里町社会福祉協議会は、福祉の立場からの地方創生事業「町民全てが生涯現役を目指せるまちづくり」に取り組んでおります。人づくり・仕事づくり・若者支援を3本柱に掲げており、先回は「仕事づくり」のお話をしましたが、今回は「人づくり」について、ご報告いたします。

 

【藤里は今、プラチナバンクが熱い!】

 昨年6月に、誰もが地方創生の担い手になれる仕組みの「プラチナバンク」を立ち上げました。1年が経過し、人口3,300人の町でプラチナバンク会員は340人を超えました。会員の年齢層は20代から90代と幅広いのですが、高齢者が圧倒的多数を占めています。

 「地域の役に立ちたい」という思いがあるなら、老若男女を問わずどなた様でも登録できます。足腰が弱っても手指だけでできる仕事もあります、手指が動かなくなっても大丈夫、口だけでできる作業もありますから。

 そうやってプラチナバンク会員を募った結果なのか、元来の藤里町民のノリの良さなのか。予想をはるかに超えた340人の会員全てが活躍できるようにと職員が走り回っても、会員の意気の高さに追いつけないのが現状です。

 平成29年度プラチナバンク事業の総収入は2,200万円で、上出来の滑り出しという外部の高評価をいただいても、「町民全てに活躍の場を」という壮大な目標には遠く及ばず、プラチナバンク会員が満足できるものになっていません。

 

【高齢者パワーに、ひよっこでは太刀打ちできませんでした】

 高齢者の知恵とパワーを過小評価しておりました。

 当初、若手のプラチナバンク会員による「チーム後継ぎスタッフ」が、プラチナバンク事業を円滑に動かすために先導するはずでした。予想以上に会員が増えたこともありますが、ひよっこでは、高齢者パワーに太刀打ちできなかったのです。

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昔の乙女たちの笑顔が弾けます

 

 例えば、高齢者を組織しての山菜取り企画は、たちまち空中分解します

「馬鹿者! フキを採るなら時期が遅すぎる。もう、ムシが上がっているぞ」と、予定の近場の山ではダメだから奥山に行くと、勝手に目的地を変更してしまう人。そして、自分の穴場は誰にも知られたくないと、当然のように個人行動を始める人を止められるはずもなく。

 そして、「チーム後継ぎスタッフ」の若者や職員は、ズンズン山に入って行くジジたちについていけず、ババたちにも置いてけぼりにされ、「足手まといだからついてくるな」とお叱りを受けます。

 そうやって収穫した山菜の皮むきをデイサービスに持ち込めば、そこでもダメ出しを受けます。「フキが若すぎるから保存向きではない」「日なたのワラビだから保存用で、このままでは食べられない」等々。

 デイサービス利用者はいつも帰りの時間を待ちわびているのに、「帰りの時間? ダメダメ、今日中に始末(山菜の皮むき)を終わらせないと」と、認知症の方も車いすの方も、馴れた手つきで活き活きと作業をしていました。

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「ふきの皮むきならまかせておけ!」と、デイサービス利用者は頼りになります

 

 私たちひよっこ(70歳以下世代)では高齢者に太刀打ちできないことを痛感し、考えを改めました。昨年秋に、10人ほどの高齢者中心の「プラチナ会議スタッフ」を立ち上げ、その方々を先導役にしてひよっこどもが裏方に徹することで、プラチナバンク事業はやっと動き出したのです。

 

【プラチナバンク活動事例をご覧ください】

プラチナバンク会員には、どんな活躍の場があるのか? 町民の疑問に応えるために「プラチナバンク会員活動事例集」を出しております。

 地域の企業や個人からの作業依頼を受けての活動が主ですが、地方創生事業の「山菜等の製品づくり」や「根っこビジネス」の作業、社協の「まち自慢クラブ事業」講師等も含めて、29年度は50種類ほどの作業・活動依頼がありました。

 kougi.jpg92歳講師の話に、みなが聴き入ります

 

 特に、平成30年度から始まった介護予防事業「まち自慢クラブ事業」でのプラチナバンク会員の活躍で、これまでの福祉支援のあり方が一変しました。

 92歳女性に「まち自慢クラブ」の講師をお願いしたのです。

 ダム湖に沈んだA集落出身の女性で、A集落が存在したことさえ知らない世代が多くなった今、A集落での暮らしがどんなものだったかを伝えて欲しいとお願いしたのです。

 「私なんかとても…」と最初は固辞していましたが、「私なんかの話でお役に立つなら」と引き受けて下さいました。家の中から探し出した資料をそろえ、地図を作り、ていねいな下準備のもとに講義が始まります。「…この辺りに美味しい湧水があって、夏でもとっても冷たくてね、一服(おやつ)の時間になれば、みんなが集まって少しだけ休めたわ。お義母さんにね、湧水は大切に使わせてもらいなさいと、そりゃ厳しく言われたわねえ」と、お姑さんが105歳で亡くなるまで看取ったその女性の、控えめな語り口の講座に心を打たれる人も多かったのです。

隣町からも受講希望者が集まり、「他の人にも聞かせてやりたい」と何度もアンコール講義が開催されています。

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まだまだ続く、まち自慢クラブ…

 

 それに触発されたのか、桶職人だった89歳男性が桶づくりの講義を行えば、69歳男性は洋楽は得意だとエレキギターを演奏し、負けじと受講生の男性・女性が自ら手を上げ始め…。居並ぶメンバーを見ても、講師か受講生かボランティアか分かりません。

 ここでは支援する側もされる側も手上げ方式で、日替わりで変わるのですから。人の手を借りなければ立ち座りが大変でも、本人がボランティア参加と言えば、ボランティア活動中なのです。

【根っこビジネスの道のりは遠いのですが…】

 冬山から掘り出した葛の根っこワラビの根っこを叩いて、白神山地の冷たい水に根気よくさらして葛粉・わらび粉を作る。そんな根っこビジネス事業自体は道半ばですが、ここでもプラチナバンク会員は大いに活躍しています。根っこ叩き作業中の顔ぶれを見て、驚きました。

 重度のうつ病や難病等で仕事を辞め、社会参加をあきらめ、孤立しがちな人たちが多く参加していたのです。社協の孤立支援対策事業等への参加を、強く拒否していた方たちでした。

 知人から、「家にいて暇なら、根っこ叩き作業を手伝え」と誘われたそうで、「根っこ叩き以外でも、役に立つことがあるなら遠慮なく声をかけてくれ」と、屈託のない笑顔で言ってくれます。そして、実際に彼らは大きな戦力になっています。

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根っこたたき作業に大わらわ

 

 「弱者でも担い手になれる地方創生!」や「支援する人・される人の垣根をはらおう!」等のスローガンを掲げて社協が先頭に立っているつもりでした。ですがプラチナバンク会員たちはすでに、支援する人・される人の垣根をあっさりと軽やかに超えていたようです。

だから藤里町社協は、誰もが地方創生の担い手になれる「プラチナバンク事業」が、人口減少を続ける町の大きな先駆けになると信じてがんばります。

次回は、三本柱の人づくり・仕事づくり・若者支援事業のうち、「若者支援事業」の新たな展開を、ご報告できると思っております。

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菊池まゆみさん(藤里町社会福祉協議会会長)

秋田県藤里町出身。1990年に藤里町社会福祉協議会に入り、現在、会長を務める。2006年から、ひきこもりや長期不就労者などの人たちの調査・支援を続ける。町の全戸調査を行ったところ、人口3600の町に100人以上ひきこもり状態の人がいると判明。就労支援などを行いながら、働く場を作ってきた。その結果、80人以上が働き始めている。さらに、「生涯現役」を合い言葉に、高齢者などもそれぞれの能力を生かして、地元に貢献しながら暮らしていける地域づくりの活動を続けている。主な著書に、「ひきこもり町おこしに発つ」 (秋田魁新報社)「藤里方式」が止まらない(萌書房)

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