全国ハザードマップ

「発災時 データで命は守れるか」検討会まとめ

2023/3/9

論点4 個人情報活用の可能性と課題について

<要旨>「個人の位置が特定できるデータ」は発災時に多くの命を救うツールとなり得る。特に要支援者においては、理解を得た上で、発災時に積極的に位置情報を活用することが望まれる。

 

<個人情報活用事例>

〇兵庫県伊丹市では、令和2年から令和3年にかけて、「LINEを活用した伊丹市避難行動要支援者の安否確認モデル事業」(実証実験)を実施。伊丹市の避難行動要支援者(約7,500名)のうち、個人情報の提供に同意している3,454名を対象に、LINE登録を呼びかけ(登録者数286名)、安否情報集約訓練を行った。

 訓練の内容としては、実際の避難行動要支援者またはその支援者が、LINEで安否確認機能を使って報告訓練を行い、災害対策本部にてその安否情報を集約しGIS(地理情報システム)に反映。災害対策の判断を行った。

 この方法であれば、発災時に要支援者の安否確認ができると共に、GPS、地図アプリから位置情報を登録するため要支援者の位置がピンポイントで把握することが可能となる。参加者に対するヒアリングによれば、要支援者の方は救助・救援される可能性が高まるのであれば個人情報を提供することに抵抗がないケースが多く、個人情報活用の事前承認(オプトイン)が被災者の命を守るためには現実的な選択であると判断し得る事例と考えられる。

 

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[図9:令和2年に実施された、伊丹市避難行動要支援者安否確認モデル事業について]

 

 

<課題>

個人情報活用への理解促進

 個人情報活用に関しては、プライバシーへの配慮が必要であり、発災時に限定した議論として、どこまで・どの範囲で位置情報を共有すべきかの社会的なコンセンサスをとる必要がある(「自治体のみ」「救助組織まで」…など)。個人情報提供に関しては、ネガティブなイメージが先行しており、適切な認知・理解を育むことも求められる。 
 

悪用リスク

 人や車の位置情報に関しては、自宅の位置や、移動の始終点情報の把握によって犯罪等に悪用されるリスクを伴う。その点においても、得られたデータの保存期間や、データ確認者の制限・コンプライアンス講習の義務化などの対策を精緻に検討する必要がある。
 

個人情報活用に対する躊躇・逡巡・障壁 

  個人情報の保護に関する法律 第62条の第1項にて、「『人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要があるとき』においては、行政機関等は、本人から直接書面(電磁的記録を含む。)に記録された当該本人の個人情報を取得するときに、本人に対しその利用目的を明示しなくてもよい」とある。発災時には個人情報を積極的に活用するとの指導もある一方で、自治体など各現場では発災時に個人情報の使用に対して消極的な風潮がある。国として、自治体による発災時の個人情報利活用をより積極的にフォローするなどの支援が必要と考えられる。また、自治体と救助組織間等で事前に協定を結ぶなど、発災時に命を守るために、スムーズに個人情報を共有できる体制構築への努力も求められる。
 

 データ提供側からしても、個人情報を外部提供することには様々な障壁がある。事前協定・契約を結ぶなど、発災時にデータ提供が迅速に行える体制構築を進める必要がある。

目 次

論点1 発災前・発災時にどういったリアルタイムデータ利活用の可能性があるか

論点2 リアルタイムデータ利活用のプラットフォーム構築の可能性

論点3 データ提供・利活用促進のトリガーとは

論点4  個人情報活用の可能性と課題について

 

 

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↑第1回検討会の議論はコチラから

 

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↑洪水予測システムに関する議論はコチラから

 

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↑第2回検討会の議論はコチラから

 

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↑第3回検討会の議論はコチラから

 

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↑第4回検討会の議事録はコチラから

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