放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBC,国内インディーズと包括的著作権契約

イギリスの公共放送BBCは5月6日, 国内のインディーズの音楽団体AIM(Association of Independent Music)との間で公共・商業展開の包括的な著作権契約を締結した。AIMにはアデルなど800人を超えるアーティストが加盟する。この契約によって,BBCはライブセッションや録音版をテレビ,ラジオ,オンラインに提供でき,商業部門のBBCワールドワイドとAIMは放送後ただちに商業展開を行うことができる。

英Ofcom,第3回PSBレビュー開始を発表

イギリスの放送通信分野を規制監督するOfcom(Office of C ommunications)は5月27日,2003年放送通信法で規定されている公共サービス放送(PSB)の現状を調査し,政府にPSBの今後の方向性を勧告するPSBレビューを開始すると発表した。Ofcomは, 過去2回のPSBレビューと比べ,デジタル移行の完了やブロードバンド時代への制度対応,視聴者のテレビ番組視聴の変化など,これまでの背景とは異なる点をあげ,こうしたコミュニケーション環境の変化とPSBの現行制度へ与える影響を検証するとしている。

独放送負担金,2013年の収入は2.5%増

ドイツの公共放送ARDとZDFが4月末に各州議会に提出した報告書によると,2013年1月に導入された放送負担金の初年度の収入は,総額76億8,000万ユーロ(約1兆630億円)で,2012年の受信料収入より1億9,000万ユーロ(約260億円)多く,約2.5%増になったことが分かった。公共放送は2013年10月に約1%増になるとの予測を出していたが,それを上回る結果となった。受信料収入は2010年以降減少が続き,増収となったのは4年ぶり。ただし,独立委員会のKEFが2013年からの4年間に公共放送が必要とする財源規模をあらかじめ確定しており,それを超える収入は公共放送は使うことができない。すでに4年間に合計11億4,590万ユーロの超過収入が出ることが見込まれており,2015年から放送負担金の月額を48セント値下げすることが決まっている。

フランステレビジョン,4K試験放送

公共放送フランステレビジョンは,テニス4大大会の1つ全仏オープンで,ウルトラハイビジョン(4Kテレビ)の試験放送を行った。5月25日から6月8日までの大会期間中,フランステレビジョンは会場のローランギャロスから,エッフェル塔経由の地上デジタル伝送と衛星伝送の両方で試合の模様を伝える4Kの試験放送を行った。地デジによる4Kの生放送は世界初。一方,商業放送最大手のTF1も,6月から7月にかけてブラジルで開催されるサッカーワールドカップで4Kの試験放送を行う。フランスは東京オリンピックが開催される2020年に4Kテレビの本放送開始をめざしている。

伊政府,歳出削減でRAIに予算削減を強制

2014年2月に誕生したイタリアのレンツィ新政権が4月に成立させた包括的歳出削減法の中で,公共放送RAIに対し,年内に1億5,000万ユーロ(約210億円)の予算削減を義務付けた。これは景気刺激策として低中所得者層の所得減税などを実施し,その財源として中央政府の経費節減や政府が株式を保有する公的機関などの予算削減分を充てるもので,経済財務省(MEF)が実質上の株主であるRAIにも負担を求めた。RAIのグビトージ会長は5月29日,短期的に財源を確保するためには送信部門を統括するRai Way株の一部を市場に売却することは避けられないとし,年内売却の日程で新事業計画の検討に入ったことを明らかにした。

Netflix,仏などでも動画配信事業開始へ

インターネットによる動画配信事業のNetflixは,フランスでも動画配信のサービスを開始することを明らかにした。主なコンテンツは映画のほかアメリカの連続ドラマ,それにフランスのマルセイユで新たに制作する連続ドラマなどで,2014年9月15日から月額10ユーロ以下で提供する。Netflixは2012年以来ヨーロッパで事業を拡大し,今ではイギリス,アイルランド,ノルウェー,フィンランド,スウェーデン,デンマーク,それにオランダで配信サービスを行っている。フランスに続いて2014年の年内にはドイツをはじめベルギー等5か国で新たにサービスを開始する計画だという。