放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

豪首相,ABCの“非愛国的報道”を攻撃

オーストラリアのアボット首相は1月29日,オーストラリアのインドネシアに対するスパイ行為を公共放送のABCが報道したことなどを痛烈に批判した。これは商業ラジオ局2GBのインタビューの中で述べたもので,アボット首相は,ABCがCIAのスノーデン元職員の情報をもとに,オーストラリアがインドネシアのユドヨノ大統領夫妻の電話を盗聴していたと報じたことと,オーストラリアへの亡命希望者がオーストラリア海軍から暴行を受けたとの証言を報じたことを取り上げた。その中でアボット首相は,「ABCはあらゆる立場に立つが,オーストラリアの立場にだけ立っていない」と述べると共に,「国の放送局には,真実へのコミットと共に,少なくともホームチームへの基本的な愛情が必要だ」として,ABCの報道姿勢を痛烈に批判した。これに対し野党労働党からは,「首相はメディア報道に不満をぶつけるのでなく,首相らしい振る舞いを身につけるべきだ」との反論が出ている。

香港,テレビ免許報道を機に新聞編集長更迭

香港の無料テレビ免許がHKTVだけに交付されなかった問題を大きく報道していた,大手紙「明報」の編集長が,突如更迭されたことが1月6日,明らかになった。香港の無料テレビ免許をめぐっては,4年前にCity Telecom(後のHKTV),i-CableそれにPCCWの3社が申請を行い,放送業務の規制機関のBA(当時)は,3社全てに免許を交付すべきとの報告書を出していた。ところが香港政府は結論を長期にわたって延期した末,2013年10月,HKTVを除く2社に免許を交付することを決めた。HKTVを支持する世論の反発が強まる中,明報は政府の決定の問題点を大々的に報道,一部の役員から「いつまで報道するのか」といった批判が出ていた。編集長の後任はマレーシア籍の人物で香港との関係は薄く,香港のメディア界では,中国政府が明報の経営陣に圧力をかけて編集長人事を動かしたとの見方が強い。

韓国,KCC委員長「KBSは広告廃止を」

韓国放送通信委員会(KCC)のイ・ギョンジェ(李敬在)委員長は1月14日,大学のセミナーでの講演で,受信料と広告料で運営されている公共放送KBSについて,今後受信料を引き上げる一方,将来的には広告をなくす意向を初めて示した。この中でイ委員長はKBSの受信料引き上げについて,KBSの広告を減らし,結果的にゼロにするのが目標だと説明した。またイ委員長は同月20日にも記者との懇談会で,KBSが受信料を引き上げるには,2019年までに広告を完全に廃止する具体的な道のりを示すべきだと述べた。KBSは2013年12月,KCCに提出した受信料引き上げ案の中で,現在の月2,500ウォン(約250円)を4,000ウォン(約400円)に引き上げる代わりに,広告を削減するとしているが,完全廃止には触れていない。

インド,テレビ視聴率調査会社に規制の網

インドの情報放送省は1月16日,テレビ視聴率調査会社の規制指針を発表した。指針によると,調査会社には情報放送省への登録が義務付けられたほか,調査会社に投資した企業がテレビ局や広告会社にも同時に投資することが制限された。また調査会社はサンプル世帯数を今後最終的に5万世帯にまで増やすことが義務付けられ,各規制への違反には登録取り消しを含む罰則が定められた。この規制は,現在インド唯一の調査会社であるTAMメディア・リサーチ社の不透明な調査に対しテレビ事業者の不満が高まったのを受け,2013年9月,通信・放送の規制機関TRAI が情報放送省に指針作りを勧告していた。TAM社の親会社の1つカンター社は指針内容を不服として,デリー高裁に提訴している。

パキスタン,テレビ局また襲撃で3人殺害

1月17日,カラチを拠点とする有力メディア企業Express Media Groupを標的とするテロ攻撃が発生,ニュース専門のテレビ局Express Newsに所属する3人が死亡した。同グループへの襲撃は半年足らずの間にこれで3回目となる。今回は政府と対立するイスラム武装組織TTP(パキスタン・タリバン運動)が犯行声明を発表,「再三の警告を無視し政府に協力した」などと同グループを非難した。