放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

中国メディア,日本の震災を大々的に報道

3月11日の東日本大震災の発生を受けて中国のメディアは,地震・津波・福島第一原発事故のニュースを大々的に報道している。このうち中国中央テレビ(CCTV)は,当日夜のメインニュースで地震の発生を伝えると,翌日の昼のニュースでは30分のうち前半をまるまる東日本大震災のニュースにあて,NHKの映像を多用しつつ日本からの記者リポートなどを放送した。また,ネット上では,一部のサイトに心ない書き込みが見られたものの,全体としては日本の被災状況に同情し募金を呼びかける声や,災害の中で日本人が秩序を保ち行動していることへの感嘆の声が目立った。

台湾,日本の震災に関する報道に批判

台湾では,東日本大震災に関する一部メディアの報道に誤報や大げさなものが目立つとして,視聴者からの苦情が相次いでいる。台湾の独立規制機関である国家通信放送委員会(NCC)が3月21日に明らかにしたところによると,11日の地震発生以降,NCCに対しこうした苦情の手紙や電話などが100件以上寄せられた。その主な内容としては,テレビ局が地震の被害について「世界の終末」と述べて視聴者の恐怖感をあおったというものや,「水素爆発」を誤って「核爆発」と報じたというもの,さらに台湾の記者の取材が礼を失しているというものなどがあったという。

韓国,再任されたMBC社長が組織改正に着手

社長の任期が満了となったMBCに関して,株式の70%を保有する政府系の財団法人放送文化振興会が2月16日,キム・ジェチョル(金在哲)社長の再任を発表した。キム社長は再任直後から組織改正に着手し,政府批判の番組を数多く制作してきたMBCの代表的時事番組『PD手帳』が所属する時事教養局を,経営陣の直轄とした。また,3月2日には,『PD手帳』の制作陣11人のうち6人を他の部署に異動させ,番組の中核を担ってきた担当者が外されたケースもあった。これに対して全国言論労組は, MBCを守れなければ今後言論を取り巻く状況はますます深刻になるとして,MBC,KBS,SBS の3労組が共闘委員会を立ち上げるなど,政権との対決姿勢を示している。

韓国,委員長再任の第2期KCCがスタート

韓国の放送・通信分野の規制機関である放送通信委員会(KCC)は3月26日,イ・ミョンバク(李明博)大統領の側近で初代の委員長を務めたチェ・シジュン(崔時仲)氏が留任する形で第2 期をスタートさせた。残る4人の常任委員については,野党民主党推薦で任期が残っているヤン・ムンソク(梁文錫)氏以外は新任で,それぞれ与党ハンナラ党推薦で副委員長のホン・ソンギュ(洪性奎)元KBS 報道局長,大統領推薦のシン・ヨンソプ(申容燮)前KCC放送通信融合政策室長,野党民主党推薦のキム・チュンシク(金忠植)元東亜日報東京支社長となっている。

リビア,アルジャジーラが攻撃の標的に

内戦が続くリビアの東部の主要都市ベンガジ近郊で3月12日,汎アラブ衛星テレビ局アルジャジーラの取材チームが攻撃を受け,カメラマンのアリ・ハサン・アルジャビル氏が死亡,特派員が負傷した。人権保護団体アムネスティ・インターナショナルは,アルジャジーラを意図的に狙った攻撃としている。また,20日には西部地域で同局の取材チーム4人が治安部隊に拘束されトリポリに連行された。リビアでは2月中旬以降,メディア関係者の拘束や攻撃が多発しており,アルジャジーラに関しては,放送もジャミング(電波妨害)を受けている。

ネパール,収監中の民放TV会長暗殺未遂

多額の偽インド紙幣と大量の麻薬所持容疑で刑務所に収監中だった新興商業衛星テレビ局News Nepal National Televisionのユヌス・アンサーリー会長が,3月10日,所内で銃撃され負傷した。容疑者はインド人で,その場で逮捕されたが,動機は明らかにされていない。News Nepal National Televisionは2009年12月に開局した衛星テレビ局。この事件と,去年2月,ネパール初の商業衛星テレビ局Space Time Network(STN)会長ジャミン・シャー氏が暗殺された事件の類似性を指摘する声もある。