放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英議会,受信許可料の凍結案を否決

イギリスの下院は5月20日,野党保守党が提出した受信許可料額の凍結案を334対156で否決した。BBCと政府の間には,2012年のアナログ放送終了まで受信許可料の値上げに関する取り決めが結ばれ,これに沿って4月から3ポンド値上げの年額142.5ポンドとなった。これに対し保守党は,不況を考慮し今年度の3ポンドの値上げと値上げシステムそのものを撤廃すべきと主張した。凍結案は否決されたものの,保守党は前BBC会長のグレッグ・ダイク氏を指名し,BBCを含めたメディア産業の見直しに着手しており,受信許可料問題を政治の議論にのせる姿勢を強めている。

仏CSA,地上デジタルラジオの免許事業者決定

2008年3月に19都市圏での地上デジタルラジオの免許公募を開始していたフランスの規制機関CSAは5月26日,最初の3都市圏における免許事業者を決定した。これによりパリ,マルセイユ,ニースの3都市圏で合計160局が選定された。パリでは,ニュース専門など新規の7局を含む商業放送および非営利ラジオ55局(現行FM48局)と,公募によらず割り当てられる公共放送Radio Franceの8局(現行と同じ)が放送されることになる。すべての事業者の準備が完了すれば,2009年末にも都市圏ごとに一斉に放送を開始する。

独Premiere,Sky Deutschlandに改称

ドイツの有料放送Premiereは5月14日,7月から社名をSky Deutschlandに変更し,Skyのブランドでサービスを一新すると発表した。これに伴い1991年に誕生したPremiereのブランドが消滅する。Premiereは2008年9月から,株式の約30%を保有するニューズ・コープ体制下で抜本的な経営立て直しを図っていた。同年12月に大幅増資した際,今後の事業戦略として社名とブランド名変更が検討されていた。加入件数は2009年3月末時点で,ドイツとオーストリアを合わせて約240万件。

伊,トリノ市とローマ市がデジタル移行開始へ

イタリア第4の都市トリノを含む北西部ピエモンテ州の西部で5月20 日,公共放送Rai Dueと商業放送Rete 4の2チャンネルが地上アナログ放送を終了した。6月16日には,首都ローマのある中部ラツィオ州で同様の移行を開始する。両州では,65歳以上の高齢者と年間所得が1万ユーロ(136万円)未満の低所得者を対象に,セット・トップ・ボックスの購入およびリースに対する50ユーロ(約6,800円)の助成がおこなわれる。デジタル放送へ完全移行するのは,ピエモンテ州西部では今年10月上旬,ラツィオ州では11月末を予定している。

アイルランド,地デジ運営事業者決定

アイルランドで5月12日,OneVisionが地上デジタル放送のマルチプレックス運営事業免許を交付された。OneVisionは,商業放送tv3,スポーツチャンネルSetanta,通信事業者Eircom,送信設備会社Arqivaで構成されるコンソーシアム。昨年,Boxer DTTが同免許を交付されていたが,2009年4月に返上したため,当初の入札の際に次点で選外となったOneVision がマルチプレックス運営に乗り出すことになった。

ポルトガル,地上デジタル放送開始

ポルトガルで4月29日,地上デジタル放送が始まった。全国29都市で同時にスタートし,人口の40%をカバーする。公共放送RTPが全国向け2チャンネルとローカル向け1チャンネル,商業放送のSICとTVIが1チャンネルずつ放送する。HDTVサービスも2010年内に提供される見こみ。アナログ放送は2010年末に終了の予定である。

欧州委員会,多言語のニュースサイト開設

EUの欧州委員会は5月26日,インターネットのニュースサイト「プレスヨーロッパ」(www.presseurop.eu/)を開設した。欧州委員会のコミュニケーション政策の一環で,英ガーディアン紙,仏フィガロ誌,独ツァイト紙,伊レプブリカ紙など,ヨーロッパの250にのぼる新聞・雑誌から選んだ記事を翻訳し,当面10言語で提供する。サイトの編集には,フランスの「ル・モンド」傘下のニュース誌「クーリエ・インターナショナル」が協力している。