放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

香港,政府のラジオ局免許管理は“違法”

香港の東部地区裁判所は1月8日,香港特別行政区政府が現在行っているラジオ局免許の管理は,香港基本法に定める表現の自由の保障に反するとの判断を示した。この事件は,政府にラジオ局開設の申請をしたのに受け入れられなかった立法会議員の梁国雄氏らが,香港の繁華街で地下放送を敢行し,活動家合わせて5 人が起訴されたものである。地区裁判所のダグラス・ヤウ判事は判決のなかで,現行の制度が香港基本法に違反するという被告側の主張を認め,現在の免許交付の業務が,政府から独立していない行政会議の裁量にゆだねられているうえ,勧告機関である放送業務管理局も政府からの独立性に欠けると指摘した。その一方でヤウ判事は,2月11日に高裁の結論が出るまでは,活動家たちによるラジオ放送の実施は認めないとの立場を示した。

韓国,放送の独立性確保で混乱の予想

第17代大統領に当選したイ・ミョンバク(李明博)氏の「大統領職引き継ぎ委員会」とハンナラ党は,1月21日,「放送通信委員会設立及び運営に関する法案」を国会に提出した。法案によると,放送通信委員会は大統領直属の行政機構として設立され,5名の常任委員のうち,委員長を含む2名は大統領が指名,残りの3名は国会交渉団体(国会で20名以上の所属議員を持つ政党)の代表が協議して指名した後,大統領が任命することになる。しかし,この法案では放送の独立性が損なわれるとする反対の声も強く,国会通過の過程で難航することが予想されている。

韓国,飲酒状態で生放送に出演したアナウンサーが降板

MBCは2月1日,「スポーツニュース」担当のイム・ギョンジン(林慶鎮)アナウンサーを降板させる決定を行った。イムアナウンサーは前日1月31日午後 9時50分からの生放送で,自身が担当する「スポーツニュース」に酔った状態で登場,不明瞭な発音に加え,コメントを読み飛ばすなどしたため視聴者から非難を浴びていた。なお,飲酒の事実については,本人が放送終了後に認めていた。

ミャンマー,衛星放送視聴料が167倍に

ミャンマーの軍事政権は,1月1日,それまで1台当たり年間6,000チャットだった衛星放送受信機の使用許可料を100万チャットに値上げすると通告した。新料金は国民の平均年収の約3倍に当たる。ミャンマーでは国内メディアに対し厳しい検閲があるため,中間層などの間で外国の衛星放送や,ノルウェーから放送されている反体制派のテレビ衛星放送DVB「ビルマ民主の声」などが視聴されていた(契約台数は2002年の統計で6万,現在はその数倍と推測されている)。当局による今回の措置は,昨年9月の民主化要求デモに強い危機感を抱いた当局が軍政に批判的なニュースを流す海外からの衛星放送視聴を封じるためにとられた,と見られている。

パキスタン,Geoの2チャンネルが国内のCATVに復帰

去年11月3日の非常事態宣言で国内のケーブルテレビへの配信が禁じられ,他の商業衛星チャンネルが全て禁止を解かれた後も復帰を許されていなかったウルドゥー語(公用語)のニュース専門衛星チャンネルGeo Newsとスポーツ専門チャンネルGeo Superが,1月21日,ケーブルテレビへの配信を78日ぶりに再開した。Geo Newsはパキスタン国内で最も信頼されるニュースチャンネルと評価されている。Geoは政府の提示したメディア行動基準に他の商業衛星テレビが署名した後も難色を示し両者の対立が続いていたが,19日,ムシャラフ大統領が欧州歴訪を前にGeo NewsとGeo Superのケーブルテレビ配信再開を許可したもの。Geo側が長期の配信停止による経済的損失に耐え切れず,行動基準遵守に同意したとも伝えられている。

アルジャジーラ・イングリッシュ視聴可能世帯数1億突破

カタールの24時間英語ニュースチャンネル「アルジャジーラ・イングリッシュ」は,1月16日,香港のケーブルテレビ局HKCTV(通称i-Cable)で放送を開始した。これにより視聴可能世帯数は世界で1億を超えるとしている。アルジャジーラ・イングリッシュは本部を中東(ドーハ)に置きながら,ドーハ,クアラルンプール,ロンドン,ワシントンD.C.の4か所に放送センターを設けて放送を実施している。