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五輪採用をチャンスに クリケットの花を咲かせたい

“クリケットのまち” 佐野市で進む取り組みとは
  • 2023年12月11日

クリケットというスポーツをご存じですか。日本ではあまりなじみがありませんが、世界の競技人口はサッカーに次ぐ3億人以上とも言われています。2028年のロサンゼルス五輪で128年ぶりに実施されることになり、 “クリケットのまち” の佐野市では、さらなる競技の普及と地域おこしにつなげようとする動きが出てきました。

(宇都宮放送局記者 齋藤貴浩)

誰でも飛び込めるクリケットの世界

ことし10月下旬、佐野市でクリケットのイベントが行われました。
競技が盛んなイギリスやインドなど9か国のチームが対戦し、競技場のすぐ隣には、初心者向けの体験ブースも設けられました。

参加した子どもたちは、野球とは違う形のバットを振ったり、打球を素手でキャッチしたりしながら、クリケットの持つ楽しさや魅力を体感しました。

記者も体験 いい汗かけました!

体験した中学生
「結構簡単で、でも難しいところもあって、またやりたいなと思いました」
「はじめてやりましたが、とても楽しかったです」

人口12万人のまちに根づくクリケット

佐野市

クリケットと佐野市の関わりは、10年以上前から続いています。

佐野市国際クリケット場 全面天然芝が特徴

当時、県立高校の跡地に日本クリケット協会が移転し、日本初となる国際規格のクリケット場を整備しました。
以来、毎月のようにイベントを開催し、市民がクリケットに親しめる環境を作りました。

今では中学生や高校生のチームも作られ、市民が参加できる大会も定期的に開催されています。
日本代表の選手たちも佐野市に移住するようになり、人口およそ12万人のまちが、日本のクリケットの中心地になっていったのです。

学校の授業でもクリケット

時間割にも “クリケット”

佐野市の多くの小学生は、体育や総合学習、それに英語の時間でクリケットを学習しています。

先生は現役の日本代表

この日は日本代表の選手が “先生” となって、4年生の児童に “投げる” “打つ” “捕る” など、クリケットの基本動作を教えました。

子どもたちも大喜びで、初めて習う“まちのスポーツ”を楽しんでいました。

体験した児童
「ボールを素手でキャッチするのが難しかったです。最近転校してきましたが、前の学校ではクリケットをしたことがなかったので、珍しいと思いました」
「実際に打てたり、ボールが捕れたりしたときはうれしかったです。クリケットは佐野の誇りだと思っています」

クリケットの経験が無い学校の先生でも指導できるように、教員用のガイドブックも作られています。基本の動きに加えて、45分間で行える授業の見本も掲載されています。

担任の教諭
「クリケットはなかなかなじみがないスポーツなので、授業で経験できるのは良い機会です。子どもたちが、体を動かすきっかけになればいいと思います」

こうした取り組みによって、クリケットを経験したことのある佐野市の児童は、この10年あまりで3万人以上にのぼっているということです。

五輪採用を機に人を呼び込めるか

ロサンゼルス五輪 採用時の日本クリケット協会

2028年のロサンゼルス五輪で採用されたことをきっかけに、 “クリケットのまち” 佐野市に多くの人を呼び込もうとする取り組みも動き始めています。

そのひとつが「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた「ワーケーション」の誘致です。

画像提供:CO×CO works佐野

全国で働く人たちに佐野市を訪れてもらい、市内のワーキングスペ-スで仕事をしながら、休み時間などに、クリケットを楽しんでもらおうという取り組みです。

この日は、日本クリケット協会やワーキングスペースの運営会社の担当者などが集まり、どのようなプランが魅力的か、アイデアを出し合いました。

経営コンサルタント

「クリケットがロサンゼルス五輪で盛り上がることを、もっと佐野市に結びつけられる案はないかなと、市内を訪れた人に良い体験を提供できないかなと考えています」

日本クリケット協会

「市内でレベルの高い大会が多く行われる時期があるので、それにあわせて、例えばクリケット場でグランピングをしながら大型連休を楽しむとかできないですかね」

佐野市の「ワーケーション」には、すでに東京の企業から事前の申し込みが来ているということです。

今後は行政とも協力しながら、佐野ラーメンや熱気球の体験など、市内の名物とクリケットを組み合わせた周遊プランなども準備することにしています。

佐野市スポーツ推進課 長谷川凌主事
「ロサンゼルス五輪の追加競技に選ばれたことは、国際クリケット場がある佐野市にとっても大変うれしいことだと思っています。今後は選手や観客など、クリケットで佐野市を訪れる人に、市内のグルメや観光名所などを巡ってもらい、 『また佐野に来たい』と思ってもらえるような事業ができないか検討しているところです」

クリケットの花を咲かせたい

日本ではまだ「マイナースポーツ」と呼ばれ、競技人口は4000人ほどにとどまっているクリケット。
五輪採用を追い風にして、 “競技の普及” と “地域おこし” の取り組みが、佐野市から広がろうとしています。

日本クリケット協会 宮地直樹事務局長
「五輪に採用されたことは、クリケットというスポーツを、多くの人に知ってもらえるチャンスだと感じています。ロサンゼルス五輪が開かれる前年の2027年には、競技人口や応援してくれる企業などを今よりも増やして、クリケットの花の開花の時を迎えたいと考え、5か年戦略を立ててきました。選手だけでなく、ファンや、応援してくれる企業の輪をさらに広げることを目指して、前へ進んでいきたいと思います」

  • 齋藤貴浩

    宇都宮放送局 記者

    齋藤貴浩

    2021年入局
    県警・司法担当を経て佐野市を含む両毛地域担当
    自宅の近所にクリケット場があります

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