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郵便受けの“鍵” 配達員が勝手に荷物を…

  • 2024年04月25日

「自宅にある鍵のかかった郵便受けを配達員が勝手に開けて、荷物を届ける事案が複数回ありました。どういうことか調べてほしいです」
NHKに寄せられた、こんな声。
配達員が鍵を?どうして?どうやって?いったい何が起きているのか、取材しました。

(津放送局 周防則志)

「配達員が勝手に…」防犯カメラに一部始終が

情報を寄せてくれたのは、四日市市に住む男性です。自宅を訪ねたところ、早速、問題となった郵便受けに案内してくれました。

玄関付近にあった郵便受けは、いたって普通の見た目。少し大きめのものや厚みのある届け物は入らないくらいの大きさです。鍵はダイヤル式で、開けるためにはダイヤルを正しい数字に2度合わせると開きます。

男性は最近届いた荷物の箱を使って、当時の状況を説明してくれました。

情報を寄せた男性
「これよりちょっと背の高いものが、ペタッと中に入っていた状態でした」

用意してくれた箱も、普通に投かんしようとすると、最後まで入りません。ただ、当時は荷物が完全に中に入った状態だったと言います。

男性によると、ふだんから意識してきちんと鍵をかけるようにしていたということですが、去年9月、この鍵が開いていることに子どもが気づきました。

実は以前からダイヤルがいつの間にかずれているなどの違和感があったという男性。玄関先に防犯カメラを設置していました。そこに写っていたのは…。

配達員が郵便受けを開け、荷物を入れる様子。よく見ると、配達員がダイヤルを回して鍵を開けている様子も確認できます。到着してから郵便受けを開け、荷物を入れるまでの時間は、ほんの数秒です。

情報を寄せた男性
「どうして開いたのかとか、なぜ開けたのかといった疑問をまず感じました」

男性が防犯カメラの映像を過去にさかのぼって確認したところ、去年4月から9月にかけて合わせて5回、鍵を開けて荷物を入れる様子が写っていたといいます。

5回のうち4回はヤマト運輸の委託業者の配達員で、1回は日本郵便の配達員だったということで、男性はそれぞれの会社から謝罪を受けました。

男性が配達員の会社に連絡したところ、会社は事実を認め不適切な配達だったと謝罪したということです。

情報を寄せた男性
「中に入っているのは個人情報とか配達物なので、そういったものを守るためにも開けられたくないなという気持ちがあります」

なぜ開いた? はっきりしない理由

なぜ鍵を開けることができたのか。会社側にも取材しました。

いずれの会社も配達員たちは「ダイヤルを触ったら開いた」などと話し、鍵を開けるための番号は知らなかったと説明しました。

番号は2ケタなので、元々ダイヤルが1ケタ目にたまたまあっていて、2ケタ目に動かしたらあいたという可能性はあります。ただ、そう何度もたまたまが続くとも考えにくいですし、はっきりとした理由はわかっていません。

「少しでも多く配達を」配達員の声

そもそもどうして郵便受けを開けて配達していたのか。

この点について日本郵便では「『少しでも多く配達を完了させたい』という配達担当者の思いから発生させてしまったものだ」としています。

実際に津市内で配達をしている人たちにも直接話を聞いてみました。

不在だった場合に再配達をするのは手間なのでそうした行為をしてしまうのだと思う

ダイヤル式とはいえ鍵が簡単に開くとは思えず驚きだ

インターネット通販やフリマアプリの普及などで、個人が送る荷物の量は以前に比べて大幅に増える傾向にあります。それが配達員の人たちの「はやく配達を終えたい」「再配達は避けたい」という思いにつながっていることは容易に想像されます。

配達員「ほかの場所でも開けた」

こうしたことが起きているのは、男性の家だけだったのでしょうか。

ヤマト運輸は、今回の不適切な配達を行った配達員が「ほかの場所でも、開いたところがあれば開けて投かんした」と説明したということですが、その回数などは不明だとしています。また、どれだけ起きているのかの調査を行う予定はないと話していました。

一方、日本郵便は、配達員が過去に同様の配達を行っていたと説明していますが、今年度県内で同じような事例は確認されていないとしています。

男性「私たちも負担減らす工夫を」

情報を寄せてくれた男性は「今後、このような不適切な配達はなくしてほしい」としたうえで、配達員の負担を考えて今回の件のあと「宅配ボックス」を購入し玄関先に設置したといいます。

情報を寄せた男性
「利用する側としても、宅配ボックスとかを設置して、配達している配達員の負担を減らしていけるようにしていくといいと思います」

日々の生活を支える物流を維持していくためにも、配達員の負担をどう減らせるのか。男性のように宅配ボックスを導入するとか、コンビニなど別の場所での受け取りを選ぶとか、あるいは玄関先に置いてもらう「置き配」を活用することもできます。

もちろん鍵を勝手に開けるようなことはあってはならないですが、私たちも「再配達してもらえばいい」と考えるのではなく、一人ひとりができることをして社会全体で負担を減らしていくことが重要だと思います。

  • 周防 則志

    津放送局 記者

    周防 則志

    2020年入局 
    “地域の課題を解決する”報道を目指している。
    趣味は食べること。三重に赴任して10キロ太りました。


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