【詳しく】富山県の“果樹大国”魚津市 担い手不足の克服策とは?
- 2023年07月31日
りんご、梨、桃、ぶどうといった果樹栽培が富山県内で最も盛んで「果樹大国」とも呼ばれる魚津市。
2021年6月から、特産の果樹の加工商品化と販売に向けた取り組みがスタートし、ことし(2023年)4月からは、魚津市内の小中学校の給食で提供されるようになりました。
どんな取り組みで、そもそもなぜ始まったのか。今後の見通しは?
取材にあたっている魚津市局の木本辰也記者が詳しく解説します。
魚津市で始まった取り組みは?
果樹栽培が盛んな魚津市は、担い手不足、消費の低迷などの影響で産地の縮小が進んでいたことから、収穫期以外にも果樹農家の売り上げを確保しようと、果物の加工商品化と販売に取り組んでいます。
魚津市や富山県などの呼びかけで、2021年6月に「果樹の郷うおづLFP協議会」という組織が発足し、魚津市の果樹農家に加え、食品の加工・販売の業者ら富山県の31の企業と団体が参加しています。
加工商品化と販売は実現したの?
加工品の第1弾として、特産のりんごをドライフルーツにした「ドライりんご」が商品化され、2023年4月から、魚津市内の小中学校で、ドライりんごを使った献立が提供されています。
乾燥の工程は、富山県北西部の氷見市で魚や牛肉などをインターネットで販売していた経営者が担い、献立は学校給食センターの栄養教諭が考案しました。
ドライりんごを使った給食を食べる子どもたちからの反応も上々のようです。
今後の製造・販売の見通しは?
ドライりんごの給食での利用は、保存性の高さや調理のしやすさなど業務用の食材として関係者から高く評価されています。
一方で、加工の工程は乾燥だけとはいえ、生食に比べて手間がかかる分、価格の高さが課題となっています。
協議会が発足してから2年間受け取っていた行政からの補助が、ことし(2023年)からなくなり、補助金がなくても取り組みを持続していけるように、給食以外の販路を開拓する必要があります。
ドライりんごは市販されていないの?
今のところ給食でしか食べることはできません。
私も試食させてもらいましたが、ドライりんごはそのまま食べても、調理をしたものでも、自然な甘さがありとてもおいしかったです。
需要が高まり生産量が多くなれば、市販される可能性も出てくると思います。
今回のような取り組みはほかにもあるの?
今回の取り組みは、農林水産省が推進するローカルフードプロジェクト(LFP)=地域食品産業連携プロジェクトの一環で、全国では20余りの道府県にそれぞれ1つ協議会が設置され事業が進められています。
富山県に設置されたのは、魚津市を中心とする「果樹の郷うおづLFP協議会」1つです。
ただ、各地では担い手不足が大きな課題となっており、この制度を活用しなくても、農林水産業の産地が多様な業種と一体となって加工品を作って販売する仕組みを作っていく必要があると思います。
りんご以外の商品化は?
現在、協議会では、梨もドライフルーツにできないか、商品化に向けて動いています。
協議会によると、取り組みを進める中で農家が果樹の加工に興味を持ったり、販売業者と農家が新しい加工品を試作したりと、ドライりんごに続く新商品開発に向けた機運が高まっているということです。