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「生」にこだわる“果樹大国”でドライフルーツ?現状打開への挑戦

  • 2023年07月31日

    りんご、梨、桃、ぶどうなどの果樹栽培が富山県内で最も盛んな魚津市。

    質の高さにこだわり、“生”の果実にこだわってきたといいます。

    ところが今「ドライフルーツ」としても販売することに力を入れ始めているのだそうです。

    いったいどうして? 取材しました。
    (魚津支局記者 木本辰也)

    危機感を持つ4代目...

    「自分は4代目なんですけど、これまで質をすごく求めてきて『量よりも質』とよく言われていました」

    伊東康彦さん

    こう話すのは、富山県東部の魚津市でりんご農家を営む、伊東康彦さんです。

    魚津市は、青森や長野の産地に比べると小さいですが、代々高い価格で販売できる“質の高い”りんごづくりに取り組んできました。

    りんごは120年近い栽培の歴史を誇り、このほかにも梨、桃、ぶどうなどが生産されています。

    そして、質が高いからこそ、果物そのものの味を楽しんでもらえる「生果(せいか)」、生の果実にこだわってきたといいます。

    しかし、伊東さんが近年、危機感を募らせているのが、担い手不足や消費の低迷の影響で進む、産地の縮小です。

    現状を打開するために

    収穫期以外にも販売して少しでも売り上げを確保しようと、数件の農家らと一緒に5年前から「規格外品」でジャムなどを作ってきた伊東さん。

    ただ、製造販売の知識や経験がなく、うまく利益を上げることができなかったといいます。

    そんな中、2年前、魚津市や富山県の呼びかけで「果樹の郷うおづLFP協議会」が発足。

    LFPとは、ローカルフードプロジェクトという農林水産省の取り組みの1つで、魚津市では、国などの補助を受けながら、加工品を開発し、販売するルートを確立することを目指すことになりました。

    協議会の様子

    そして、プロジェクトには、伊東さんたち果樹農家に加え、食品の加工・販売の業者ら富山県内の31の企業と団体が参加しました。

    協議会で事務局を務める宮本祐子さん

    「農家さんだけが頑張るんじゃなくて、お菓子屋さんなどいろいろな加工業者さん、流通業者さんといった人たちが一緒になって、魚津の果物を生かしていこうと思っています」(事務局の魚津市農林水産課 宮本祐子さん)

    加工品第1弾は?

    協議会が加工品の第1弾に選んだのは、魚津を代表する果物りんごを使ったドライフルーツ「ドライりんご」。保存がきき、うまみや栄養も凝縮される商品です。

    しかし、商品化への道は簡単ではありませんでした。当初、ドライりんごを加工できる業者が地元で見つからなかったのです。

    協議会がなんとか探し出したのが、富山県北西部の氷見市で魚や牛肉などをインターネットで販売していた若き経営者、東清春さんでした。

    東清春さん

    ただ、東さんは食品の製造は初めて。

    魚の干物づくりを参考に乾燥方法を考案し、取引がある業者から冷風乾燥機を借り受け、協議会と切り方、厚さ、食感などについて何度も議論を重ねて完成にこぎつけました。

    完成したドライりんご

    「水分が飛びきらないくらいに乾燥させることで“ドライ”ではあるんですが、食感がソフトな『ソフトドライりんご』と言えるような商品になっています」(東さん)

    ドライりんご、給食に

    次は商品化されたドライりんごを販売しなければなりません。協議会が注目したのが、学校の給食です。

    ドライりんごを安定的かつ大量に納入できることが見込まれたからでした。加えて、パッケージなども必要ないため、手間も抑えることができました。

    そして、学校の給食に出してもらうために工夫したのが献立作りです。

    学校給食センターの栄養教諭は、水を含むと膨らむドライりんごの性質を生かしたデザート、サラダ、総菜などを考案。

    献立を考案しした魚津市教育委員会の新保景子栄養教諭

    このほか、協議会のメンバーである魚津市のメーカーが、ドライりんご入りの給食パンの製造に協力してくれました。

    メーカーの高谷健太さん

    「地元の特産のりんごですから、定期的に積極的に使っていきたいと思います」(メーカーの高谷さん)

    学校でも大人気?

    魚津市特産のりんごの加工商品化と流通ルートの確保ができたことで、2023年度から毎月1回、魚津市内の小中学校では、ドライりんごか、生のりんごが入った給食に出されています。

    子どもたちの反応も上々のようです。

    記者

    おいしかった?

    全部食べた!

    記者

    ドライりんごはどんな味がした?

    えー、普通のりんご(笑)

    記者

    りんごは好きですか?

    苦手です。

    記者

    苦手なのに食べられたんだね、よかったね。

    魚津市の特産品果樹を使った新しい加工品。

    生産農家をはじめ関係者は、ドライりんごの品質や協議会の仕組みに一定の手ごたえを感じています。 

    「ドライりんごはすごくおいしくて、初めて食べたときは『自分たちが作ったりんごなの?』と思いました。我々りんご農家にとっても、担い手不足などの問題が切実なので、少しでも売り上げと評判が上がれば、産地に貢献していけると思います」(伊東康彦さん)

      • 木本辰也

        富山放送局 記者

        木本辰也

        魚津支局勤務
        石川、岐阜でも報道室・支局を担当

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