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人手不足のバス会社を救うか? マイクとハンドルの“二刀流”

  • 2023年07月06日

    全国的に課題となる人手不足。

    富山県のバス会社では、必要な運転手が26人も不足する事態に…。

    そんな中、この会社が考えた秘策は、“二刀流”の育成でした。
    (富山放送局記者 橋本真爾)

    ベテランバスガイドから一転…

    「正直なところ、『えっ!?』というのが一番でした」

    こう話すのは、富山県高岡市のバス会社「加越能バス」で30年のバスガイド経験を持つ、田島奈美さんです。

    田島奈美さん

    コロナ禍にあった2022年1月頃、田島さんは会社から、ある相談を受けました。

    バスの運転手に“転身しないか”というのです。

    ふだん乗用車を運転していた田島さんですが、バスの運転経験はありませんでした。

    しかし、今では田島さんは週5日、路線バスを運転する主力の運転手になっています。

    深刻な人手不足

    会社側が、バスガイドだった田島さんに運転手への転身を持ちかけた背景には、深刻な人手不足があります。

    バスの利用者が減り、会社もコスト削減の一環で人件費を削らざるを得ない状況にある中、新型コロナウイルスの猛威がさらなる追い打ちをかけていました。

    待遇面に不満を持った運転手が次々と会社を離れたことも影響し、5年前、県西部を中心に83あったバス路線を3割以上減らし、今の57路線に。

    それでも、路線バスなどの運行を維持するのに必要な108人の運転手には26人も足りない深刻な状況でした。

    運転手の募集を出してもいっこうに人は集まらず、運転手に残業をお願いするなどして、なんとかしのいできました。

    こうした中、会社が目を付けたのは、行動制限で観光ツアーの需要がなくなり、添乗する機会を失ったバスガイドでした。彼女たちに運転手に転身してもらうことを考えたのです。

    おもてなしの技術を学んだガイドは、接客も求められるバスの運転にぴったりの人材でした。

    運行課・車両整備課 太田万則 課長代理

    「コロナ禍があったことで、この業界自体を辞めていく人が非常に増えました。素人を運転手に教育するよりも近道かもしれないなと思ったんです」(太田課長代理)

    6人の運転手が誕生!

    この会社では11人のバスガイドがいましたが、このうち、40代から50代の6人のベテランガイドたちが運転手に転身。

    複数のバスガイドが一度に運転手になるのは、全国的にも珍しいということです。

    会社では、ガイドから運転手に転身しやすいように、様々なサポートをしました。

    • 大型二種免許の取得費用40万円あまりの負担
    • 勤務時間内に教習所に通うことを許可
    • 運転手になった際の手当の支給

    田島さんを含めた6人は、現在、路線バスに配属されて、地域の人たちの足を支えています。

    バスを運転する田島さん

    「少しでもバスに快適に乗れたねって感じてもらえたらと思いながら運転しています。それでもやっぱり、まだまだ難しいです」(田島さん)

    バスガイドと運転手の“二刀流”に

    コロナ禍前の日常が戻りつつある中、運転手に転身した女性たちには、新たな役割が期待されるようになっています。

    それは、バスガイドと運転手の“二刀流”です。

    観光ツアーの需要が徐々に増えて、バスガイドの仕事がコロナ禍前のように求められるようになってきているのです。

    このため、田島さんたちのようにガイドから運転手に転身した人たちが、再びガイドとしても仕事が割り当てられるようになっています。

    ガイドをする田島さん(左)

    今年(2023年)6月、田島さんは、ガイドとして名古屋を日帰りで訪れ、徳川家康ゆかりの「徳川園」などを巡り、見所などをベテランならではの語り口で案内しました。

    「『今日は運転手をやって』『この日はガイドをやって』と言われたら、すぐに対応できるようになって、それぞれの仕事で楽しみを見つけていければいいなと思っています」(田島さん)

    人手不足と地域交通

    全国的に高齢の運転手が引退し、若手のドライバーの採用が難しいバス業界。

    特に、地方においては、その影響が深刻な課題となっています。

    今回取材したバス会社では、会社にもともといるバスガイドを運転手に転身させるという“苦肉の策”で乗り切ろうと取り組んでいますが、それでも、必要な運転手の人数には足りていないということです。

    会社は、地域交通を維持するためには自社の努力に加えて、国や自治体の協力が必要だと訴えています。

      • 橋本真爾

        記者

        橋本真爾

        2016年入局
        函館局と小樽支局を経て、現在は富山局
        遊軍担当として経済を中心に取材

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