連続テレビ小説「ブギウギ」 足立紳さん 脚本制作の裏側語る
- 2024年03月29日
朝の連続テレビ小説「ブギウギ」。
趣里さん演じる、福来スズ子が多くの困難を乗り越えて、歌手の道を突き進み、
戦後の日本の多くの人に勇気と希望を与える物語です。
モデルは、「東京ブギウギ」などのヒット曲で知られる歌手・笠置シヅ子さん。
3月29日(金)の最終回を前に先日鳥取市の県民ふれあい会館で
「ブギウギファンミーティング」が開かれました。
ゲストは「ブギウギ」の脚本を務めた鳥取県倉吉市出身の足立紳(あだち・しん)さん。
脚本制作の裏側や作品に込めた思いなどを語って下さいました。
連続テレビ小説 「ブギウギ」脚本制作について
イベント当日、会場には抽選で選ばれた、およそ400人の観客が詰めかけました。
ゲストの足立紳さんが登場すると会場からは大きな拍手が。
ふるさと鳥取で「ブギウギ」のファンミーティングが開催だと聞いた時は
いかがでしたか?
嬉しかったですね。ブギウギを書かせて頂くようになってから、イベントなどを組んで頂くことも多くなって、本当にありがたくて。たくさんの人の前で話すことができて、鳥取のみなさまにあいつが書いたんだって、思って頂けると思うと嬉しいです。
最初、朝の連続テレビ小説の話が来た時はどのように感じましたか?
実は、朝ドラの話が来たのは初めてではないんです。以前にもあったんですが、その時は出来なかったんです。ある日「ブギウギ」の制作統括の福岡利武(ふくおか・としたけ)さんから「一緒に仕事をしませんか?」って留守電が入っていて。直感的に朝ドラかな?って。ただ、どのくらい忙しくなるんだろうって不安も。笑)
連続テレビ小説の脚本は、1週間分まとめて書いていくんですか?
そうです。1週間分を書いて、プロデューサーや監督、各演出の方々に送って。毎回、7、8人くらいで会議していましたね。最初に1週間分を書いて送って、それにフィードバックを頂いて。それで直して送る。大体、それぐらいのやりとりですね。
実際に台本を書いてみていかがでしたか?
最初、慣れていくまでが結構大変で。それまで僕、2時間の映画ばかり作っていたので。15分の物語っていうのが、まずひとつ大変でしたね。15分で翌日に続くんですけど、一つの話にもしたいっていうのが。その感覚を掴むのが最初は大変でした。
私が個人的に気になっているんですけど。主題歌のタイミングは脚本の段階で決まっているんですか?
最初は書いていなかったんですけど。何となく書いてみて下さって言われて。主題歌ではなく、脚本にはタイトルって書いていたんですけど。それで、自分なりにこの辺かなっていうのは書いておいて。あとは、皆さんと話し合ってズラしたりとか、いきなり頭に主題歌にしようとかそういう話し合いはしていました。
ヒロイン・福来スズ子に込めた思い
モデルは、笠置シズ子さんですが、主人公の福来スズ子はどういった思いで描かれた?
笠置さんの年表を読んだ時に、笠置さんにとって相当大切な人が次々にお亡くなりになる中で、自伝とかを読むと、困難な状況でも何かそこはかとないユーモアというか、ユーモラスな部分を感じて、そこを全面的に押し出せればいいなと。スズ子というキャラクターにユーモアという部分を託すことができれば思って、そこが僕にとっては重要視したところですかね。
趣里さんが演じるスズ子をご覧になった時の印象は?
脚本を書くのがより楽しくなりましたね。自分の中ではこういうイメージでっていうのがありましたけど。趣里さんが素晴らしかったので、書いていてめちゃくちゃ楽しかったですね。これを趣里さんが演じたらどうなるんだろうって。趣里さんの表情がとにかく面白くて、最終オーディションでも歌と踊りとお芝居をやって頂いたんですけど、その時の芝居の趣里さんの表情がクルクルクルクルよく変わって。見ていて本当に面白くて、趣里さんにヒロインをやって頂けたら最高だねって思いました。
実在の人物を描くにあたりに苦労したことはありましたか?
実在の方をモデルにした脚本はいくつか書いたことがあるんですけれども、どこまで事実とフィクションを織り交ぜるのかっていう所ですかね。ご本人が今回の場合、お亡くなりになられていても、遺族の方とかまだ生きていらっしゃる方もいるので。難しくもあり楽しくもありました。今回は起きている事象については、ほぼ笠置シヅ子さんに起こったことを割と時系列に沿って書いてはいるんですが、笠置シヅ子さんと福来スズ子のキャラクターはだいぶ違うかなと。笠置さんはだいぶ芯の通った所がある方だと思いますけど、福来スズ子はもう少しブレブレな人という感じで描いていきました。
花田家は身近な人物から着想
スズ子の家族は描く上でテーマはあったんですか?
テーマは、「ちゃんとしていないこと」。それは自分自身でもあるんですけど。一見、大丈夫なの?この人たちっていう。でも一生懸命、家族であろうとする。不器用という言葉だとカッコ良過ぎますけど。
花田家は足立さんの身近な方がモデルだったそうですね?
そうですね。僕はブギウギに関わらずどんな作品でも自分の身近にいる人や出会ってきた人を分からないようにモデルにするところがあるんですけど。笑)六郎はうちの息子です。息子も「これ俺?」って。六郎のちゃんと話を聞いているのかっていう所とか、ほぼほぼですね。笑)そして、梅吉は自分自身ですね。
スズ子の母・ツヤさんはどなたを?
私の母親と妻をミックスさせたような感じですね。子どもに対して過干渉な感じが母親で、旦那に対して厳しいところはうちの妻を。梅吉とツヤのやりとりは割とうちの日常ですね。笑)
(笑)
“ブルースの女王” 茨田りつ子
スズ子の良きライバルとして描かれた茨田りつ子についても伺いました。
モデルは、青森県出身で「ブルースの女王」と呼ばれた歌手・淡谷のり子さんです。
茨田りつ子は、どのように描かれたんですか?
半分ぐらいは自分が観ていたモノマネ番組の審査員のイメージ。淡谷さんにまつわる本をたくさん読んだんですが、笠置シヅ子さんと同等ぐらいの色々な激動の人生を歩んでいらっしゃって。その中でも芯の強さというのが半端ないというか。すごい人だったんだなって。その強さと、おかしみがブレンドされれば面白い役になるだろうなと思いました。
「涙が止まらない」とネット上などで大きな話題となった場面があります。
鹿児島の海軍基地を訪れ、特攻隊員たちを前に「別れのブルース」を歌うシーンです。
(第66回 第14週 「戦争とうた」)
りつ子の表情、歌、りつ子を見る特攻隊員の姿に涙が止まりませんでしたという声が寄せられました。このシーンは、反響が大きかったですか?
いまおっしゃって下さったような反響がすごくありました。淡谷さんの本を読んだ時に、劇中で菊池凛子さんが歌唱の際に着ていた衣装は、戦時中はそういった衣装はやめろというお達しがあったらしいんですけど。「それは自分の戦闘服だから」と淡谷さんはおっしゃって。ただの慰問ということでは無くて、戦闘服というくらいなので、私の中では戦いなんだっていう、戦っているくらいのつもりで歌っていらっしゃったんだと思いますね。
撮影現場では、特攻隊員の役作りに力を入れたとのこと。演じる若手俳優の皆さんに事前に本や映画を通して特攻隊員について学んで貰ってから、このシーンの撮影に臨んだそうです。
スズ子の最愛の人・愛助
愛助にはどういった思い入れがありますか?
愛助はとにかくスズ子の大ファンであり、エンターテイメントオタク。自分にもオタク気質があるので、書いていてすごく楽しかった。
愛助が亡くなるシーンをどう描くかについては、足立さんと制作陣の間で何度も話し合いが行われたそうですね。
笠置さんの史実でいくと、愛助が結核がひどくなって、大阪に療養に行ってそこで亡くなってしまって。スズ子、実際は笠置さんですね。笠置さんは最後までずっと会えずに亡くなってしまう。出産前に亡くなったことを知り、その上で出産に臨むという流れなんですけれども。史実ではあるけれども、朝ドラで描くにはなかなかキツイと僕は感じて。どっちのことが優しいことなのかは分からないけれど。愛助の思いとしては、スズ子には本当に良い状態で出産に臨んで欲しいという思いがきっとあるはずだろうと思って。自分のことはスズ子には伏せてくれっていうことに変えて、生まれた後に伝えるという風に変えました。
ブギウギの脚本を書き終えて
「ブギウギファンミーティング」の終了後に足立さんにインタビューをさせて頂きました。
地元、鳥取でのブギウギのファンミーティングは参加されていかがでした?
すごく楽しかったですね。わりと皆さん、笑って聞いて下さっていた気がしたので楽しくお話できました。なかなか直接感想を聞く機会はないので。ネット上の感想はちょくちょく見ていますけど。やっぱり直接の方が楽しいですね。
脚本を書き終えていまどんな心境ですか?
最初書いて居るときは「終わるのかなこの仕事」という感覚があったりしたんですけど。これだけ長く一人の人間を書くことはなかなかないので、愛着がものすごく湧いていたので、寂しかったですね、これで台本を送ってしまったら、終わるなこの仕事って。
インタビューでは、地元の皆さんから足立さんへの応援メッセージを観て頂きました。
ブギウギは毎日観ています。朝ドラの脚本を担当されて非常にすごいなと思いますし、倉吉の自慢ですね。
ブギウギになってから観るようになりました。すごく展開が早いんですけど、色々なキャラクターがいて面白いです。推しのキャラクターは、お父ちゃん。何気に好きでした。
足立さんの母校、北栄町にある、鳥取中央育英高校からもメッセージが届きました。
足立さんはいまや名探偵コナンの青山剛昌さんと並ぶくらい有名人です。
主人公のスズ子の困難にもめげず、前向きに進んでいく姿や明るい人情味あふれる姿に親近感を持っています。これからも素晴らしい作品を作って下さい。これからも足立さんのご活躍を期待しています。足立先輩、応援しています!
VTRをご覧になって、いかがでしたか?
嬉しいですよね。皆さんがこうやって見て下さって、応援して頂けるのは嬉しいことだと思います。
朝ドラの経験は今後の創作活動に活きそうですか?
活きると思いますけどね。やっぱりこれだけ長いのをやったというのはひとつの自分の自信になりますし、朝ドラ乗り切れたから何とかなるだろうという思いはあります。
最後に今後の展望を伺いました。
これから先も映画とかドラマを作っていきたいですけど、いつか鳥取県を舞台にしたものは本当にずっと作りたいと思っているので、それを実現させたいですね。まず倉吉が撮りたいですし、泊村(湯梨浜町)とか青谷(鳥取市)とかの風景がすごく好きなので、そういった所も舞台にして作ってみたい。
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