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伯桜鵬 初場所復帰までの舞台裏 /鳥取県倉吉市出身

  • 2024年02月26日

鳥取県倉吉市出身の伯桜鵬
去年8月に左肩を手術したあと、ことし1月の初場所で3場所ぶりの復帰を果たした。
3月の春場所では十両に復帰。再び関取として、西の十両13枚目で臨む。

伯桜鵬は手術から復帰までの4か月間、何を考え、復帰の場所で何を感じたのか?

“強くなりたい”ともがく20歳の知られざる日々。
NHK鳥取放送局の単独インタビューで語った。
(鳥取局記者 南 幸佑)

初めて襲った「緊張」と「恐怖」

2場所連続の休場で番付を幕下5枚目に落とし、ひさしぶりに出場した初場所。
そのときの心境を、意外な言葉で振り返った。

初場所初日、朝稽古に降りた時に怖くて、国技館に行くのが怖かったというのは本当に鮮明に覚えていて。
久しぶりの土俵に上がるのは自分にとって相当怖かったんだろうな、緊張したんだろうなと思いました。

高校時代から取材していて、「怖かった」という言葉を聞くのは初めて。

「なぜ、緊張という感情が出たのか?」と聞くと。

幕内に1回上がって、幕下に落ちて、“負けたくない”とやっぱり思ってしまいました。
そういう気持ちになることが初めてだったので対応力が欠けていたと思います。

初日 取組直後の伯桜鵬 「最悪の相撲」と振り返った

初めて感じる「緊張」「恐怖」を抱えながら迎えた初日。
やや動きに硬さが見られ、1分半を超える長い相撲となったが、執念でおよそ半年ぶりの白星をつかんだ。

相撲を取る稽古を再開できたのは1月に入ってから。
その後の取組でも、本人は「0点です」と、相撲内容は納得できるものではなかった。
それでも、着実に白星を重ねていった。

 

伯桜鵬を支えたものは何だったのかー。

徹底的に鍛えた下半身

画像提供:おおもりトレーナーroom

去年8月。脱臼しやすくなっていた左肩の手術に踏み切った伯桜鵬。

去年1月のデビューから、わずか半年後の去年7月名古屋場所で新入幕。記録的なスピード出世で注目を浴びる裏で、左肩は「正直限界だった」という。

入門してからずっと肩のけががあって、満足のいく稽古ができませんでした。
自分に言い訳を作らない、うそをつかないために、しっかりと肩を治そうと思えました。
家族やトレーナーも前向きに考えて心のケアもしてくれて、手術という大きな決断をすることができました。

画像提供 おおもりトレーナーroom

手術後のリハビリ期間、上半身をぶつける相撲の稽古はできない。
それでも、今できることをやるしかないと打ち込んだのが、下半身の強化だった。

画像提供 おおもりトレーナーroom

地元・鳥取で、複数のジムへ。さらに母校の鳥取城北高校にも行き、さまざまな種類のトレーニングに励んだ。

脚だけでなく、お尻や腰など、下半身全体を動かすトレーニングで、自分の体を見つめ直し、徹底的に鍛え上げた。
「この期間を今後の相撲人生に生かす」という強い思いが、休場中の伯桜鵬を突き動かした。

画像提供 おおもりトレーナーroom

稽古できないのは精神的にしんどい。
だけど、復帰したときの自分をイメージしてトレーニングを頑張りました。
今よりも強くなった状態で復帰した自分を想像すればするほど、気合いが入りました。

トレーニングを始めて3か月ほどたった去年12月に撮影された写真。

太ももの筋肉に注目

太ももまわりはなんと、約90センチ。成人男性の平均的なウエストサイズよりも太い。
休場前と比べて、さらに筋肉質になった。

1日のハードスケジュールを終えた後、温泉に行くのが1つのリラックスで、裸になって鏡で自分の脚を見ると“やっているな”と思うし、目に見えて下半身が仕上がってきているのが実感できたので、きついトレーニングでも、もっと強くなるんだと思い続けられました。

土俵際の粘りに

この努力は、初場所でも成果として表れる。
9日目、勝ち越しをかけた琴手計との一番。

土俵際に追い込まれる伯桜鵬 ここから盛り返す

いったん、土俵際に追い込まれるが、鍛えた足腰を生かして粘ると、一気に攻め返して、4勝目を挙げた。

いつもだったら不利な体勢になった時に慌てて引いてしまう癖があったけど、下半身、体幹を徹底的に鍛えてきて、少し土俵際に追い込まれても余裕がありました。
相撲の内容はダメだけど、下半身のトレーニングが生きた取組かなと思います。

インタビュー中の表情は明るかった

 

休場中の「研究」生かし 平常心で

休場中の「研究」が、復帰の場所で生きたことも。

それは、伯桜鵬の表情の変化だ。
去年の名古屋場所では、相手をにらみつけるような険しい表情を見せていた。

去年7月 名古屋場所の伯桜鵬 鋭い視線が印象的だった

一転して、今場所は終始、落ち着いた表情だった。

ことし1月 初場所の伯桜鵬 落ち着いた表情に

聞くと、休場中に多くの力士の映像を「研究」した上で、土俵の上で感情を出さないよう、意識していたという。

相手をにらみつけるのは、自分が冷静ではなかったと思いました。
休場中にたくさんの方の相撲を研究した時に、最終的に行きついたのは宮城野親方、白鵬関の映像で、土俵に上がった時、毎場所毎日同じ顔つきをしていると感じました。
今場所はどんな相手が来ても、負けても勝っても気持ちが変わらないというのは良かったかなと思います。

自分の心と向き合うことで、「精神力が鍛えられた」と振り返った伯桜鵬。

見据えるのは、幕内復帰と、その先にある姿だ。

伯桜鵬
「改めて相撲って単純に見えるけど難しい。中途半端な気持ち、準備では勝てないなと思いました。
僕の中で幕内復帰は一つの通過点だと思っていますし、幕内に上がることが大相撲での夢ではない。
自分自身が強くなっていかないとだめだと思うので、強くなるための稽古を徹底していきたいと思っています」

  • 南幸佑

    鳥取局記者

    南幸佑

    令和2年入局 
    鳥取市政や遊軍を担当
     行政、スポーツなど幅広い分野を取材中

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