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徳島の魅力を全国へ “藍、あふれる”藍染めの絵本が誕生

  • 2024年05月10日

4月に徳島で誕生した絵本「あいいろねずみのジャンケンポン」。
藍染め」をテーマに絵本の物語を楽しみながら、藍染めの工程を学ぶことができます。絵本の制作に関わったのは、地元・徳島の関係者と藍染めの職人たちです。子どもから大人まで、さらに海外の人にも徳島の魅力を伝えたいという思いで作られた絵本を取材しました。

徳島の魅力を伝える絵本が誕生

「あいいろねずみのジャンケンポン」

4月に完成した1冊の絵本。絵本の舞台は、藍染めの工房です。
物語の主人公は、その工房に暮らす子ねずみの3兄弟。
まじめなジャンと、元気なケン、そしてゆかいなポンの3兄弟は、いたずら猫のスクモと賑やかに過ごしています。工房に来るお客さんが藍染めをする様子を毎日見ていた3匹は、自分たちも藍染めに挑戦しようとしますが・・・子ねずみ兄弟のユニークな物語とともに、藍染めの工程や魅力を伝えています。

企画したきっかけとは

この絵本を作ろうと呼びかけたのは、徳島県内の出版社で絵本編集者を務める白井さんです。

絵本編集者の白井宏治さん
吉成

徳島の絵本を企画したきっかけは何だったんですか?

白井さん

徳島の出版の会社として、徳島の魅力を全国に伝えるような企画がしたいと思っていました。そして控え目な野心がありまして・・・という感じです。

子どもや大人の心にも響く絵本を作りたいと思った白井さんが、1番に声をかけたのが、徳島の児童文学作家として活躍中のくすのきしげのりさんでした。

徳島在住の絵本作家・くすのきしげのりさん

2人は何度も話し合い、徳島の魅力の1つ「藍染め」がテーマになりました。

吉成

なぜ藍染めだったんですか?

くすのきさん

子どもの頃から藍染めをよく知っていましたが、藍の栽培が徳島で盛んだったことを県外の子どもはほとんど知りません。徳島の子どもも十分に知っているわけではない。そこでまずは徳島で知ってもらって、全国の子どもたち、そして大人にも藍染めが伝わるような作品にしようと思ったんです。

絵本へのこだわり

そして、絵を担当したのは江口ノリコさん

東京在住の貼り絵作家・江口ノリコさん

立体感がある絵画のような作風が特徴の江口さんですが、今回はいつもより制作に時間がかかったといいます。

江口さん

色々と大変でした。全部切って貼っていくので手書きより時間がかかるんですよね。

すべてのページを貼り絵で制作したのです。色々な種類の紙を1枚ずつ重ねて作り上げました。

よ~く見ると幾重にも重なっているのが分かります。

すだちの木の奥から見える、徳島の山々が広がる風景。
このページは、なんと2週間かけて制作しました

2週間かかったページ!!

そして絵本を作る上で、藍の地元ならではの“こだわり”がありました。

くすのきさん

徳島の出版社、徳島の作家が藍染めを扱うってことですからね。藍染めの工程や状況が正確に伝わるようにしたいと思ったんですね。

そこで、くすのきさんと江口さんは、藍染めの工程を分かりやすく伝えるために、実際に10か所以上の藍染工房に足を運びました。工房内に置いてあるものや作業道具、藍染めを体験する人たちの表情を忠実に表現して、絵本の中にリアリティーを出すことができました。

例えば、こちらのラジカセ。

工房内のラジカセ

そして、藍染めの商品。

並ぶ藍染めの商品

他にも、壁の”渦潮”(うずしお)のポスターまで再現しています。

徳島らしい”渦潮”ポスター

徳島の風景も絵本の中で忠実に再現されています。

徳島の風景も実際に取材した場所だそうです
吉成

どのページも細かいところまで楽しめます!

そして、絵本の中に登場する「藍」の色にも、こだわりがつまっています。

当初、江口さんは絵本の藍染めの部分に、紺色に染めた紙を貼って表現していたのですが・・・。

江口さん

それを取材にご協力頂いた工房さんに見せに行ったら、『あ、これ、藍の色じゃないよね』とおっしゃったのを聞いて、そのこだわりはすごく分かるなと思いました。じゃあ変えましょうということになり、その工房で藍染めしてもらった紙を使いました。

こうして徳島の藍染めを伝えたいという思いがたくさんつまった絵本が完成しました。

くすのきさん

これを読んで世界中の子どもたち、そして大人も藍染めを体験してみたい、徳島に行ってみたいと思ってもらえたらいい。

完成した絵本 子どもたちの反応は・・・

出来上がった絵本は徳島県内の小中学校や図書館へ寄贈されました。

学校に届けられると、早速教室で担任の先生が読み聞かせをしました。

小学6年生のクラス
児童

ねずみが藍染めをしていて、結構おもしろかった。

児童

吉野川や眉山があったり、徳島の有名な所が描かれたりしていいと思いました。

児童

藍染めのおけの色がすごくきれいでした。

取材で耳にした、くすのきさんのこんな言葉が印象的でした。
根も葉もあるフィクションでなければ、リアリティが出ない」。
フィクションの物語であっても細部は事実に即してしっかり描くことがリアリティーを出すコツなんだそうです。そして貼り絵作家の江口さんも、工房のシーンも遠近感を出すために、方眼用紙で部屋の模型を作り写真にしたものを参考に制作するという工夫をしました。
藍染めに対するたくさんの人の思いと本気が、どのページからも感じられました。
この絵本は徳島県内だけでなく全国で取り扱っています。

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