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まちを再現!香川県東かがわ市のご当地ゲーム

  • 2024年04月09日

「デジタルを使った観光の活性化」。たどりついた答えは、実在の場所が登場するご当地感満載のゲームでした。“まちを訪れるきっかけにしてほしい”という制作者の強い思いとこだわりがつまっています。

冒険!てぶくろ王国

 

主人公「勇者」として王国を救うRPG

香川県の東端にある東かがわ市。ゲームの舞台は、東かがわ市と形がそっくりの島・てぶくろ王国です。物語は「魔物から王国を救ってほしい」という王様の依頼で始まります。プレーヤーは「勇者」となって、住人の困りごとを解決しながら王国の平和を取り戻すために奮闘します。

ゲームのタイトルは「Glove Story」。市政20周年の記念企画として、市がウェブ解析の専門家でつくる団体と協力して開発しました。スマホにアプリをダウンロードすれば、誰でも無料で遊ぶことができます。

東かがわをリアルに感じてほしい

 

ゲームを制作した八木暁史さん

中心となって企画・制作を行った八木暁史さんです。ウェブサイトへのアクセス解析をもとに改善の提案などを行うウェブアナリストです。

ゲーム制作のきっかけは2年前、当時住んでいた神奈川県から、仕事で東かがわ市を訪れたときでした。市の職員から“デジタルを使って観光を活性化させたい”と相談されました。その帰りに、市内を走る列車の中で見たある光景が、ヒントになったといいます。

八木さん

三本松から高校生が乗ってきて、みんな携帯ゲームをやっていて。で、そこでひらめくんですよね。ゲームの中に東かがわ入れたらワンチャンあるかもしれないなって。

画像左上に見えているのが白鳥神社

ゲームの特徴は、東かがわ市をリアルに感じられること。まちを歩く感覚で楽しめます。実在する地名のほか、線路や大通りなども再現されています。

建物の赤色となまこ壁が印象的

さらに白鳥神社や引田の老舗しょうゆ屋など、市内の名所や特産品も登場します。八木さんは、現地を訪れて特徴をとらえ、ゲームの世界に落とし込みました。

特産品・てぶくろに着目

 

八木さんお気に入りの道具も登場

そのこだわりが発揮されたのが「手袋」。国内シェア9割を占める東かがわ市の特産品です。参考にしたのは、資料館の展示でした。独特の形をした手袋作りの道具におもしろさを感じた八木さんは、手袋ができるまでをゲームに取り入れることにしました。工場見学のように、工程をひとつずつたどります。

八木さん

まずは手袋をちゃんと扱わないと、東かがわをPRできないんじゃないかなと。ひとつひとつ職人の手作りで作られていると伝えるのが、大事な役目だと思いました。

場所だけじゃない!地元の人もゲームに登場

実は八木さん、ゲーム作りの経験はありませんでした。仕事のかたわらプログラミングを学び、参考書を読み、試行錯誤を繰り返しました。

何度も東かがわ市に足を運ぶなかで生まれたのが、地元の人たちとのつながりです。制作を通して「人と人との距離の近さ」を実感した八木さんは、ゲームに地元の人を登場させることにしました。

八木さん

街の魅力が本当に人にある。自然な流れで、ゲームの中に地元の人を入れたいと思って動きました。

ゲームの中でしょうゆがないと困っているうどん屋の店主。モデルになったのは、市内で飲食店を経営している上原養敏さんです。

上原さん

出していただくだけで光栄だし嬉しいんですけど、八木さんにもっと男前に作ってくれって頼んだんですけどね(笑)

地元出身の上原さんは、自身も食を通じて地域を盛り上げる活動をしています。ゲームを通して、東かがわのことを知ってくれる人や、遊びに来てくれる人ができたらとてもうれしいと話していました。

「東かがわ愛」とこれから

 

ゲームに登場する魔物「名前喰い」。王国を襲い、地名や人の記憶を奪うという設定です。八木さんはこのキャラクターに、過疎化や合併で地名などがなくなり人の記憶から薄れてしまうのではないかという危機感を込めました。

実際、ゲームにも登場する白鳥温泉は制作中に閉館。地域の人からなじみの店がなくなったと聞くことも多く、社会課題に向き合う必要性を強く感じたといいます。

八木さん

町の消滅にも向き合わなくてはならない。伝える必要があると思って、大事にしたところです。

まちの魅力にも課題にも向き合い、表現を試みた八木さん。

「東かがわ好き」が高じて、ことし1月には神奈川県から東かがわ市に移住しました。制作期間を通して、当時住んでいた場所よりも東かがわに詳しくなるなど、「自然と東かがわがしみついていた」と話します。自身にとって、移住は自然なことだったといいます。

およそ2年の制作期間を経て、ことし2月にリリースされた「Glove Story」。
SNSをきっかけにVtuberが動画配信を行うなど、少しずつ話題になっています。今後は、来年の大阪・関西万博や瀬戸内国際芸術祭の開催に向けて、外国語版にも取り組もうとしています。

八木さん

ゲームでなるべく東かがわをリアルに感じてもらいたい。東かがわに行くきっかけが作れたら、本当にそれが幸いです。

  • 内 水吟

    高松放送局 記者

    内 水吟

    2023年入局。
    取材と並行して、ゲームを最後までプレイ。東かがわにすこし詳しくなりました。

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