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本をとおして人と人とのつながり生む 学生がつくる図書館

シェア型図書館で中高生の居場所をつくりたい
  • 2023年10月10日
本の先に人がいる

三豊市で、1人の大学生が、図書館のオープンに向けて準備を進めています。学生がなぜ図書館を手がけるのか。そこには、生きづらさを感じていたみずからの経験を踏まえて、中高生の居場所をつくりたいという強い思いがありました。

大学生が手がける小さな図書館

三豊市にある古民家の一角にオープンする小さな図書館。準備を進める人たちが持ち寄った本などが並び、地域の人たちからも集めていく予定です。偉人の伝記や絵本など、ラインナップはさまざま。年度内のオープンを目指しています。

館長を務めるのは、大学生の中村彩さんです。

中村さん

本の先に人がいる、そういうことを実感してもらえるようなシステムを作りたいと思って企画しました。

中高生の居場所をつくりたい

図書館のオープンには、中村さんの強い思いがありました。中村さんは、幼い頃からピアノを習ってきましたが、中学生のとき、全国大会で挫折したことをきっかけに、不登校になったと言います。

中村さん

その時期は、反抗期、親と仲が悪い、学校のいづらさみたいなのも重なって、自分というものの自己認識やアイデンティティーみたいなものが、ぐちゃぐちゃになって、すごく孤独を感じることがあったんですね。

その後、立ち直り、県内の高校に進学。その後、広域通信制高校のN高校に転入しました。起業部の活動やインターンで、地域の大人たちと知り合い、三豊の中高生が地域を探究する学校横断部活動「みとよ探究部」にも参加。さまざまな人たちと出会ってきました。

去年3月の卒業式では、卒業生を代表して答辞を述べました。

不確実なことが多い現代で、私たちの人生もまた何があるかわかりません。 
思い切ってこの学校に飛び込んだ私たちなら、 
どんなことでも乗り越えられると思います。

「自分の経験をふまえて、中高生の居場所をつくりたい」。そこで思い立ったのが図書館でした。

シェア型図書館

中村さんの図書館は、地域の人たちから寄せられた本が読めるだけではありません。一部のスペースを有料で貸し出し、借りた人がそこに読んでもらいたい本を置く「シェア型図書館」になる予定です。

魅力は、自分が推している本が誰かに読まれるかもしれないというワクワク感。そして、「好き」を共有して世界観を伝えられること。訪れた人は無料で読むことができます。

いっしょにつくる仲間

中村さんが図書館のオープンを模索していたときに、知り合いから紹介されたのが辻󠄀ひとみさんです。辻󠄀さんは、大人と子どものコミュニティーづくりに取り組んでいて、その一環として、図書館を設けたいと思っていました。

中村さんと一緒に、古いテレビや家具を用意。レトロなものを図書館に置いて誰もがリラックスできる空間をつくろうとしています。

子どものころ窮屈さを感じながら育ち、子育てでも悩むことがあったという辻󠄀さん。中村さんと出会った時から思いを語り合い、一緒に図書館をつくりたいと思ったと言います。

辻󠄀さん

年代は違うけど、この地域で生まれ育った者として、けっこう苦しんでいる部分とか悩んでいる部分がすごく似ているし、つくりたい世界観がすごく近いことがわかって。子どもたちに近い、大学生という存在の彩ちゃんがいてくれるのはおもしろいしすごくありがたい。

本をとおした人と人とのつながり

本を読んだ人が感想を書いて、本を置いた人がそれを読む。そうすることで、人と人とのつながりが生まれることを期待しています。

中村さん

ただ本がそこに置いてあるというより、本の先に人がいて、この本を読むことで、人との交流みたいなのが生まれるのがすごくいいんじゃないか。私は勇気を出して、1歩2歩3歩ぐらい頑張って踏み出してみたけど、けっこう大変だったから、もっと気軽に1歩踏み出せる場所としての図書館があればいい。

  • 佐藤和枝

    高松放送局記者

    佐藤和枝

    丸亀支局担当。ミステリ好き。

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