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どうなる!?地方鉄道 JR西が協議会設置要請 四国の鉄道は?

  • 2023年10月05日
    どうなる!?地方鉄道の未来

    地域の足として欠かせない公共交通機関については、人口減少や新型コロナの影響で大きな打撃を受け、今後のあり方をめぐってどのような議論が進むのか注目されます。記事では担当記者の解説とともに、地方鉄道をめぐる最新の動きや四国の現状を振り返ります。(10月3日放送)

    JR西 再構築協議会設置を国に要請

     

    利用の少ない芸備線

    10月3日。この日は地方の鉄道をめぐって大きな動きがありました。JR西日本は、広島県と岡山県を結ぶ芸備線の一部区間について、国に対し路線の存続やバスへの転換などを議論する「再構築協議会」を設置するよう要請しました。10月に施行されたばかりの法律に基づくもので、要請は全国で初めてです。国は、沿線の自治体に意見を聞いた上で、協議会を設置する必要があるか判断することになります。再構築協議会では、複数の自治体の意見を集約したうえで、▼地方鉄道の利用促進や、▼バス転換に向けた実証実験を行うなど、地域の実情に沿った形で公共交通のあり方を検討することになります。

    再構築協議会はこれまでとどう違うのか

     

    谷口
    アナウンサー

    再構築協議会は全国初の要請ということですが、地方鉄道の議論はこれまでもあったと思う。どう違うのか?

    竹内記者

    国はことし「公共交通再構築元年」と位置づけて、関連する法律を改正し、今月施行しました。その中で、再構築協議会は、地方の鉄道対策の柱といえるものです。この背景には赤字が続く地方鉄道の再構築をめぐる議論を促そうという狙いがあります。

    竹内記者

    これまでは、赤字などを理由に議論を進めたいJRなど鉄道事業者側が、鉄道のあり方を地元の自治体と議論しようすると、地域住民の移動手段を確保したい自治体側は、「廃線に向けた議論が一方的に進むのではないか」と警戒感が強まり、議論が進まないケースが少なくありませんでした。こうした状況を踏まえて、再構築協議会という新たなしくみでは、国が積極的に関与することが盛り込まれています。自治体や鉄道事業者の要請に基づき、国が再構築協議会を設置したうえで、さらに両者の協議を調整し、議論の進展を促そうというものです。

    JR四国の現状 四国各県の知事の考えは?

    谷口
    アナウンサー

    国が鉄道事業者と自治体との間に入って調整する役割を果たすわですね。この再構築協議会の設置、四国ではどうなんでしょう?

    竹内記者

    四国でも、再構築協議会の設置の対象となりそうな区間があります

    JR四国の輸送密度(2019年度)
    竹内記者

    JR四国の管内では、▼牟岐線の一部区間と▼予土線、▼予讃線の愛媛県内の海回り。これら3つの区間は、1日に平均で、何人を運んだかを示す「輸送密度」が1000人未満という、利用者が極めて少ない区間です。国土交通省は、協議会の設置にあたって、輸送密度「1000人未満」を目安に早急な改善が求められる区間を優先するという方針を示しています。輸送密度が1000人未満という点では、これらの3つの区間は、国土交通省の方針に該当します

    JR四国の考えは?

    谷口
    アナウンサー

    では該当する3区間は、すぐに再構築協議会を設置することになるのか?

    これまでの記者会見で述べる西牧社長
    竹内記者

    すぐに設置とはならなそうです。JR四国の西牧社長は記者会見で、「いきなり国に対して再構築協議会の設置を要請することはない」という考えを示しています。また、まずは自治体と、どのような形で、何を議論するかという「入り口の議論」を始めたいとしていて、具体的な議論の進展はこれからになります

    四国4県知事の反応は

    四国4県知事の発言(これまでの記者会見で)
    竹内記者

    輸送密度1000人未満の区間がある愛媛・高知・徳島の3県の知事では、「廃止ありきの議論は違うのでは」とか、「廃止前提の議論には応じられない」という考えを示しています。また、輸送密度1000人未満の区間がない香川県の池田知事は、「これからも意見交換し利用促進策を進めたい」としています。ただJR四国は、主要な瀬戸大橋線も含めて全ての路線が赤字で、厳しい経営状況が続いており、今後、鉄道のあり方をめぐる議論が加速することは、間違いないと思います

    谷口
    アナウンサー

    愛媛・高知・徳島の知事からは、慎重な反応という感じがしますし、とはいえJR四国の経営状況も厳しいと。地方鉄道のあり方をめぐる議論はこれから進むのでしょうか?

    竹内記者

    今後は、再構築協議会という新たな仕組みを活用するのか、それとも新たな仕組みに頼らずに、JRと自治体の両者で議論を重ねて対策を打ち出せるか、どちらの方向をとるのかがポイントだと思います。JR四国の幹部は、「自治体とはどこかで互いに手を握れるところはあると思う」と今後の論議に期待をにじませていて、両者の間でどのような議論が進められるかが注目されます

    専門家「議論はまちづくりの観点で」

     

    交通政策に詳しい呉工業高等専門学校 神田佑亮教授

    交通政策の専門家である神田佑亮教授は、自治体側の「とにかく鉄道を残してほしい」という守りの姿勢だけでは、課題を克服できないとした上で、今後のあり方をめぐる議論にあたっては鉄道だけに焦点を当てるのではなく、中長期的なまちづくりの観点を踏まえた議論が大切だと指摘します。

    専門家 神田教授の話
    「自分たちの住む地域そのものが持っている可能性をもう一回点検をしていき、鉄道あるいは他の交通を生かして、どのように「強い町」「誇れる町」「投資が得られる町」を作っていくのか、ぜひともやっていただきたい。四国が成功すると、おそらく全国の地域が成功すると思う。議論するに当たっては、鉄道だけを中心とした議論はするべきではない。バスとタクシーを含めた交通でも考えるべきですし、もっと言うと交通だけではなくまちづくり全体で考えていかなければいけない問題だ」

    竹内記者

    人口減少や高齢化が進んで、社会全体の縮小が予想される中、地域の足がどうあるべきかは切っても切れない問題です。「鉄道は残すべき」と地元が求めるならば、地元に鉄道が不可欠だという理由も含めて、議論を深めていくことが今後、求められると思います

    (内容は放送時のものです)

      • 竹内一帆

        高松放送局記者

        竹内一帆

        2015年入局 経済・交通など幅広く担当し、取材の合間のうどん店めぐりが趣味。

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