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高松市中心部の防災 “わずかな高低差”が被害の差につながる!

  • 2023年09月14日
四国の経済などの中心地として栄えてきた高松市

四国の経済などの中心地として栄えてきた高松市。過去には台風による高潮や浸水の被害が生じています。防災のポイントは土地のわずかな高低差です。

高松市の高低差は洪水でできた?!

平成16年台風16号の高潮で浸水した商店街

平成16年(2004年)高松市を大きな災害が襲いました。8月の台風16号では高潮によって浸水が発生し、海沿いだけでなく商店街も水につかりました。また、10月には台風23号で河川の氾濫などによる浸水が発生。降った雨が排水しきれなくなってあふれる内水氾濫も起きて、広い範囲で被害が出ました。

平成16年台風16号と23号での浸水範囲

こちらは、それぞれの浸水範囲を表したエリアを重ねた図です。被害が起きている場所に共通点があることが分かります。中央通りや黄色で表したアーケードの周辺では、浸水被害が起きているのは沿岸付近に限られている一方、その両脇のエリアでは、より内陸まで浸水の範囲が広がっています。

この理由こそが、土地のわずかな高低差です。今度は同じエリアを、標高を色であらわした地図で見てみます。色が青くなるほど標高が低いことを示しています。注目するのは、県庁や中央通り周辺の黄色やオレンジ色になっているところです。

五味

中央通り沿いは比較的高い土地が広がっていますね。

長谷川さん

高い土地が海に張り出していて、その先端に高松城を造っているわけです。

周りと比べて標高が高い土地が南から北に延び、その上に中央通りやアーケードの商店街が作られています。この土地がどうしてできたのかを聞くと、長谷川さんから驚きのことばが。

長谷川さん

ここには昔、川がありました。その川が大洪水を起こして扇状地という高まりを作ったんです。つまり中心地は大洪水の跡といえます。

かつての川の痕跡が今も残っているといいます。ことでん瓦町駅の近くで探してみると・・・。

江戸時代に作られた大きな井戸にたどり着きました。長谷川さんによると、かつて川が流れていた場所では地下に水が流れていて、その水が湧きだしているのだということです。井戸のそばで見つけた石は、角が取れて丸くなっていました。

五味

これは河原の石ですね。

長谷川さん

これは砂岩という砂が固まった石で、讃岐山脈から来ているんです。これを持ってきたのは大きな川なんです。

かつて大洪水を起こし大量の土砂を運んで来たのは、香東川だったと長谷川さんは考えています。香東川は現在は山を隔てて西側を流れていますが、高松市中心部にも流れていたと考えられるといいます。
多くの人が集まる高松市の中心部が大洪水の跡地に作られていたとは、驚きです。

平成16年に高潮や浸水の被害を受けたのは、洪水で作られたという小高い土地の周辺に広がる標高の低いエリアです。県や市では浸水対策を重ねてきました。高潮対策としては護岸などをかさ上げしたほか、降った雨を流すための排水管やポンプも整備するなどしました。

ただ、長谷川さんは引き続き注意が必要だとしています。

長谷川さん

行政は雨量などについて想定をしてそれに対応できるように対策をしていますが、雨や潮位が想定を超えることもあり得ます。リスクがゼロになったわけではないということを知っておいてほしいと思います。

市中心部での津波避難は“南へ!”

台風や大雨とともに考えておかなくてはいけないのが地震や津波への備えです。最大クラスの南海トラフ地震の津波シミュレーションを見ると、高松市にも津波は何度も繰り返し押し寄せ、5時間ほどたった後に最大の波が襲います。

この津波からの避難でも高低差がポイントになります。津波の浸水想定を見ると、小高くなっている中心部のあたりでは、浸水を想定する色は塗られていません。

長谷川さん

標高が高い中心市街地では、すぐ安全な所に避難できます。

高松市は商店街のなかにも津波避難ビルを指定し、街なかにいる人たちが避難できるようにしています。

一方、高潮や内水氾濫の被害を受けた周辺の地域では、内陸まで津波が襲ってくるという想定になっていて、浸水想定図でピンク色で表示された場所では2メートルを超える浸水が想定されています。

高松市の中心部には仕事や買い物で多くの人が集まります。長谷川さんは、自分がどこから訪れているのかによって、逃げ方が変わるといいます。

長谷川さん

津波から逃げるとき、中心市街地から南に移動することはできますが、土地の低い東の屋島方面や西の香西方面から来ている人は、家に帰ろうとは思わないでください。

東西方面は中心部から逃げる場合、橋を渡らなければいけませんが、地震の揺れで発生した液状化によって橋の構造物と地面の間で段差ができることも想定されます。車が通れずに渋滞が起き、動けなくなったところに津波が襲ってくる危険性についても考えておく必要があると指摘します。

最後に長谷川特任教授に今回のポイントをまとめてもらいました。

長谷川さん

わずかな土地の高低差が高潮や浸水、津波の被害の差につながっています。ふだん暮らしているとなかなか気づかないかもしれませんが、自転車に乗って走ると高低差がわかりやすいと思うので、意識して暮らしてもらえたらと思います。

五味アナウンサーのひとこと 
中央通りや商店街など、いつも歩いている高松市中心部にこんな高低差があるとは、全然意識していませんでした。よく見れば、過去の被害の様子や津波の浸水想定にも、その高低差がはっきりとあらわれています。身近な土地にも、やっぱり意外と知らないことがたくさんありますね。ちょっとした気づきが、いざというときの行動を変えるかもしれません。

  • 五味哲太

    高松放送局アナウンサー

    五味哲太

    2020年から「ゆう6かがわ」のキャスターを担当

  • 内野匡

    高松放送局記者

    内野匡

    平成31年入局。香川県政などを取材。

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