香川県内で地震・津波にどう備える?専門家に聞いてみました
- 2023年01月17日
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、香川県内でも高松市や坂出市、多度津町で震度4の揺れを観測し、7人がけがをしました。
そして、今後発生すると想定されているのが南海トラフ巨大地震による被害です。最大クラスの地震では、県内の広い範囲で震度6弱以上の激しい揺れを想定。沿岸部では3メートルから4メートルの津波が襲うとされます。南海トラフ地震に備えるために気を付けなくてはならないポイントは何か、専門家に聞きました。
訪ねたのは、地震や津波と防災・減災の研究が専門の香川大学・金田義行特任教授・地域強靭化研究センター長です。
金田 特任教授
人の命を奪うような津波と、家がダメージを受けるような強い揺れが来るということを前提として備えをするということが大事だと思います。
最大クラスの津波の動きをシミュレーションした動画を見ると、はじめ太平洋沿岸を襲った津波は、1時間ほどで香川県東部に到達。津波は複雑な地形の瀬戸内海に西からも流れ込み、高くなったり低くなったりを繰り返しながら、何度も沿岸部を襲います。
金田特任教授によると、シミュレーションでは津波が12時間くらい瀬戸内海を行ったり来たりするということで、避難も長時間にわたると考えられます。
高松市では、繰り返し押し寄せる津波のうち、4波めや5波めの方が大きくなるという結果に。5時間ほどたってから最大の津波が押し寄せることになります。
金田特任教授は、津波が来るまでの時間的な猶予はある一方で、避難の際に気を付けなくてはならない別の注意点があるといいます。
液状化と地盤沈下が避難を難しく
その1つが、阪神・淡路大震災や東日本大震災でも発生した液状化です。水を含んだ砂地盤が地震の揺れで液状になり、地面から水が噴き出すなどする現象で、建物が傾くこともあります。
道路がゆがんだりマンホールが飛び出たりするようなこともありますし、水が出たり砂が出たりすることで、非常に避難しづらいということがあります。液状化そのもので亡くなる人はないとは思うんですが、結果として逃げ遅れるなどで大きなダメージがあるということになります。
こちらは、最大規模の南海トラフ地震が起きた際の液状化の危険度を示した地図です。埋め立て地や塩田のあとがある沿岸部だけでなく、内陸部にもオレンジ色や黄色のリスクが高いエリアが広がっていることがわかります。
さらに、地震の発生に伴って地盤が沈下することにも注意する必要があります。
地盤が下がると堤防や港の岸壁も一緒に下がってしまい、相対的により大きな津波になるというリスクがあります。
岸壁や堤防が下がることで、港が使えなくなったり大潮や高潮の際に浸水しやすくなったりすることも考えられます。
大量のがれき 離島への航路に影響も
紀伊水道と豊後水道をそれぞれ北上して襲ってくる津波は、大量のがれきも運んできます。
金田特任教授は、瀬戸内海にたまったがれきが火災を起こしたり、船の通行を妨げたりする可能性を指摘します。
救助というのがまず1つあり、その後にいろんな物資を運ぶことがありますよね。船が通れなくなったときにどういうふうに緊急搬送するかということも含めて考えておく必要があると思います。
見慣れた風景はどう変わる? 想像してみよう
わたしたちひとりひとりに必要なのは、まずは自分の命を守ることです。地震が起きた直後だと想定して、香川大学の外に出てきました。
大通りに比べるとすこし道幅の狭いところで避難するリスクにどんなものがあるかというと、例えば電信柱が大丈夫なのか、あるいは電線が垂れ下がらないのか、ブロック塀が倒れないのか。いろんなリスクが出てくるわけです。
さらに液状化が起こると、道路自体がかなりたわんでしまうので歩きづらい、避難しにくいということがあります。なおかつずっといろんな余震で揺れています。ですから揺れながらどうするかということを考えなくてはいけないんですね。
揺れが続くなかでどういう行動をとるのかを考える。ちょっと想像してみただけでもパニックになってしまいそうです。さらに、津波からの避難も考えてみます。
すこし時間のゆとりがあるので決して焦らないということが1つあります。まず海側から津波が来るとして、建物などでさえぎられて見えないですよね。見えないけれど、来てから逃げたのでは遅いので、津波が来るという意識を持っていないとだめですよね。ですから日頃からイメージしておくということが大事です。
さらに、メインストリートとか河川は津波にとっては高速道路で、非常に速く遡上、浸水するんですね。河川とか大きな道のそばは早く津波が来るというのを頭の中に入れておくことが大事だと思います。
さえぎるものが少ない大通りでは、津波のスピードが上がります。海とは違う方向から、あるいは建物の陰から、急に津波が襲ってくるという可能性も考えなくてはならないといいます。
金田 特任教授
必ず来る南海トラフの巨大地震なので、もし来たなら自分たちの周りでどんなことが起こるかというのを想像していただく。昼間なのか夜なのかでできることが全然違ってきますので、みんなで議論することが大事だと思います。 全く考えたことがないことについて、すぐその場で答えを求められてもできないけれど、一度考えたことであればできる。それが大事な点だと思います。
五味アナウンサーのひとこと
これまで様々な防災の取材をしてきたつもりでしたが、液状化や地盤沈下、航路をふさぐがれきの問題など、具体的には想像できていなかったポイントがたくさんありました。大きく揺れて気持ちも動揺しているなかでも最善の行動をとれるように、どんなことが起こりえるのかを知って、イメージしておくことが本当に大事だと感じました。
※なお掲載している情報は放送当時のものです。