子どもが成長してくると、今までできなかったことができるようになったり、思いもよらない行動をしたり、親はヒヤリとすることがありますよね。子どもの事故の多くは、家の中で起きているといいます。危険から子どもを守るためにどんな対策が必要なのか、専門家に教えてもらいます。

子どもを守る① 家の中の安全対策※すくすく子育て「子どもを守る① 家の中の安全対策」より

専門家:
所真里子(NPO法人保育の安全研究・教育センター 理事)
加部一彦(埼玉医科大学総合医療センター 新生児部門/小児科医)

家の中の子どもの安全対策は、何から始めればいい?

最近、息子がずりばいをするようになりました。行動範囲が広がり、いろいろなものに興味を持ちはじめて、目が離せなくなっています。テレビ台の中にパパのゲーム機を隠しておいても引っ張り出したり、低いテーブルに頭をぶつけたりしたので、慌ててベビーサークルを購入しました。でも、つかまり立ちをするようになり、もっと行動範囲が広がったら、どんな対策をすればよいのか悩みます。家の中の子どもの安全対策は、何から始めればいいのでしょうか?
(9か月の男の子をもつママより)

どのような事故がおきているのか把握する

回答:所真里子さん

子どもの事故は、おおよそパターンが決まっています。救急搬送された0~5歳までの乳幼児が、どのような事故だったのかをまとめたグラフがあるので見てみましょう。

※東京消防庁「救急搬送データからみる日常生活事故の実態」平成27年

棒グラフが「搬送された人数」、黄色い点が「子どもが重症だった割合」を示しています。人数を見ると、ころぶ、落ちる、喉にものを詰まらせるといった事故が多いことがわかります。一方で、おぼれる事故の場合、人数は少ないものの6割以上が重症だったことがわかります。
家の中では、お風呂場でのおぼれ・転倒、ベランダや窓からの転落、ボタン電池や磁石などを口に入れてしまう誤飲といった事故に注意が必要です。また、電気ポットなどによるやけども起きやすいので注意しておきましょう。

子どもの特性に応じて事故が起きる

回答:加部一彦さん

「おぼれる・やけど・落ちる」といった事故が起きるのは、子どもの体の特徴と関係しています。
まず「おぼれる」事故です。大人は危険だと感じない低い水位でも、子どもが顔をつけて水を吸い込んでしまうと、窒息してしまいます。次に「やけど」です。子どもの皮膚は大人に比べて薄いため、大人であれば皮膚表面でとどまるようなやけども、子どもの場合は深いところまで影響することがあります。そして「落ちる」事故は、そもそも子どもは頭部が大きく、頭から落ちやすく危険です。子どもの特性に応じて事故が起きていることがよくわかります。

子どもが過ごす部屋から安全対策を

回答:所真里子さん

子どもの事故は、目の前でも、一瞬の内に起きてしまいます。ですので、子どもを見守ることだけでなく、家の中を安全な環境にする対策を始めましょう。家全体を安全にすることは非常に難しいので、主にお子さんが過ごす場所・部屋を中心に安全対策を進めてはいかがでしょうか。

家のリビングの写真です。気をつけたほうがよいところはありますか?

テレビやテレビ台の安全対策を

回答:所真里子さん

子どもがテレビ台の角に頭をぶつけたり、テレビ台の引き戸で指を挟んだりすることもあります。また、テレビが固定されていないと、よりかかったときに、落ちてしまうことがあり危険です。固定するようにしましょう。

敷物による段差に注意する

回答:加部一彦さん

テーブルの下の敷物は段差にもなります。段差で子どもがひっかかったり、すべったりして危険です。段差を作らないように注意しましょう。


成長にともない増える危険。どう安全対策すればいい?

1歳3か月になる娘は、動きがどんどん活発になり、勝手に扉を開け閉めしたりします。目を離すとすぐにどこかへ行ってしまって、ヒヤッとすることも増えてきました。歩きだした1歳のころは、テレビ台の角におでこをぶつけて、血が止まらず救急で病院に駆け込んだこともあります。最近は、ガスコンロに手が届くようになりとても心配です。前面が開くタイプの洗濯機(ドラム式)も、子どもが自分で開けられるようになると怖いなと感じます。
子どもの成長にともなって、危険なことはどう変わっていくのでしょうか。また、安全対策はどうすればいいのでしょうか?
(1歳3か月の女の子をもつママより)

子どもに起こりやすい事故は月齢で変わる

回答:加部一彦さん

子どもは、成長にともない動きが出てきて、行動範囲も興味関心も広がります。そのため、事故が起きる危険も月齢によって変わってきます。

【0か月から3~4か月】の頃は、まだ自分で動けません。そのため、なんらかのはずみで顔に布がかかっても自分で取り払えず、窒息する危険があります。
【4か月から7か月】の頃は、少し動きが出てきます。寝かせていたソファから落ちる、いつの間にか電源コードやひもに絡まって窒息するという事故が起きています。
【7~8か月から1歳】の頃は、ハイハイをするようになり、思わぬ場所に登ることも。お風呂のふちから落ちて溺れる、階段から転落するような危険があります。
【1歳~2歳】になると、歩きだし、高い場所にも目が届くようになります。やけどや誤飲といった事故が増えてきます。子どもは、子どもの視線で興味関心を持つので、大人の思いもよらないところで事故が起きることを知っておきましょう。

製品の取扱説明書を読んで、正しく使う

回答:所真里子さん

ドラム式洗濯機のような、新しく便利な製品が使われるようになると、残念ながら、新しい事故が何件も起きる傾向があります。例えば、電気ケトルやウォーターサーバーでの事故も増えています。その他、固形ジェル型の洗剤を誤飲するような事故もあります。きれいな色に興味を持って口に入れてしまうわけです。
まずは、製品の取扱説明書をしっかり読んで正しく使うことが大切です。ドラム式洗濯機であれば、チャイルドロックのような安全機能がついているか説明書で確認してください。

大人全員が危険を共通認識に

回答:加部一彦さん

ママだけで安全対策するのではなく、子どもの危険や安全への認識を、家の中にいる大人全員、子どもと一緒に過ごす大人全員が同じように持たなければなりません。パパや祖父母も共通認識を持つようにしてください。


お風呂での事故。どう防げばいい?

息子が1歳3か月のころ、ママと2人でお風呂に入っているとき、子どもが溺れてしまう事故がありました。ママが洗髪をしている間、立つのも上手になったので子どもを浴槽で、ひとりで遊ばせていました。すると、洗髪で目を離していた時に、子どもが滑って溺れてしまったのです。気づいてすぐに引き上げましたが、それからは、洗髪の間は浴槽の外で遊ばせるようにしています。このようなお風呂での事故は、どう防げばいいのでしょうか?
(1歳6か月の男の子をもつママ・パパより)

子どもは静かに溺水する

回答:加部一彦さん

子どもには水が危ないという意識がありません。そして、子どもが溺れるときは、静かに溺水することを知っておきましょう。お風呂に沈んでも、すぐに大暴れするわけではないのです。沈んで息を吸ってしまうと窒息する可能性があり、非常に危険です。
また、子どもを浴槽の外で遊ばせていても、おもちゃを浴槽に落として、それを取ろうとして頭から浴槽に転落してしまうこともよく起こります。子どもは頭が大きいので頭から転落しやすいのです。

目が離れるときは声かけやバスチェアなどの対策を

回答:所真里子さん

子どもがひとりで浴槽に入っている状態は危ないので避けてください。洗髪のとき、どうしても目が離れるときは、子どもに話しかけたり、しりとりをするなどして、親に注意が向くように、工夫してみましょう。バスチェアを用意して座らせて動かないようにするという方法もあります。

防災対策で浴槽に水をはっているような場合、目を離したときに子どもが転落してしまう危険があると思います。

ダブルで安全対策をする

回答:所真里子さん

まずは、お風呂場に鍵をつける、入り口にガードを設置するなど、物理的に子どもが入れないような工夫ができないか考えてみてください。水をはっていたとしても、子どもが入らなければ危険はありません。ですが、うっかり鍵をかけ忘れることもあります。ですので、鍵の確認と合わせて、お風呂の水を抜いて浴槽にフタをすることを習慣づけ、ダブルで確認するようにしていけば、一方を忘れてもなんとか安全な環境を保つことができるのではないかと思います。

お風呂以外で、水の危険に気をつける場所はありますか?

口と鼻を覆う水量があれば危険

回答:所真里子さん

お風呂のようにたくさんの水がなくても危険はあります。水位が数cmしかない少ない水量でも、子どもの口と鼻が覆われると息ができなくなってしまいます。例えば、家庭用のプール、水の入ったバケツ、排水溝のようなものにも注意が必要です。トイレの水も、便器に頭から落ちて危険な場合があります。


きょうだいがいるとき、安全対策はどうすればいい?

2歳7か月と2か月、2人のきょうだいを育てていますが、歳の差があるためどう安全対策すればよいか悩んでいます。上の子は家庭用のジャングルジムで遊ぶのが大好きで、電池の入ったおもちゃでも遊びます。でも、それらは下の子にとっては危ないとも思います。ジャングルジムやおもちゃを片付けてしまえばよいのかもしれませんが、あまり上の子を制限するようなことはしたくないと思っています。でも、今後下の子が動き出したとき、このままでは危ないのではないかと心配です。
遊ぶおもちゃも興味も違うきょうだいがいるとき、安全対策はどうすればいいのでしょうか?
(2歳7か月と2か月の男の子をもつママより)

上の子のための場所をつくる

回答:所真里子さん

上の子のおもちゃを下の子が口に入れて事故になることは、実際にとても多く起きています。このような危険がある時期は、長い目でみれば短い間ですので、安全対策をしたほうがよいでしょう。例えば、お部屋の一角に下の子が入れないような場所を作って上の子を遊ばせるのもひとつの方法です。上の子に「お兄ちゃんだけの場所を作ろうね」と声をかけて、一緒に“お兄ちゃんの場所”を作るのもよいでしょう。自分だけの場所ができて、お片付けなどをするうちに、自分のものという意識が強まると思います。親にとっても、上の子のものがどこにあるのか一目でわかり、管理しやすくなると思います。

小さい子が飲み込んでしまって危険なサイズはどれぐらいでしょうか?

喉を塞ぐものは危険。小さくても水分で膨らむものは注意

回答:加部一彦さん

子どもが飲み込んだときに、空気の通り道である喉を塞いでしまうものは危険です。例えば、ペットボトルのキャップや、500円玉くらいの大きさだと、完全に喉にフタをしてしまいます。それより小さなものでも、よだれなどの水分を含んで膨らむものは要注意です。小さいから安心というわけではありません。

食べ物にも注意

回答:所真里子さん

食べ物にも注意が必要です。ミニトマトやブドウのように、ツルっと口の中に入ってしまうものは危険です。赤ちゃん用のおせんべいも、口の中で水分をたくさん含んでしまうと、喉に詰まらせることがあります。食べるときは、細かくしてあげる、一緒に水分をとる、食べているところを見守ることが大切です。また、慌てて一気に食べると喉に詰まりやすいので、注意しておきましょう。

ペットボトルのキャップなどを口に入れてしまったときは、どうしたらよいでしょう?

慌てず、落ち着いて対応する

回答:所真里子さん

子どもが何かを口に入れていることに気づいたら、びっくりして大きな声を出してしまうかもしれません。ですが、大きな声に驚いた子どもが息を吸ってしまい、口に含んでいたものを吸い込んでしまうと、喉に詰まることがあるので危険です。ですので、慌てないように、「口の中のものを見せてね」と声をかけるなど、落ち着いて対応することが大切です。間違っても、大きい声で「何してるの!」と言わないように注意してください。


すくすくポイント
家の中の安全対策のアイデア

家の中での子どもの安全対策をするとき、テーブルの角やコンセントをガードする市販のグッズが便利ですよね。でも、身の回りのもので安全対策をすることもできるんです。番組「すくすく子育て」に寄せられた、そんな安全対策アイデアを3つ紹介します。

ごっつんガード

まずは、テーブルの角をガードするアイデア「ごっつんガード」です。
ペットボトルを使って、簡単に作ることができます。


ペットボトルの飲み口側と底側を切り取り、写真のように開くように中央を切ります。

切り口をマスキングテープでガードすれば完成です。

使うときは、テーブルの角にタオルをかぶせ、その上から「ごっつんガード」を取り付けます。
外出先でも使えて便利ですよ。

ミラーでストップ

続いては、赤ちゃんを危険な場所に行かせないようにするアイデア「ミラーでストップ」です。

方法は鏡を置くだけ。例えばテレビ台の前に置けば、赤ちゃんは鏡に映った自分の姿に興味を持って、その奥にあるコンセントなどの危険な場所に手を伸ばさなくなりますよ。

吸盤フックでロック

最後は、引き戸を開けられないようにするアイデア「吸盤フックでロック」です。


やり方は簡単です。引き戸の扉が重なっている部分に吸盤フックを付けるだけです。
引き戸を開けようとしても、吸盤フックに引っ掛かり開けられなくなります。

子どもを危険から守るためのアイデア。みなさんも参考にしてみてください。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです