NHKスペシャル

宇宙の渚 第1集 謎の閃光(せんこう) スプライト

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昨年9月、世界で初めて、宇宙からオーロラ、夜景などを生中継して好評をいただいた「宇宙の渚」。その後に撮影された数々の絶景映像を堪能しながら、地球について、私達自身について見つめなおすドキュメンタリーシリーズを、4~6月に3本シリーズで放送する。
高度十数キロメートル~数百キロメートル。地球と宇宙がせめぎ合う境界領域を、私たちは「宇宙の渚」と名付けた。国際宇宙ステーションから古川聡宇宙飛行士は、NHKが開発した宇宙用超高感度カメラを使って「宇宙の渚」で展開するスペクタクルの撮影に挑戦した。オーロラ、流星、雷、スプライト(宇宙に放たれる閃光)、夜景など、ほとんどが世界初という映像80時間分の撮影に成功した。
3本シリーズの第1集、主役は「スプライト」、雷雲から宇宙に放たれる閃光だ。航空機のパイロットの間で目撃談が密かに語られていたものの、存在すらはっきりしない謎の光だった。
いったい何者なのか?番組では、国際宇宙ステーションと航空機から、スプライトの世界初の鮮明撮影に成功、ついにその正体を解明した。その結果、地球と宇宙の間に濃密なやり取りがあり、さらには地球の天気が宇宙の影響を受けていることも見えて来た。
番組プレゼンター:JAXA古川聡宇宙飛行士

放送を終えて

「ずっと鳥肌立ちっぱなし」「人生観変わりそう」放送直後、ツイッターに書き込まれた視聴者の声の一例です。ディレクター歴15年、これほど熱い反応をいただけた番組は初めてです。今回の番組は、宇宙用超高感度カメラを筆頭とする最新の撮影技術と、未知なるものに挑む人々の夢と情熱が結び合い、「見たことのない世界を映し出す」というテレビの可能性に挑むものでした。
「地球と宇宙の間に、まだ人類が知らない世界がある」。実は学生時代に地球科学を専攻していた私自身、その事実は新鮮な驚きでした。しかも「スプライト」という巨大閃光(せんこう)は、科学者ですらまだ実態をつかみ切れていない謎の現象です。研究者やJAXAのみなさんと観測計画を練り上げるところから始まりましたが、いつどこに現れるとも知れない閃光をどうすれば捉えられるかなんて、まるで手探り。スタッフも研究者も真剣勝負の連続でした。国際宇宙ステーションから撮影に挑んだ古川聡宇宙飛行士も、同じ思いだったと言います。それだけに、撮れた瞬間の喜びと興奮は大変なもので、いい大人が思わず「スプライト!」と絶叫していました。それはまさに人類が新たな世界に遭遇した瞬間だったと思います。現に、研究者たちが今回の映像から得られた新発見を次々と学会や論文で発表し始めています。地球と宇宙の結びつきについて、私たちの理解が大きく進むに違いありません。
「宇宙の渚」の壮大な旅はまだまだ続きます。渚一面を彩る驚異のオーロラ、地球へ突き刺さるあまたの流星・・・宇宙飛行士にしか見られなかった絶景がめじろ押しです!ぜひ皆さんと、新たな世界への扉を開ける興奮と感動を分かち合いたいと思います。

ディレクター 井上智広