NHKスペシャル

宇宙の渚 第3集
46億年の旅人 流星

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古川聡宇宙飛行士が国際宇宙ステーションから撮影した貴重な映像を見ながら、地球と宇宙の境目「宇宙の渚」の神秘を追うシリーズの最終回。テーマは「流れ星」。
国際宇宙ステーションから、流星は、地球に向かって突き刺さって行くように見える。古川宇宙飛行士は、世界で初めて、宇宙から流星を鮮明に撮影することに成功した。しかも、その数は300個にも及ぶ。
地球に降り注ぐ流星は、暗いものまで含めると、1日に2兆個にもなり、流星とともにたくさんの物質を地表まで届けていることが分かってきた。そのなかには、遠い宇宙で作られた有機物も含まれ、そこから私たちの遠い祖先、地球最初の生命が誕生したと考えられるようになっている。流星は、生命の源を乗せて、何十億年もの間、はるか宇宙を旅する箱舟なのだ。
流れ星に願いをかけるのは万国共通。人の思いもさまざまだ。宇宙から流れ星を見ると、地上で見るのとは全く違う願いをかけたくなる、と宇宙飛行士たちは言う。古川宇宙飛行士が宇宙の渚から撮影した流れ星を見て、皆さんはどんな願いをかけたくなるだろうか?

放送を終えて

宇宙から流星を果たして撮影できるのか。不安の中、古川聡宇宙飛行士が撮影した映像を初めて見たのは、昨年8月下旬、筑波のJAXAコントロールセンターでした。1か月後に迫った生中継特番のために、撮影映像の一部が衛星回線を通じて国際宇宙ステーションから伝送される中、かすかに光る流星の映像も含まれていました。
「何とか映っていた」とスタッフともども安堵(あんど)すると同時に、見逃しかねないその一瞬のはかない光との格闘が始まりました。あの光は私たちにとってどんな意味があるのか?宇宙から撮影された流星の映像を何度も見るうちに、その思いが私の中で次第に強くなっていきました。科学的に考えたら、流星の光に意味はなく、単なる物理現象です。しかし、古来より人類はなぜか流星にロマンを感じ、願いをかけ続けてきました。また取材させていただいた古川宇宙飛行士やカルバートソン宇宙飛行士、NASAや国立天文台の研究者の方々も小さい頃、流星を見たことで、宇宙への憧れを抱いてきたとおっしゃっておりました。そして震災直後、別の番組の取材を被災地で続ける中で伺った話も強く印象に残りました。3月11日の夜、星空が皮肉なほど美しく、流星がたくさん見えたという話です。暗闇の中、被災者の方があの夜、星空をどんな思いで見つめ、そこに現れる流星にどんな願いをかけたのか、そんなことを想像したりもしました。
人々の心に必ず強い印象を残す光。あの光にどんなメッセージが込められているのか、私としてはどうしてもそこに意味を探したいと思って取材を続けてきました。

“我々はどこから来て、どこに向かおうとしているのか”という我々人類の永遠のテーマ。そのヒントが、宇宙から撮影された流星の姿にあるのではないかと今、おぼろげながら思っています。

ディレクター 旗手啓介