NHKスペシャル

新シルクロード 激動の大地をゆく
第5集 望郷の鉄路

アジア、アフリカ、ヨーロッパを結ぶ交通の要衝、中東。この地のシルクロードに沿って、20世紀初頭、南北に貫く一本の鉄道が作られた。オスマン帝国が建設したヒジャーズ鉄道。オスマン帝国と英仏がアラブをまじえて戦った第一次世界大戦中、「アラビアのロレンス」によって爆破されたこの鉄道は、現在に続く中東の動乱の原点を物語る。第5集では、ヒジャーズ鉄道跡をたどってシリア、ヨルダンを訪ね、激動する中東の今を旅する。
ヒジャーズ鉄道の始発駅、シリアのダマスカス。シルクロード有数の古都として栄えたこの街は、古来、周辺諸国で戦乱が起きるたび、故郷を失った人々が集まる避難民の街でもあった。ユダヤ人、パレスチナ人、そして、現在、混迷するイラクから大勢のイラク人避難民が押し寄せている。
線路跡をたどると、イスラエルに占領されたゴラン高原が姿を現す。ここには占領地とシリア側で家族が引き裂かれ、停戦ラインをはさんで叫びあう「叫びの谷」がある。
ヨルダンに入ると、この国を支えるリン鉱石を運ぶため修復された列車が走る。この列車の運転手もまたパレスチナ難民である。
ヒジャーズ鉄道跡には、戦乱で故郷を失った人々の過去と現在が交錯している。