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中高一貫校に入学 すぐに塾でモヤモヤ ~中高一貫生“専門塾”とは?

中学受験のリアル(4)
  • 2023年12月7日

「授業で遅れをとらないために塾へ通っています。出費が想定以上で家計にかなり痛手です」

都内の私立中高一貫校に娘が通う母親が番組に投稿を寄せてくれました。
わたし自身、中高一貫校に入学後も塾に通うというイメージがわかず、取材を進めると“入学後のリアル”が見えてきました。

中学受験で皆さんが抱えている悩みやご意見、体験談などをもとに取材を進めています。投稿はこちらまでお寄せください。

(首都圏局/記者 桑原阿希)

中高一貫校に合格後も塾へ 予想外の展開に

「モヤモヤしてます」

番組に投稿してくれた40代の母親は、今の心境をこう表現してくれました。

私立中高一貫校に娘が通う母親
「塾代が月に6万円ぐらいかかっているので、年間で72万円ほどに上ります。学校の授業料が60万円ほど。それを超えてしまっていることにちょっとがく然としています」

私立の中高一貫校に通わせていますが、思わぬ出費があったことを打ち明けてくれました。
小学3年生のころから中学受験塾に通い、第1志望校に合格した娘。学校生活も楽しいということで、ほっとしたのもつかの間、授業のスピードについていくのが難しくなり、夏前には成績にかげりが見え始めたといいます。

「学校の生活面では娘にすごくあっていて楽しそうにしているんですが、勉強が大変です。 英語や数学がついていけなくなると補習に呼ばれることもあります。小学校のときはよくできていたのに、『あれ、どうしちゃったのかな』と思いました」

説明会では“学校の勉強だけで十分力は付く”って…

2年生となったことしから、塾には週4日通っています。
入学前に学校側から聞いた説明が、頭をよぎるといいます。

「入学前の受験者の保護者向けの説明会で先生が話していたのは『うちの学校は塾に通っている子はほとんどいません。学校の勉強だけで十分力は付きます』ということで、それを信じていたんです。実際は全然違って、みんな塾に通って勉強について行っているんだなというのがわかりました」

母親が娘に聞いてみたところ、塾に通っているクラスメートは8割ほどだといいます。

“学校で完結してほしいけど…しかたないかな”

本人の成績は改善していて、学校生活も恵まれているようだ、という母親。
この現状、どんな心境なんでしょう?と投げかけると冒頭のように「モヤモヤですね」と答えてくれました。

「こんなに早くまた塾に通うとは思っていませんでした。本当は学校で完結してほしいです。ただ、勉強以外の面ではすごく恵まれた学校生活を送っているので、しかたないかなと思っています」

“中高一貫校生向けの塾”って? 注目集める理由は

今回、初めて聞いた中高一貫校生向けのいわば「補習塾」。
全国の学習塾で作る団体に尋ねてみたところ、こうした中高一貫校生専門の塾は、数はまだ少ないものの、需要の高まりは見られるといいます。

今回取材したのは、首都圏や近畿で開校を続けているこちらの塾、中高一貫校に進学した生徒を専門にサポートする塾です。

塾のポスターや紹介冊子には「中だるみ中高一貫校生の成績を跳ね上げる」
こんなうたい文句も。

特徴は、定期テストの点数アップに絞った個別指導です。
学校で使っている問題集を使い、学校ごとの進み具合やテストの出題傾向まで把握し、きめ細かな指導を心がけているといいます。
塾に通う生徒に話を聞くと手応えを感じているようでした。

中学2年から
通う
高校3年生

家で勉強ができず、中高一貫校生専門の塾があるのを母から聞いて入塾しました。いまは大学の第1志望の合格に向けて頑張っています。

ことしから
通う
中学3年生

中学受験が終わって気が抜けて勉強習慣が無くなってしまいました。数学は伸び始めていて、英語もそこまで良くなかったのが伸び始めています。

この塾で代表を務める遠藤尚範さんです。10年ほど前に立ち上げ、ことしも首都圏や近畿で新規教室を開校。現在30校を展開しています。気になることを尋ねてみました。

Q.なぜ、中高一貫校生の「専門塾」を立ち上げたのですか?

「せっかく中高一貫校に入ったのであれば、子どもに高いレベルの教育内容を吸収し、十分“使い倒してほしい”と保護者は願うと思います。ただ、先取りでどんどん授業が進む学校もありますし、使っている問題集も難しいです。
中高一貫校に通う生徒は、能力があるのに少し成績が落ちただけで“できない”と感じてしまう子が多いように感じます。それぞれの中高一貫校に通う生徒にあわせた指導を行う必要があるのではないかと思ったのがきっかけです」

こちらは、この塾に通う生徒の保護者のうち、およそ200人を対象に塾を探すきっかけを尋ねたアンケート結果です。定期テストの結果や勉強の進め方に悩む様子がみてとれます。

塾を探すきっかけはなんですか?※1人2つまで
(1)定期テストの結果が悪かった  30.6%
(2)勉強時間や勉強のやり方に不安を感じた 30.1%
(3)家庭での勉強のサポートに限界を感じた 16.4%
(4)宿題や提出物のサポートをしてほしかった 8.6%
(5)通知表の評定が悪かった 7.4%
(6)友人から話を聞いた 2.0%
(7)英検対策がしたかった 1.2% 

中高一貫校生の専門塾代表 遠藤尚範さん
「アンケートで特徴的なのは『勉強時間や勉強のやり方に不安を感じた』『家庭での勉強のサポートに限界を感じた』がそれなりに多いことだと思います。勉強に対して熱心な家庭だからこそ危機感を感じ、問い合わせがあります。中学受験の時と同じように保護者が伴走者として面倒を見きれなくなってきたり、子どもも思春期でコミュニケーションの取り方が変わってきたりするので、私たちにサポートを頼もうというニーズがあります」

Q.率直に、中高一貫校に入ったのに塾は必要なのでしょうか?

中高一貫校生の専門塾代表 遠藤尚範さん
「究極、塾なんかないほうが良いのは間違いないですが、『家でやらなくてはいけないよ』『やだなあ…』となるくらいだったら、いったん別の場所で気分を変えるくらいの気持ちで利用してほしいです。
点数や数字はわかりやすいので、しっかり結果を出すことが子どもも自己肯定感を取り戻すことにもつながります。もともとできる子たちなので、自信をしっかりつけてあげることを民間教育としてフォローしていきたいと考えています」

取材後記

中学受験塾が終わったら、今度は学校の授業についていくための塾が始まる。
率直に大変そうだ、と感じつつ、塾のサポートのおかげで勉強への自信を取り戻す子どもたちがいることもよくわかりました。

取材した遠藤さんが話していたことで印象に残ったのは、これまでは高校生になってから大学受験を意識しはじめ、受験の塾に通うというパターンが一般的だったものの、今の受験スタイルではふだんの成績も重要になってくるということです。
つまり、中学生のうちにしっかり授業についていくことが、結果的に大学受験もスムーズになる、ということでした。
確かに、と思う一方で保護者や社会が子どもたちの将来を思うがゆえに、求めるものが多くなりすぎていないか、ということが頭をよぎったのも事実です。引き続き、さまざまな角度から中学受験の取材を進めていきます。

みなさんは「中学受験」についてどのように考えていますか?私たちは「中学受験のリアル」と題して、皆さんからの情報や意見をもとに、取材を進めます。悩みや体験談、情報などぜひこちらまで投稿をお寄せください。

  • 桑原阿希

    首都圏局 記者

    桑原阿希

    平成27年入局。富山局を経て首都圏局に。約20年前に中学受験を経験。結果は厳しく公立中へ。中学時代は街の個人塾に通っていました。

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