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どうする?中学受験~あなたの街の私立中学校の進学率は?

中学受験のリアル(1)
  • 2023年11月15日

「過熱する中学受験」。昨今の中学受験の様相を表すのによく聞かれることばです。
ことし春、都内の公立小学校を卒業して、私立中学校に進学した子どもの割合は20%近くにのぼり、過去最高となりました。(都教育委員会の調査)
なぜ中学受験をする家庭が増えているのか。専門家の見解とともに、都内の市区町村別の私立中学校への進学率も詳しくお伝えします。

過熱する中学受験。皆さんの抱えている悩みやご意見、体験談などをもとに取材を進めていきます。投稿はこちらまでお寄せ下さい。(首都圏局/記者 桑原阿希・瀧川修平)

あなたの街の私立中学校への進学率は?

東京都教育委員会が公表した都内の私立中学校への進学率を、市区町村別に示した地図です。赤色が濃くなるほど、進学率が高くなっていることを示しています。他県の私立中学校に進学したり、私立小学校から内部進学したりした子どもは入っておらず、中学受験をした子どもの割合はさらに高いとみられます。
文京区で49.5%、中央区で43.1%、港区で42.8%と3区で4割を超え、8区で3割を超えました。
都内全体では19.8%でした。男女別では、▼女子が21.0%、▼男子が18.7%でした。

各自治体の詳しい進学率はこちら(進学率が高い順)
▼文京区 49.50% ▼中央区 43.14% ▼港区 42.47%
▼目黒区 39.43% ▼千代田区 37.50% ▼渋谷区 36.53%
▼世田谷区 35.44% ▼新宿区 34.85% ▼杉並区 32.69%
▼豊島区 32.06% ▼品川区 31.09% ▼台東区 29.40%
▼江東区 27.43% ▼武蔵野市 27.32% ▼中野区 24.85%
▼北区 23.54% ▼荒川区 22.17% ▼大田区 21.58%
▼三鷹市 19.84% ▼狛江市 18.77% ▼練馬区 18.43%
▼板橋区 16.78% ▼墨田区 16.69% ▼小金井市 16.60%
▼西東京市 15.87% ▼国立市 15.54% ▼調布市 15.38%
▼国分寺市 14.98% ▼葛飾区 14.31% ▼足立区 13.39%
▼多摩市 12.85% ▼稲城市 12.76% ▼府中市 12.02%
▼江戸川区 11.46% ▼小平市 10.74% ▼立川市 9.50%
▼八王子市 7.74% ▼神津島村 7.69% ▼東村山市 7.37%
▼昭島市 7.10% ▼東久留米市 6.65% ▼清瀬市 6.35%
▼町田市 6.09% ▼日野市 5.76% ▼羽村市 5.29%
▼あきる野市 4.99% ▼東大和市 4.81% ▼瑞穂町 4.51%
▼青梅市 3.85% ▼福生市 3.70% ▼小笠原村 3.33%
▼武蔵村山市 3.23% ▼日の出町 2.34%

都内の私立中学校への進学なし
▼奥多摩町 ▼檜原村 ▼大島町
▼八丈町 ▼利島村 ▼新島村
▼三宅村 ▼御蔵島村 ▼青ヶ島村

2人に1人が私立に進学する文京区は

進学率が最も高かった文京区に暮らす皆さんに中学受験について聞いてみました。

50代会社員

子どものまわりは中学受験する人がほとんどでした。
すごく“受験モード”で、4年生から塾に行っている子は多かったです

50代

教育熱心な人が集まるところだなと分かるので私立中学校への進学率の高さについてはびっくりしません。

小学校受験を考えている人にも出会い、教育熱の高まりを感じました。

30代会社員

娘は4歳ですが、小学校を受験を考えています。教育に力入れたいというのが理由で子どもが産まれるタイミングで文京区に引っ越しました。周りの環境刺激になると思っています。

こうした状況に、区の担当者は。

文京区教育委員会 中川景司学務課長
「大学や短大が多い地域なので、教育に対する保護者の方の熱心さがあると思います。また、交通の便がよく、各地の私立中学に通いやすいということも一因だと思います」

「公立中学校の良さも知ってほしい」という思いで、区が区内に10あるすべての中学校で始めたのが“区立中オープンキャンパス”です。授業見学や部活動体験のほか、個別相談会も行っています。

文京区は、通学区域外の中学校への入学を希望できる学校選択制をとっているため、もともとは、各中学校の特徴を知ってもらおうと始まりました。最近では、中学受験をするか悩む保護者や子どもも訪れるようになっているといいます

文京区教育委員会 中川景司学務課長
「区立中学校がいい、私立中学校がいいといった判断をしているわけではなく、一人ひとりが自分の夢とかをかなえられる学校はどこかというところで、適切な的確な選択をしてもらいたいです。区立中学校は地域と連携ができる魅力もあります。あらかじめ特色をきちんと伝えることによって、区立中学校も選択肢に入れてもらえたら、区もうれしく思います」

中学受験者数の増加の背景は? 専門家に聞く

「首都圏模試センター」によると、東京・神奈川・埼玉・千葉と隣接する一部地域で中学受験をした人は、9年連続で上昇していて、ことし春、過去最多の5万2600人に達しました。

最初のピーク:バブル景気に沸いていた1991年 5万1000人
バブル崩壊による景気の低迷とともに、その後、受験者数は減少。今から33年前のピークで、この時代に中学受験をして、今、子どもの中学受験に臨んでいるという親も少なくありません。

2回目のピーク:16年前の2007年 5万500人
いわゆる“ゆとり教育”が始まった2002年以降に、公教育への不安感などから私立中学校への期待が高まりました。2008年のリーマンショックを機に景気が低迷して、受験者数は減少しました。

ことし:過去最多 5万2600人
大学入試を変革するという議論が始まったことに加え、コロナ禍で多くの公立が授業を中断せざるを得なくなった中、私立が速やかにオンライン授業などに切り替えたことなどで、私立への期待につながりました。

首都圏の中学受験事情に詳しい首都圏模試センターの北一成さんに、“過熱する中学受験”の背景について聞きました。

◯保護者たちが抱える将来への不安
「グローバル化が進み、有名大学を卒業して大企業に入れば、ずっと幸せに生きていけるという図式が崩れ、終身雇用といった働き方も変化してきた。この世の中の変化を、30代後半から40代半ばの親は、一番感じている。必須となるICTや英語はもちろん、さらに専門性を身につけるという点で、私立はいち早く対応していて、親には、わが子が社会に出たあと、大きく変化する世の中で求められる力を付けてくれる私立に期待したいという思いがあるのではないか」

◯多様化する中学校選び
「昔は大学合格実績やブランド、知名度を重視する人が多かったが、現在は多様化している。これからの時代は、さまざまな国の人たちや、バックボーンが異なる人たちと一緒に、意見を持ち寄って、最適な解を導いていくような協働力やコミュニケーション力が求められているので、そういう力を身につけてくれる学校が人気がある」

◯“新しい教育” “新しい入試”が生まれる時代
「世の中で求められる力が変化して、私立は、中高6年間の教育も変わってしかるべきだろうと考えている。国算社理のペーパーテストだけでなく、新しい評価軸で子どもたちの潜在的な力や伸びしろをみてあげようと、プレゼンテーション入試、グループワーク入試、プログラミング入試とかユニークな入試が生まれてきている。前の年より志願者が増えている中堅と言われる学校や、新しい学校は、自分たちの教育のバージョンアップを続ける努力をしていて、そういう学校には期待が集まっている。“新しい教育”あるいは“新しい入試”が生まれてきている時代だ」

皆さんからの質問・意見

NHK首都圏局には、これまでにも「中学受験」に関して、さまざまな意見や質問が寄せられています。

 

中学受験をした30代女性
小学校で同級生と人間関係がうまく築けず、私立中学に行きました。将来への選択肢も広がり、いい経験でした

 

67歳女性
心身の成長が育まれる時期に、遊ぶ時間を削って塾に通うことの心身への成長へのリスクが気になります。

 

 

4年生の男の子の母親
息子が受験したいと言っているので受験する予定ですが、息子が耐えられるか心配で  す。子どものモチベーションをどう保つか知りたいです。

こちらの質問、北さんは次のように話していました。

モチベーションを保つポイントは3つあります。1つ目は、自分の行きたい学校があるかどうか。2つ目は、学ぶこと自体に興味を持ち、勉強や塾の授業が楽しいかどうか。3つ目は、同じように受験して、励まし合ったり教え合ったりできる友だちやライバルがいるか。一番のおすすめは、いろんな学校を見に行って、子ども自身が、中高でどういう生活をして伸びていけるかを想像することです。コロナ禍で学校説明会や文化祭・体育祭が制限されてきましたが、緩和されてきたので、いっぱい学校を見てほしいです。

取材後記

私も約20年前に中学受験をしました。結果は厳しく、公立中学校に進学しました。苦い思い出ですが、親の伴走で受験勉強をして、自分の選択と向き合った日々は、その後の糧になっています。あれから20年ほどがたった今、再び過熱している中学受験の取材をはじめました。「有名大学を卒業して大企業に入れば、ずっと幸せに生きていけるという図式が崩れている」。北さんのことばにどきっとしました。中学受験が過熱する背景になにがあるのか引き続き取材を進めていきます。(桑原阿希)

みなさんは「中学受験」についてどのように考えていますか?
今後、私たちは「中学受験のリアル」と題して、皆さんからの情報や意見をもとに、取材を進めます。悩みや体験談、情報などぜひこちらまで投稿をお寄せください。

  • 桑原阿希

    首都圏局 記者

    桑原阿希

    平成27年入局 富山局を経て首都圏局に 学校現場の取材を続ける

  • 瀧川修平

    首都圏局 記者

    瀧川修平

    令和5年入局 約10年前に中学受験を経験。第一志望には受からず苦い思い出

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