WEBリポート
  1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. WEBリポート
  4. 夏休みの学童保育で昼食提供されるの?東京23区で調べてみた

夏休みの学童保育で昼食提供されるの?東京23区で調べてみた

シリーズ保育現場のリアル
  • 2023年7月21日

子どもたちが待ち望んだ夏休みが始まりました。ただ、給食がなくなることで、子どもたちの昼食に頭を悩ませる保護者も多いのではないでしょうか。こうしたなか、共働き家庭などの子どもが過ごす学童保育では、夏休みに昼食を提供する動きが広がっています。東京・23区の状況をまとめました。
(首都圏局/記者 氏家寛子)

弁当作り大変!!

共働き家庭などの小学生の放課後の預け先として、年々、利用者が増えている※学童保育。夏休みなどの長期休暇中は、朝から利用することができますが、通常は昼食がでないため、保護者が弁当を用意する必要があります。

夏休みを前に、SNS上には「#学童弁当」ということばが並び、話題に。朝の忙しい時間帯に毎日お弁当をつくるのがとても大変なことや、真夏のため、衛生面で不安だという声が目立っています。

ああ、給食が終わってしまった…これから灼熱の1か月半、早起きしてお弁当作りかと思うと、心折れてる。
今日から2学期の給食始まるまでずっと学童弁当だ…早く夏休み終わらないかな。
こんな暑さの中で「朝作った弁当を昼に食べさせる」ということに対して不安しかない。

 

※学童保育(放課後児童クラブ)とは 
共働き家庭など留守家庭の小学校に就学している児童に対して、学校の教室や児童館、公民館などで放課後などに適切な遊びや生活の場を与え、その健全な育成を図るもの。厚生労働省の事業。児童福祉法に基づく事業として、補助の対象となっているものは、公立公営や公立民営が多い。

広がる昼食の提供

こうしたなか、都内の学童では、朝の弁当作りの負担を減らすため、夏休みなどの長期休業期間に昼食を提供する取り組みが広がっています。
東京23区の自治体に対して、ことしの夏休み期間中に児童に昼食を提供する予定があるかどうか尋ねました。

その結果、半数近い11の自治体で希望するすべての児童に昼食を提供する予定があることがわかりました。
このうち、港区、北区、江戸川区では、希望する児童に対する弁当の手配をこの夏休みから始めるということです。

提供方法については、自治体や学童保育を運営する事業者が宅配弁当を外部に手配するケースや、保護者の有志が協力しあい、外部に手配するケースがありました。このほかの12の自治体についても一部の施設で昼食が提供されるということです。

昼食の提供をする自治体に理由を尋ねると、「保護者からの要望や負担軽減のため」と回答する自治体が多く見られました。一方、昼食の提供が一部にとどまる自治体からは、「アレルギーの対応が難しい」とか「昼食の提供のために必要な職員の配置がない」などといった意見がみられました。

保護者有志の取り組み 課題も

中央区では、事前に手続きをすれば、どの施設でも保護者が手配した宅配弁当などを受け取ることができます。

中には、保護者の自主的な取り組みとして、ほかの利用者の希望をとりまとめ、弁当の配送サービスを利用しているところもあります。しかし、注文を取りまとめる保護者の負担が大きいほか、最低注文数を下回ると用意できないなど課題もあるといいます。実際にとりまとめにあたった保護者にも話を聞きました。

とりまとめにあたった保護者
「手作りのお弁当がいいという人もいるとは思いますが、毎日お弁当を作らなくてもいい環境も必要だと思います。体調が悪いときもあるし、出張があって忙しいこともありますよね。少し余裕ができた分、子どもと向き合うことができます。ほかの保護者の協力もあって、私たちの学童ではお弁当の手配が実現しましたが、行政にももう少し寄り添ってもらえたらうれしいです」

弁当手配の港区では

港区では、自治体が主体的に昼食の手配に乗り出していました。

この夏休みから区内にある38か所のすべての学童保育施設で、弁当の配送を始めます。区が事業者と一括で契約し、それぞれの施設への配送費を負担するため、弁当の注文数に条件はなく1つでも施設に届きます。注文や支払いは、保護者が各自のスマートフォンを使ってできるという仕組みで、1つあたり520円です。

港区 子ども若者支援課 矢ノ目真展 課長
「これまでは、注文数が少ない施設は弁当配送を頼むことができないなど課題があった。区が主体的に取り組むことで、夏休みなどの長期休業中の保護者の負担を軽減し、保護者と子どもが安定的かつ継続的に利用できるようにしたい」

八王子市では給食調理室を活用

さらに、23区ではありませんが、夏休み中の小学校の給食調理室でつくった昼食を学童保育の子どもたちに提供するのが八王子市です。

ここでは4年前から、給食のように小学校の調理室で調理した昼食を1食250円で提供する取り組みを始めています。給食と同じように、学校の栄養士が献立を作り、給食調理員が学校の調理室で作るので、栄養バランスのよい食事を提供できるといいます。

対象となる学童保育施設も徐々に広げていて、この夏休みには、市内に90か所ある施設のうち半数以上にあたる54か所で、温かい昼食を提供することにしています。提供日数は5日間程度と限られますが、将来的には市内のすべての学童保育施設に広げたいといいます。

八王子市 放課後児童支援課
「栄養バランスのとれた昼食を提供するために、給食調理室を活用しています。夏休み中は学校施設の工事や調理室のメンテナンスの予定もあるので毎日提供するのは難しいですが、取り組みを広げていきたいです。ほかの自治体の関心も高く、問い合わせが多く寄せられています」

広がるか学童の昼食~専門家は

学童保育の利用者が多くなるなか、昼食提供のニーズは高まっています。
子どもの食に詳しい、跡見学園女子大学の鳫(がん)咲子教授は、次のように話しています。

跡見学園女子大学 鳫咲子 教授
「家庭の事情も多様化しているので、子どもが昼食を心配することがないような支援が必要で、組織的に昼食が提供されることには意義があります。さらに進んで、学童で給食のような昼食を提供できれば、保護者の経済的な負担も抑えられ、大勢が利用しやすいのではないかと思います」

取材後記

今、学童保育の利用者は100万人を超えています。
そうした現状を踏まえれば、夏休みであっても学童で昼食を出してくれれば安心できるという保護者が多いと思います。

一方、学童そのものは受け皿となる施設がない、スペースが足りない、十分な数の職員が確保できないなど課題が山積しています。そのため、さらに昼食の提供まで求められるとさらに負担が増すのではとも感じます。

ほかの自治体と比べ、財政的に恵まれた23区でも、取り組みに差がありました。地方に目を向ければなおさらだと思います。ただ、今後もいっそう学童の必要性は高まることを考えれば、国のさらなる後押しが不可欠だと思いました。

今、こども家庭庁ではこの学童や保育に関する議論が進められています。私たちも引き続きこれらのテーマを取材していきます。
ぜひみなさんの体験や意見をこちらまでお寄せ下さい。

  • 氏家寛子

    首都圏局 記者

    氏家寛子

    岡山局、新潟局などを経て首都圏局 医療・教育・福祉分野を幅広く取材。

ページトップに戻る