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埼玉県知事選挙2023 県政の課題①少子高齢化への備えは?

  • 2023年07月25日

8月6日に投票日を迎える埼玉県知事選挙。埼玉県が現在、抱えている課題は何か、2回にわたってお伝えします。
1回目は少子高齢化への対応策についてです。埼玉県では、75歳以上の後期高齢者が全国で最も速いスピードで増えると見込まれていて、少子高齢化への備えをどう進めるかが、大きな課題となっています。県内の現状を取材しました。

さいたま局記者・藤井美沙紀

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埼玉県 高齢化の状況は?

埼玉県が国勢調査などに基づいて推計したデータによりますと、2040年には65歳以上の高齢者人口が230万人に増加し、県民の3人に1人が高齢者となる見込みです。また、国立社会保障・人口問題研究所の推計によりますと、75歳以上の後期高齢者は、県内では、2030年までの15年間で、約1.6倍の128万人に増加すると見込まれています。この間の後期高齢者の増加率は、全国で最も高いと推計されています。
埼玉県は、いわゆる団塊の世代の人たちが、高度経済成長の時期から多く県内に移り住み、再来年(2025年)には、すべて75歳以上となることが背景にあるとしています。

現役世代1人が高齢者1人を支える「肩車型社会」へ…

また、県内の自治体のなかには、2040年には、人口の4割以上を後期高齢者が占める見通しの所もあります。

こうして急速に高齢化が進む一方で、15歳から64歳の生産年齢人口は減少する見通しです。県の人口に占める生産年齢人口の割合は最も高かったのは、1995年の74%。しかし、これが2040年には、約55%まで低下すると見込まれています。現役世代1人が高齢者1人を支える「肩車型社会」にせまることが予想されているのです。

高齢化 県内で最も進む東秩父村は今

東秩父村

県内で最も高齢化が進んでいるのが、東秩父村です。高齢化率は46.3%。2人に1人近くが、65歳以上の高齢者です。村の総人口は1990年には約4500人でしたが、2045年には1300人を下回り、人口に占める高齢者の割合が6割以上になる見通しです。東秩父村では、すでに高齢化による影響が出始めています。

平成26年に最後の診療所が閉院し、その後、医療機関が村内に1つもない状態が続いています。
村によりますと、村内で働く医師がなかなか見つからないということです。
そこで村では、近隣の8つの市や町と連携して、患者の情報を共有しながら、訪問医や訪問看護師の派遣を受けるようにしています。

また、住民が近くの市や町で、十分な医療サービスを受けられるよう、村内の交通機関を充実させることも重要だと考えています。

現在、村の交通機関は、小川町駅と寄居駅に乗り入れる路線バスが中心ですが、NPO法人が自家用自動車を有料で運転するサービスもあります。

「乗り合いワゴン」の試験運行

こうしたものに加え、東秩父村が導入を検討しているのは、「乗り合いワゴン」です。バス停で降りた高齢者などを自宅まで送り届けるサービスです。去年10月から12月まで試験運行が行われました。バス停から歩いて帰るのが難しい高齢者が今後、増えることを見込んだものでした。

試験運行では、運賃をどこまで抑えられるかや、高齢者の需要に見合った時間帯に運行できるかなどの課題が明らかになってきたということです。村では来年度以降、本格的に運行できるか検討していくことにしています。

東秩父村が配付したタブレット端末

また、災害弱者となる高齢者の増加を見込み、全世帯にタブレット端末を配付しました。防災情報をリアルタイムで届けられるようにして、少しでも早い避難を呼びかけることが狙いです。

対策も 村だけでは限界

東秩父村は、高齢者が今後も増える状況をふまえ、さまざまな対策を打っていますが、予算や人材が限られるなか、村だけでできることには限界があるといいます。

東秩父村役場

東秩父村企画財政課
「少子高齢化が進むなか、村が抱える課題はさまざまで多くの分野で新規の事業が必要だと感じますが、村だけでの財源確保が非常に難しい状況です。デジタルなどの新しい取り組みがお年寄りに浸透するためには、若い人のサポートも欠かせませんが、その働き手の確保も深刻な状況です」

埼玉県が進める「スーパー・シティプロジェクト」とは

こうしたなか、埼玉県は、急速に進む少子高齢化への対応策の1つとして、「持続可能でコンパクトな街」を目指す取り組みを、令和3年度から進めています。「スーパー・シティプロジェクト」と名付けられたこの取り組みでは、県の指針をもとに市町村が方針を決め、県に提示することで、県のアドバイスや補助金などを受けながら、まちづくりを進めることができるものです。

小川町

その舞台の1つが、小川町です。
小川町の現在の高齢化率は、41%。2040年には50%を超えると見込まれています。こうしたなか、小川町は、町内に3か所の拠点を作って、町の機能を集約する、コンパクトなまちづくりを進めることにしています。
生産年齢人口が減るなかでは、まちづくりに活用できる予算にも制限がかかります。しかし、機能を集約することで、必要な費用を抑え、魅力的な住環境を整える狙いがあるということです。

黄色い部分が機能を集約する3つの拠点 提供:小川町

いち早く取り組みが進められている「東小川拠点」では、廃校となった中学校の校舎を活用し、地域住民の交流拠点にするプロジェクトが始まっています。レンタルオフィスやキッチンも併設し、町の外からも人を呼び込んでいます。

廃校となった中学校の校舎にできたミーティングルーム

将来的には、この地域にICT技術を活用した介護や見守りのサービスも導入し、お年寄りが住み慣れた場所で住み続けられるようにすることや、地域の指定避難所の学校体育館にEV充電器を備えて停電時にも電力が供給できるようにするなど、災害にも強いまちづくりを目指すことにしています。

町では、東小川拠点の取り組み状況を確認しながら、他の拠点にも広げていく方針です。 

小川町政策推進課
「少子高齢化をなんとかしなければならず、そのためにはコンパクトで魅力的なまちづくりが欠かせないと考えています。地域住民だけでなく、町を訪れた観光客にも地域の魅力を知ってもらえるよう、取り組みを盛り上げていきたい」

しかし、ことし7月時点でこのプロジェクトに、方針を示しているのは、県内の63の市町村のうち、29。このうち、まちづくりの計画の策定までできているのは、11にとどまっています。まちづくりに必要な財源の確保が難しいことや、長期にわたる具体的な方針や計画を作るノウハウが市町村にないことなどが背景にあるとみられています。

埼玉県エネルギー環境課
「伴走型での支援を行って必要なノウハウを共有し、できるだけ早い段階で63のすべての市町村にプロジェクトにエントリーしてもらえるようにしたい」。

取材後記

都市部と自然豊かな山間地の両方を備えた埼玉県を、「日本の縮図」と呼ぶ人もいます。急速なスピードで進む少子高齢化に、埼玉がどう取り組むかは、日本の参考にもなるかもしれません。
その大きな課題に取り組む埼玉県のかじ取り役を決める今回の知事選挙。少子高齢化が進んだ未来を想像しながら、あなたも1票投じてみませんか?

  • 藤井美沙紀 記者

    藤井美沙紀 記者

    2009年入局。秋田局、国際部などを経て現職

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