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アート×ケアで新しい介護の形を 埼玉県東松山市

  • 2022年09月02日

埼玉県東松山市の高齢者施設では、施設内にアーティストが滞在して利用者と一緒に創作活動を行う「クロスプレイ東松山」という取り組みが始まりました。アートとケアが交流することでどんな効果が生まれるのでしょうか。「デイサービス楽らく」の施設長の武田奈都子さんに武田涼花キャスターが伺いました。

早速ですが、「クロスプレイ東松山」について、簡単に教えていただけますか。

デイサービスの施設内に「アーティスト イン レジデンス」というスペースを併設しました。年間を通じてさまざまなアーティストに滞在してもらい、創作活動を行いながら、利用者やスタッフと文化的な交流をしてもらうプロジェクトです。

どんなアーティストが活動をしているんでしょうか。

現在、3組、4人のアーティストが活動を予定しています。例えば、富士見市の文化会館で芸術監督を務めている振付家で演出家、ダンサーの白神ももこさんには、滞在中に新作のダンス作品をつくってもらうことにしています。

また、アーティストで文筆家のアサダワタルさんには、月に1回ほどデイサービスに来ていただいて、オリジナルのラジオ番組を制作してもらう予定です。

利用者からリクエストのあった曲をかけながら、曲にまつわる思い出やエピソードをアサダさんのナビゲートで話してもらうことにしています。音楽は時代や文化的な背景を映し出すことができるので、音楽を通じて、ふだんなかなか引き出すことができないエピソードを語ってほしいなと思っています。

そもそもこのプロジェクトを考案したきっかけはどんなものだったんでしょうか。

この仕事に就く前、私はアートマネージャーといって、主にダンスや舞台のプロデュース、アーティストをマネジメントする仕事をしていました。

その後、10年ほど前に医療や介護の仕事に携わるようになって、ただ単に治療や介助をするだけではなく、その人がどう生きてきて、そして、どう生きたいのかということを考えるのが本来の介護だと考えるようになりました。

最近では、医療や介護の現場でもナラティブといって物語性を重視する流れがあるんです。人それぞれ生きてきた物語、つまり、個別性を重視するという考え方なんですが、アーティストはこうした個別性を見いだす独自の視点、それを表現する手段を持っているんではないかと思っています。

高齢者福祉とアーティストが直接的に交流する時間と場所をつくったら、より豊かな介護の発想が生まれるのではないかと考えて、デイサービスにアーティストが来て、滞在して、創作する機能を持たせてしまおうと思ったのがきっかけです。

取り組みが始まって数か月ということなんですが、アーティストやデイサービスの利用者からはどんな声が聞こえてきますか。

先日、利用者の誕生日会を開いたとき、白神さんがデイサービスに飾ってあったお花からインスピレーションを得て、その場で30秒ぐらいの短いダンスをつくってくれたんです。そのダンスをみんなで踊るといったようなことをしました。

ふだん、なかなかそういうことはできないので、利用者も職員もアーティストがいることで日常とはちょっと違った雰囲気を楽しんでいるように感じました。

アーティストがいることで、いい刺激になっているんですね。今後、予定していること、また、目指していることについて教えてください。

まずは年間を通じてアーティストに継続的に滞在してもらって、そこから生まれるプロセスを楽しんで、さまざまな介護の在り方を探っていきたいと考えています。

デイサービスにアーティストが滞在できる施設は全国的にも例のない取り組みになります。ケアとアートが交流するデイサービスから、介護の概念そのものを変える取り組みを発信し続けていきたいと考えています。 そして、ケアする人、ケアされる人といった関係性ではなく、デイサービスで出会うすべての人が生きていてよかったなと思える場所になってほしいと思っています。

キャスターからひと言

白神ももこさんが、施設に滞在して創作するダンスは、「さいたまアート・フェスタ 2022」のプログラムの1つとして、来年1月に東松山市民文化センターで披露されるということです。

武田さんはインタビューのなかで、「介護はとてもクリエイティブな行為で、アートと介護には親和性があると感じています」とも話してくれました。どんなダンスになるのか、今から楽しみですよね。

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