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コロナの後遺症 倦怠感などの症状が続くと相談 原因解明や治療法開発に研究進める 厚生労働省

新型コロナウイルス5類移行1年
  • 2024年5月8日

新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行されて5月8日で1年。
治療薬の補助などの支援が3月いっぱいで廃止されました。

しかし、依然として医療機関には、感染後に倦怠感などの症状が続くいわゆる「後遺症」の相談が数多く寄せられています。

厚生労働省は、後遺症の診療にあたる医療機関のリストを公開するよう自治体に呼びかけるとともに、後遺症の原因解明や治療法の開発に向けた研究も進めることにしています。

コロナ後遺症の外来を設置する東京・渋谷区にあるクリニックの現状や専門家の見解などをまとめました。

コロナ後遺症 相談多数寄せられる

~コロナ後遺症 詳しい原因不明 治療法も確率していない~
新型コロナの後遺症について、WHO=世界保健機関は倦怠感や集中力低下などが少なくとも2か月以上続き、ほかの病気の症状として説明がつかないものなどと定義していますが、詳しい原因はわからず治療法も確立していません。

~コロナ感染の成人1割から2割余りが後遺症に…~
国の研究班が、去年公表した調査報告では、3つの自治体で新型コロナに感染した成人の1割から2割余りが「倦怠感などの症状が2か月以上続いた」と回答しています。

新型コロナの5類移行後も続けられてきた、治療薬の補助やワクチンの無料接種などの特例的な支援は、ことし3月いっぱいで廃止され、通常の医療体制の中で対応する扱いになりました。

~後遺症で深刻な影響も~
しかし依然として、コロナ後遺症外来を設置している医療機関には、現在も全国から相談が数多く寄せられていて、症状が長く続いて学校や仕事に行けなくなるなど深刻な影響が出ています。

~厚労省 原因解明 利用法開発の研究進める~
厚生労働省は、後遺症の診療にあたる医療機関のリストを公開するよう自治体に呼びかけるとともに、後遺症の原因解明や治療法の開発に向けた研究も進めることにしています。

コロナ後遺症外来設置 都内のクリニックでは…

コロナ後遺症の外来を設置している、東京・渋谷区の「ヒラハタクリニック」。

院長の平畑光一医師によりますと、後遺症の診療を希望する患者からの相談は全国から来ているということで、取材に訪れた4月22日には、受付開始から10分間で40件近くのオンライン診療の予約が入りました。

クリニックでは、症状に応じた薬を処方したり、運動療法や呼吸法の指導を行ったりしていて、多くの患者はこうした治療やケアで症状が改善する傾向にあるということです。

一方で平畑医師は、コロナ後遺症の患者に対応できる医療機関がまだ限られていると感じています。

患者の中には、地元の医療機関でコロナ後遺症かどうか判断できないと言われたり、コロナ後遺症と診断されても「治療法はない」と言われたりして、ヒラハタクリニックに相談に来る人が少なくないということです。

この日受診した東京・立川市の50代の女性は、2年前に新型コロナに感染後、息苦しさなどが続いて自宅近くの病院を受診しましたが、症状が改善せず、知人の勧めでこのクリニックに通い始めました。

女性
「当初は呼吸するのも難しい状態でしたが、自宅近くの病院で『ちょっと運動すれば治るのではないか』と言われ、辛さを理解してもらえませんでした。丁寧にみてもらえる医療機関が近くにあればいいなと思います」

平畑光一医師
「いまも北海道や沖縄からも患者が訪れていて、後遺症を継続的に治療できる医療機関はまだまだ少ないと感じている。診察した患者の7割近くで失職や休職など、仕事の継続に影響が出ていて、後遺症の影響は深刻だ。後遺症に対応できる医療機関を増やす対策を行ってほしい」

“コロナ後遺症 新しい病気で情報が限定的”

政府の委員として新型コロナウイルス対策にあたり、現在は厚生労働省が医療機関向けに作成しているコロナ後遺症に関する「診療の手引き」で編集委員の代表を務める川崎市健康安全研究所の岡部信彦参与は、「いわゆるコロナ後遺症でみられるような症状を専門的に診療できる医師は少ないのが現状だ。特定の専門家のところに患者が集中するのではなく、まずは地域の医療機関やかかりつけ医でしっかりと相談でき、症状が長引いたり、さらに検査が必要になったりした場合に専門的な医療機関へつないでいくような体制が求められる」と話していました。

その上で、次のように話していました。

川崎市健康安全研究所 岡部信彦 参与
「コロナ後遺症は新しい病気による症状で情報が限られている。地域の医療機関で対応するためには、こうした医師などを対象に、自治体や医師会、学会などの単位で研修会を行ったり、情報交換をする機会を今後も作っていくことが求められる。患者が相談できるよう、行政は医療機関と連携して、コロナ後遺症について情報提供する取り組みを強化していくことも必要だ。最新の研究では、多くの患者で、時間がたてば徐々に症状が改善することもわかってきているので、患者も医療側も前向きに、粘り強く対応していく必要がある」

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